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 シリーズコラム 「よろずIT・ネットワーク情報」 
【第5回】 何それ?大学の情報専攻でもUNIXをまともに教えていない!
 

 3年前に入社した情報専攻の博士号を持つ研究員に、ふとしたきっかけからある質問をして「何それ!」と思わず大声をあげてしまいました。ちょうど今年入社した新入社員に週に一回のUNIX初期講習を行っていた時のことです。
 「情報専攻の大学院に入ってくる学生にしても、UNIXやLinuxをまともに操作できる学生は最近はほとんどいないので、もう一度その時点で基礎講習をするか自習させないと使い物になりません。特に最近のレベル低下傾向は著しいです。」との話でした。
 私はそれまで大学の情報過程に進む学生は全員UNIXとC言語を基礎教育として、当たり前に叩き込まれるものと思っていたので、「○○さん、大学の情報専攻課程でUNIXの講習はどんな感じでやるの?」という質問を彼に投げかけた時の返答がこれでした。
 彼は大学院大学という日本全国の4年制の大学を卒業した学生が入学してくる学校の出身ですから、彼の発言はかなり日本全般の大学の情報過程教育の実態を反映していると私は思いました。「まじ?信じられない・・・」というのが私の感想でした。彼のほうも「UNIXやLinuxを習得することは、コンピュータの基本を学ぶ最も基本的でかつ最良の方法なのに、今の大学ではそれをなぜか教えないんですよ。学生のレベルは確実に低下しています。このままじゃ開発途上国に抜かれます。」と吐き捨てるように言っていました。

 私の場合は大学は文学部の哲学課だったので大学の情報専攻課程がどのようなものか全く経験がないのですが、30歳を過ぎたあたりで転職したソフト会社がUNIXマシンのメーカーと提携していた会社だったので、業務上の理由でUNIXマシンでのソフト開発に従事することになりました。
 その時代(今から約30年前)はパソコンもWindowsではなく、もちろんシングルタスクのOSでした。UNIXマシンも200万円〜3,000万円もする高価なもので、OSもLinuxはまだ存在せず、SystemV(システムファイブ)とかBSD(ビーエスディー)というバージョンのものでした。
 それまでパソコンしかさわったことがなかった私がはじめてUNIXマシンの端末にログインし、その世界に触れた時の感動は今も忘れていません。
 マルチタスク、マルチプロセス、マルチユーザ、リモートプロシージャ、パーミッション、ファイルシステム、サービス、プロセス間通信、X-window・・・等、聞きなれない初めての単語が次々と洗われ、それらの一つ一つ習得していくたびに、「これはひとつの宇宙、人類の英知を結集した芸術作品だ!」と得も言われぬ感動を覚えたものです。


 ちょうどその頃からマイクロソフト社のWindowsというものが出現しました。
マイクロソフトの創業者ビル・ゲイツの商法はある傾向があります。
それは、「既存の技術を簡略化し、一般人に使いやすくし普及させ、儲ける」ということです。
ビル・ゲイツの最初のヒット作は「マイクロソフトBASIC」という16個のコマンドしか持ちませんが、インタープリター形式でだれでも簡単にプログラムを作成できるプログラミングシステムでした。最初VAX-11やPDP-11等のミニコン用に発案されたBASICという言語を、彼はその当時出現してきた8080用マイクロプロセッサ用に書き直し大ヒットさせました。日本のアスキー社創業者の西和彦氏が若かりし頃ビル・ゲイツの自宅にヘリコプターで乗り付け、この「マイクロソフトBASIC」を伯父さんが副社長をしていた日本電気に売り付け、大ヒットさせ大儲けしたのもこの頃の話です。
 その後、ビル・ゲイツはIBMが16ビット用パソコン用のOSを探していた時にゲイリーキルドールが開発した8086用OS'CP/M'のクローンを開発していた名もない会社を買収し、 それをIBMに高額で販売し、その利益を基にMS-DOS(Ver2)を発売し、大ヒットさせました。
その後Windows3.1,Windows95,WindowsMe,WindowsXP,WindowsVista,Windows7,Windos8 8.1,windows10 と変遷します。

マルチOS(サーバOS)のほうは、マイクロソフトにはマルチユーザ、マルチタスクの技術が無かったので、独自のUNIX技術を持つヒューレッド・パッカード社にWindowsNTの開発を委託し、WindowsNT,Windows2000、Windows2003,Windows2008,Windows2012,Windows2016と続きます。
 
これらのWindowsOSの変遷の中でマイクロソフトは数々他のOSの機能や製品の機能を組み入れてきました。

・初期のWindowsはUNIXのGUIであるX-windowsのサブセット参考にしたもの
・WindowsNTはUNIX技術を基本にしたマルチカーネルOS
・Windows-95のNetBIOS(LANのファイル共有)はノベル社NetwareのIPX/SPXのものまね。
・Active Directory (アクティブディレクトリ)はLDAPの商用バージョン
・WindowsアカウントはGoogleアカウントのものまね

というように、Windowsシステムはその時々の主としてマーケティング上の理由により、付け焼刃的に無理やり組み入れられたものが多いのです。ですからその弊害も現在まで引きずっているケースも多いのです。

 まず、OSのカーネルがマルチカーネルであるということです。Linuxの様なシングルカーネルの場合は私のような未熟な技術者でもカーネルソースに手を入れることは可能ですが、Windowsのようなマルチカーネルとなると複雑すぎて完全なブラックBOXとして扱わざるを得なくなります。また、ネットワークにしてももともとIPX/SPXのものまねで作ったNetBIOSを今でも引きずっていますから、他の端末のホスト名解決に膨大なブロードキャストパケットをLAN上に放出し、ネットワークを混乱させる原因となっています。

 このようなWindowsの欠点は、Windowsしかさわってこなかった技術者にとっては欠点ではなく、「そういうもの」としか感じられません。一方、UNIXなりLinuxなりをある程度経験ある技術者にとっては、「なにを馬鹿なことをしているのか、UNIXなら初めから何の問題も起きないのに」と感じられることが多いのです。この差は特にシステムインテグレーション(企業の情報システムを構築するサービス)の現場では大きな差となって現れてきます。  
 企業ネットワーク構築時のメールサーバの構築、本社と支社間、営業所間のVPN網の構築時のホスト名解決法、クラウドサーバ選択時のOS選択(WindowsOSかLinuxOSか)データベースシステム(DBMS)選択時に基幹DBをWindowsマシンで動かすか、LinuxOSでオープンソースDBMSで動かすか、モニタリングデータ収集マシンをWindowsで構築するか、Linuxを搭載するボードコンピュータで構築するか等あらゆる場面でUNIX、Linuxの経験ある技術者とWindowsしか経験のない技術者では性能面、コスト面で大きな差が生じてきます。

 一番解りやすい例に最近普及している安価なクラウドサービスがあげられます。クラウドサービスにも大きく分けてLinux系のバーチャルホストサービスとWindows系のバーチャルホストサービスがあります。どちらも仮想OSのクラウドサービスですが、Linux系のサービスならばWindows系のサービスと比べて数分の一程度の費用に抑えることが可能となります。

 今、開発途上国では有償のWindowsOSやOfficeソフトよりも無料のLinuxやOpenOfficeソフトのほうが多く使われています。またこのような国々の情報専攻の学生は無料で入手できるサーバーOSであるLinuxを真剣に教え、学んでいます。日本の学生達がこれらの開発途上国の学生に遅れをとることがないよう切に願うところであります。それと同時に日本の大学教育でしっかりとUNIXの教育をして頂くことも先生方に強くお願い申し上げある次第であります。
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