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 シリーズコラム 「よろずIT・ネットワーク情報」 
【第7回】 電池のお話し
 

(1)「レドックスフロー電池」について

 ベトナムのプロジェクトで、電源のない山中でソーラーパネルのみの電力源でモニタリングシステムとデータ伝送システムを構築した際、電池のパフォーマンスの重要性を痛感したことがきっかけとなり、専門のネットワークやIT分野とは少々ずれてしまいますが、この分野の現状と将来性に大きな関心を持つようになりました。

 そこで今回は、今最も注目を集めている電池「レドックスフロー電池」をとりあげてみます。

 「レドックスフロー電池」という電池の名称は一般的にはまだ周知されていないと思います。 日本のWEBサイトでは住友電工の記事以外はそれほど多くの情報は出てきませんが、アルファベットで'redox flow battery'というキーワードで検索してみると、日本のサイトと比較にならないくらいの多くの情報が引っかかってきます。 なぜ日本と世界ではこれほど違うのか疑問に思い、このレドックスフロー電池について調べてみました。

 まず一番初めに注目した記事が

・「世界最大級のレドックスフロー電池が稼働、60MWhで再エネの変動に対応」
 北海道電力と住友電工が共同で実証開始

 という昨年(2016年)1月3日の日経テクノロジーオンラインの記事です。 この記事によると、定格出力15MW、容量60MWhのレドックスフロー蓄電池を連系出力79MWのメガソーラーや他の風力発電と組み合わせることにより、電力の平準化テストとレドックスフロー蓄電池の性能評価を行うというものです。 容量60MWhの電池と言われてもピンとこないのですが、KWに直すと6万KWhで1日に換算すると2500KW/日ということで、日本の家庭の1日の平均電力消費量がだいたい12.7KW/日くらいなので、2500÷13=196.9として、およそ200世帯弱の1日分の電力を供給できる電池と考えれば解りやすいと思います。 この超大容量の電池を使用して、夜は発電をしないソーラー発電や風任せの風力発電の入力電力を一旦蓄電し、安定化した品質のよい電力出力を得ようというのがこのプロジェクトの大きな目的と考えられます。


充電時のイオンの価数変化と、水素イオンの移動方向(放電時は逆向き)
(Wikipediaより)


レドックスフロー電池のタンクとセルの外観(住友電工HPより)


実証事業のイメージ(日経テクノロジーオンラインHPより)

 次に目にとまった記事は

・「蓄電できる燃料電池、リチウムよりも大容量・安価」
 イスラエルの企業が「鉄」を利用した蓄電池を開発した。 「米テスラのリチウムイオン蓄電池Powerpackよりも安い」と主張する。 同社が採用する技術はレドックスフロー。 どのような蓄電池なのか、コストや技術の特徴を紹介する。

 という昨年(2016年)4月4日のスマートジャパンHPの記事です。 この記事によると、イスラエルElectric Fuel Energy(EFE)社が1KW当たりの単価を200(米ドル)程度に抑えたレドックスフロー電池を開発したそうです。 通常のレドックスフロー電池は電気イオンの交換物質として比較的高価なバナジウムを使用するそうですが、この電池の場合はバナジウムの代わりに鉄(Fe)の化合物を使用してコストを抑えているそうです。 ちなみに、イスラエルでは太陽光発電と揚水発電とこのレドックスフロー電池を組み合わせることにより、国内消費量の90%をまかなうという計画が現在進行形で進んでいるそうです。

 
代表的な大規模蓄電池の設備投資費用(スマートジャパンHPより)

 これらの記事から推察されたことは、レドックスフロー電池という電池は再生可能エネルギーと組み合わせた場合、次世代の有力な電力エネルギー供給のカギとなる存在ではないかということと、それ故に世界中の研究者、企業、投資家、政府関係者がこの電池の開発状況に注目しているのではないかということでした。

(2)各種電池の性能比較

 ここで、レドックスフロー電池と他の電池を比較する為に比較表を示します。


主要2次電池比較表(産経タイムズ社HPより)

 この比較表から解ることは、レドックスフロー電池はサイクル数(充放電の耐えられる回数)が最も大きいかわりに、エネルギー密度がそれほど大きくないということです。 つまり、長期間(10〜20年程度)使用してもヘタれない代わりに、電池の容積が大きいということです。 あと、この表には容量1KWh当たりの製造コストは記されていませんが、それも重要な比較項目となります。

(3)発電した電力には品質差がある

 東日本大震災以来、我が国でもメガソーラー発電所がいたるところに設置され、2011年には約10%であった再生可能エネルギー比率が2015年にはわずか4年で14.5%まで増加しました。 しかしこの増加分は殆どが夜間発電のできないメガソーラー発電で占められ、いわば品質不良の電力の増加分であり、電力を買っている電力会社にとってはいわば「不良品を高値で押し売りされている」ような状態であるといえるでしょう。 売電価格が年々下がっているのもこのような理由によるものと考えられます。


太陽光発電売電価格の推移(タイナビHPより)

(4)発電電力の品質差に応じた買い取り価格の必要性

 レドックスフロー電池の開発と製品化に関しては日本が現在世界の最高水準のレベルにあります。 この電池をよりローコスト化し、既に日本中に設置されているメガソーラーと組み合わせることにより、現在の不安定で品質の悪い電力を安定化した高品質の電力にすることが可能となるはずです。 しかしその場合、安定化された電力と、これまでどおりの不安定な電力とでは同じ売電価格では誰も電力安定化への設備投資を行わないはずです。 既に始まっているメガソーラーの売電価格は20年固定となっている為、それらを変更することは難しいですが、電力品質に応じた買い取り価格の制度変更と、その為の設備投資に関わる補助金制度等は、近い将来、国の将来を左右する課題として真剣に取り組む必要があると思われます。 このような国の政策により重要を喚起することは、国際競争力を持った産業育成には不可欠であると思われます。 また、この技術は日本以外のみならず世界中で応用できる技術ですから、新幹線技術と同様に国家戦略プロジェクトとして海外に売り込める技術となりうるでしょう。

(5)東北大学のレドックスフローキャパシタの可能性

 昨年(2016年)12月15日に、また新しいビッグニュースが飛び込んできました。

「東北大が安価・大容量の『レドックスフローキャパシタ』、大規模蓄電に応用も」
  金子憲治=日経BPクリーンテック研究所HPより

 レドックスフローキャパシタとレドックスフロー電池、どこが違うの?と思われたと思います。
 違いは、レドックスフロー電池のバナジウムイオン方は鉄の化合物イオンで陽イオンの交換を行うのに対して、レドックスフローキャパシタは可逆的で高速の充放電能を持つキノン化合物を活性炭のナノサイズ空間内に埋め込んだ活性炭スラリーを使用したそうです。正直私もよくわかりません。
 しかし、この「レドックスフローキャパシタ」はレドックスフロー電池の弱点であった入出力特性が抜群によく、キャパシタというだけあって大電力充放電時間が抜群に良いのです。さらに電荷媒体にナノカーボン化した活性炭スラリーを使用し、コストが非常に安上がりです。近い将来既存のレドックスフロー電池を上回るエネルギー密度を達成する可能性もあるそうですからもし小型化できれば、安価な家庭用、電気自動車用蓄電池に応用できるかもしれません。

 
レドックスフローキャパシタと他の電池の比較
(日経テクノロジーオンラインより)

(6)電池を征する者が次の世界を征する。

 電池をとりまく環境はまさに日進月歩です。 身近なところではスマホの充電に使用しているポータブルのリチウムイオン電池からハイブリッド自動車等に積まれている大容量の電池、家庭用の蓄電池等があります。 現在のリチウム電池にとって代わる

・より小さくて(エネルギー密度が大きい)
・より応答性がよく(大きな電力を短時間で充電放電できる)
・より寿命が長く(サイクル数が大きい)
・よりローコスト

な電池が大量生産されればそう遠くない将来、この世界は大きく変わるでしょう。 またその技術を持った企業や国は次の時代をリードする存在になるでしょう。
 

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