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 シリーズコラム 「よろずIT・ネットワーク情報」 
【第10回】 計測モニタリングとIoT(Internet of Things)技術について
 

●地すべりモニタリングでの経験

 昨年までやっていたベトナムでの地すべりモニタリングプロジェクトで最も苦労したことが、'さまざまな計測器(センサー)の種類、ベンダー、インターフェースをどうやって統合するか?’という課題でした。

 センサーの種類が8種類、ベンダーが4ベンダー、インターフェースが3種類、ベンダー提供のアプリケーションが3種類、合計の物理センサー数が68個あり、それらの計測結果をほぼリアルタイム(計測周期:1時間)で統合した時系列チャート上に任意のセンサーを配置してWeb上で表示するというシステムを構築することが私に与えられたミッションでした。

 
(ベトナムHAIVANモニタリングプロジェクトより)


●通信インターフェースの統合

 まず最初に取りかかったのがインターフェースの統合でした。 計測器のインターフェースは伝統的にシリアルインターフェースが最も一般的に使用されていますが、GNSS(GPS)等の計測器ではイーサネットインターフェースが使用されています。シリアルインターフェースもRS-232CとRS-485の2種類ありました。
 そこで全てのセンサーを統合する方法として、TCP/IPの同一ネットワーク上に全てのセンサーにIPアドレスを付加して統一的に配置する手法を選択しました。 具体的にはシリアルインターフェースとイーサネットのコンバータを使用してセンサーにIPアドレスを付加する手法で実現しました。 この手法は遠隔地からのセンサー状態の把握に大変有効で、日本居ながら、インターネット経由でモニタリングシステムを遠隔監視・操作をすることが可能になりました。

●データ取得インターフェースの構築

 次に取り組んだのが、ベンダー提供のソフトウェアとのデータインターフェースの構築です。 このプロジェクトでは下記の3種類のベンダー提供のソフトウェアを使用しました。
 (1).トータルステーション+気象センサ      → ベンダ製モニタリングソフトA
 (2).伸縮計、坑内水位計、坑内伸縮計、雨量計 → ベンダ製モニタリングソフトB
 (3).GNSS(GPS)               → ベンダ製モニタリングソフトC

(1)のモニタリングソフトAはベンダーがモニタリングデータを累積する内部のデータベースのアクセスを一部許可していたので、これを経由してほぼリアルタイムに計測データを取得することが可能でした。
 しかし(2)と(3)のモニタリングソフトB及びCでは、CSVファイル経由のデータインターフェースしかなく、データ取得は実際の計測よりも少なからず遅延を生じました。

 その他の計測器としては坑内傾斜計があり、このセンサーに関してはRS485インターフェースを私どもが作成したアプリケーションから直接計測指示及び測定を行い、データを取得しました。

 このように、現状では複数のベンダーから提供される計測器及びベンダー製ソフトから、リアルタイムにデータ取得を行うという作業は、煩雑で複雑な工程を経なければ実現せず。 なおかつ完全にリアルタイムにデータ取得を行うことを目標とする場合は、大きな障害が存在することを思い知らされました。

●データフォーマットの統合

 3番目の課題として、さまざまな種類の計測器や複数あるベンダーソフトウェアから取得したデータを統一のデータ形式へ統合する作業でした。
 ベンダー製モニタリングソフトから出力されるCSVデータの出力フォーマットはそのままでは他のセンサーと統合した時系列チャート上に表示させるにはソフトウェア作成に手間がかかりすぎるので、一旦共通のパラメータ(計測時刻、センサー種別、センサー固有識別子、測定単位、計測間隔、etc)で統一したフォーマットに変換し、ひとつのデータベースに統合する必要があります。 それぞれのベンダー製ソフトからの出力データのままでは、計測時刻のフォーマットひとつをとっても各ベンダーのフォーマットは異なるからです。 また、センサーの種別が異なれば当然センサーごとの取得パラメータの数とそれぞれの測定項目が異なるからです。
 したがって、全てのセンサーに共通する項目とセンサー種別又はベンダーごとに異なる項目を識別可能な統一フォーマットを設計し、単一のデータベーステーブルに格納する作業を行いました。


●異なるセンサー、ベンダー間の共通規格の必要性

 もう20年以上前になりますが、異なるベンダー間のデータフォーマットの統一化した経験があるので、話を解りやすくする為の参考事例として紹介します。

 30代の頃、私はホテルや旅館の予約システムを主として開発していました。 ある日、某大手旅行会社から問い合わせがあり、'ホテル・旅館宛てのテレックス管理ソフトを大手旅行会社数社対応にしてくれないか?’との依頼があり、開発を請け負ったことがあります。
 その当時の旅行会社とホテル・旅館の予約情報のやりとりは、現在のようなインターネットも存在せずパソコン通信も始まったばかりの頃ですから、戦前からのデータ通信手段であるテレックスを使用していました。ところがその通信フォーマットとデータの印刷フォーマットが大手旅行会社毎に独自仕様で、その通信フォーマットも非公開でした。ですからホテルや旅館側からすると、複数の大手旅行会社と提携した場合はその旅行会社ごとのテレックス管理ソフトを使用し、かつ別々の印刷フォーマットで印刷される予約テレックス台帳を管理しなければならず、非常に煩らしい作業を余儀なくされていました。私が請け負ったテレックス管理ソフトは大手数社のテレックスフォーマットに対応したので、それを導入するホテル・旅館側にすればそのテレックスソフト1本だけ導入すればほとんどの旅行会社のテレックス予約に対応でき、かつ予約テレックス台帳も一冊で管理できるようになり、作業の効率化と台帳の一元化が可能となりました。

 それからおよそ6年後には旅行業者の協会がパソコン通信を利用した協会統一基準を作成し、その運用開始以降はどの旅行業者も統一の通信規格、印刷フォーマットを使用するようになりました。

 ふり返って計測モニタリングの現状を眺めると、計測モニタリング現場で複数のベンダーのソフトウェアを同時に複数モニター上に表示して、異なるソフトウェアを無理やり時系列の合うように並べて見比べている現場の姿が浮かんできます。 私にとってはこのような状況は20年以上前のホテル・旅館のテレックス予約の管理の状況とそっくりに思えるのです。


●共通規格ができれば、それに準拠したアプリケーションで統一して管理できるようになるはず

 旅行業者の協会が予約システムの統一規格を確立したように、計測モニタリングの分野でもなんとかして規格を統一できないものかとベトナムのモニタリングプロジェクトの終盤からずっと思い続けてきました。確かに旅行の予約の統一規格と計測器の分野では比較にならないくらい統一化作業の難易度は違います。しかし一旦規格統一さえすれば、その規格に準拠したアプリケーションさえ作れば複数のベンダーのセンサーからの取得データを同一ソフト上でかつリアルタイムにモニタリングすることが可能となるはずです。 もしそれが実現すれば、モニタリング計測を日常業務とされているユーザー様側にとっては現在と比較にならない恩恵となるはずです。


●IoT(Internet of Things)技術は応用できないものか?

 「IoT」(Internet of Things)という言葉を初めて耳にしてから、もう数年経ったように思います。

 Wikipediaでは、「モノのインターネット(英語: Internet of Things, IoT)とは、様々な「モノ(物)」がインターネットに接続され(単に繋がるだけではなく、モノがインターネットのように繋がる[1])、情報交換することにより相互に制御する仕組みである。(Wikipediaより)と説明されていますが、正直これではなんのことかさっぱり解りません。
 しかし、ベトナムのモニタリングプロジェクトの終盤から「この技術は恐らく近い将来に土木分野における計測モニタリングにも少なからず影響があるはず」という漠然とした期待感にかられ、少しづつ自分でも資料を調べるようになってきました。


●土木分野に適用できるIoT(Internet of Things)技術は現在どのようなものがあるか?

 「IoT」の世界はセンサーのインターフェース規格や応用分野、通信プロトコル、データフォーマットまで非常に広範囲に渡り、ちょっとやそっとではその全貌をつかむことはできません。そこで既にAPI(アプリケーションインターフェース)まで出来上がっているものに絞って、調べることから始めました。そこで目についたものを紹介します。

・SensorThings API
https://en.wikipedia.org/wiki/SensorThings_API

 オープンソースGISの国際標準化団体であるOGCが定めた空間情報に関連したセンサー情報をやり取りするIOTのAPI規格です。

 各センサーにこのAPIを実装すると、インターネット上のWebサーバ上のREST(REpresentational State Transfer)サービスにアクセスし、データのやり取りをリアルタイムで行うものです。 通信のデータエンコーディングはJSONです。 すでに各種言語ベースのSDKが提供されていますので、プロトタイプも作成可能です。
 既にWEB−GISの標準規格であるWMS、WFS等の標準規格の作成実績のあるOGCの規格ということで、将来性に注目です。
(参考文献:センサーAPI(Senser Obserbation Servide)仕様書 国立研究開発法人 防災科学技術研究所)

・GotAPI
https://device-webapi.org/gotapi.html

 多種多様なスマートフォン連携デバイスのためのWebインタフェース。標準化団体 OMA (Open Mobile Alliance) にて Generic Open Terminal API Framework Version 1.0 として標準化された仕様書の名前です。

・INTERNET OF THINGS APIS
https://www.programmableweb.com/category/internet-things/api

 IoTの主なAPIが集計されています。


●学会、研究機関、メーカー、業界団体等での統一規格作成への取り組みの必要性

 土木分野に於ける計測機器(センサー)の種類だけを見ても非常に多くの種類があります。 実装可能なIoTのAPIが出現しつつある現在でも、センサー別の標準のデータフォーマットの統一規格に関しては未だ全く手がつけられていないのが現状です。

 特に土木関連のモニタリング分野ではデータ部の規格として

  (1)センサー共通の項目
  (2)センサー種別毎の標準で取得すべきデータ項目 
  (3)ベンダー固有の取得項目

の規格が統一されないと、実際の統一化アプリケーションは実現しません。

 これからは、学会、研究機関、メーカー、業界団体が協力して統一規格への取り組みが必要となるでしょう。

 
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