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 シリーズコラム 「よろずIT・ネットワーク情報」 
【第17回】 安くても誤差数センチ?RTK-GNSSにチャレンジ!
 
(1)GNSSとGPSの違いは?

 最近いわゆるGPSのことをGNSSと呼んでいる例を見聞きする例が多くなってきました。
GNSSとGPSは同じものなのか?それとも新しいタイプのGPSのことなのか疑問に思われた方も多いと思います。数年前までは私もそのように感じていました。

 そこで調べてみると、

・GPS(Global Positioning System:全地球無線測位システム)

 全地球無線測位システム。24個の衛星から発射した時刻信号の電波の到達時間などから、地球上の電波受信者の位置を3次元測位する。カーナビゲーションシステムなどに利用されている。(三省堂 大辞林より)

・GNSS(Global Navigation Satellite System:全地球測位システム)

 Global Navigation Satellite Systemの略で、全地球航法衛星システムをいう。 アメリカが運営しているGPS、欧州が進めているGALILEO、ロシアが再構築しているGLONASS、日本が打ち上げようとしている準天頂衛星等測位衛星の総称である。(測量用語辞典より)

とあります。

 つまり、GPSはGNSSのうちのアメリカが行っているものを指す呼称であり、ロシアのGLONASSや欧州のGALILEOや日本の「みちびき」(準天頂衛星システム:QZSS)や中国の北斗衛星測位システム(Beidou)等はGPSとは呼ばずにGPSも含めてGNSSという相称で呼んでいるということらしいです。


(2)RTK-GNSSとは?

 RTK(Real Time Kinematic:リアルタイム・キネマティック)を行うGNSS測量方法で、リアルタイムに動く動体を誤差数センチ単位(2cm程度)で計測できる画期的な手法です。
 通常GNSS受信機1台で計測を行った場合は、身近なスマートフォンや携帯電話のGPS計測結果で明らかなように誤差は5mから10m程度は発生します。これはなにもスマホや携帯のGPSが安いからという理由だけではありません。たとえ数百万円するGPSを使用してもリアルタイムに移動して計測する場合は誤差が数m〜数十センチ単位で発生し、とても数センチ単位では計測できません。

その理由は、

〜GNSS受信機1台の単独測位の場合〜

・STEP1 最低4個の衛星からの距離を測る。
 衛星に搭載された原子時計とGNSSの水晶時計で、1msec秒単位に衛星から送られてくる信号(L1 C/Aコード)の受信器までの到達時間を計測し、それに光速度(約30万Km)を乗じて各衛星から受信機までの距離を計算します。

・STEP2 衛星位置の計算
 衛星電波に含まれる各衛星の軌道情報から衛星位置を計算します。

・STEP3 測位計算
 STEP1とSTEP2の結果を基に3次元方程式を解いて受信機の位置(x,y,z)を計算すればいいのですが、実際はGNSS受信機の水晶時計は各衛星の原子時計よりも精度が劣ります。 その誤差を未知数(t)として、それも計算します。 最低4個の衛星が必要なのもこの為です。

・精度は?
 (L1 C/Aコード)信号の分解能の限界が6cm程度ですが、実際は衛星軌道の誤差等の要因もあり、リアルタイムでは数m〜数十センチ単位の誤差が生じます。

〜GNSS受信機2台でRTK方式で測位する場合〜

・STEP1
 1台のGNSS受信機で数十分〜数時間、秒単位での単独測位を行い、その測定結果の標準偏差計算を行い、基準局の位置を求め、基準局(Base)とする。

・STEP2
 2台目のGNSSを移動局(Rover)とし、基準局(Base)と同時にGNSS衛星受信を行う。

・STEP3
 基準局(Base)と移動局(Rover)はGNSS衛星の搬送波情報をリアルタイムで何らかの方法で基線解析計算できるコンピュータに送る。(または内蔵の基線解析計算を行う)

・STEP4
 基線解析計算できるコンピュータは、基準局(Base)と移動局(Rover)の搬送波の波数と位相差から距離を計算し、移動局(Rover)の測位計算を行う。

・精度は?
 RTK-GNSS可能な受信機は搬送波を0.75mm程度の分解能で波長測定可能なので、RTK測位では測位時の収束時解の精度は約2cmとなり、受信機がリアルタイムで移動する場合、理論的には単独測位時の精度の約100倍近くの精度が得られることになります。


(3)ベトナムハイバン駅地すべり計測でのRTK-GNSS

 私のRTK-GNSS測位は3年前のベトナムハイバン駅地すべり計測で行ったのが初めての体験でした。
 この時は日本国内の1級電子基準点でも使用されている、Trimble社の(NetR9)というGNSSを3基使用し、1基をハイバン駅反対側斜面のトータルステーション設置小屋の屋上に基準局(Base)アンテナを設置、残り2台を移動局(Rover)とし、ハイバン駅裏側に一基とそこから約100m上方のボーリング小屋近くにもう一基設置し、計測を行いました。 RTK方式では3基ともリアルタイムで通信を行う必要があったので、地すべり面から反対斜面の基地局まではWi-Fiブリッジでイーサネット接続としました。

Trimble社GNSS(NetR9) 基準局GNSSアンテナ 移動局GNSSアンテナ


(4)u-blox社のRTK対応GNSSモジュール

 ベトナムでのRTK測位に使用したGNSS機材は一基数百万もする最高級機でしたが、最近(u-blox)社から個人でも十分入手可能なRTK測位可能なGNSSモジュールが販売されていることを知りました。
 少しコンピュータ知識のある方ならこれらのモジュールの付いた基板を購入することによって、独力でRTK-GNSSシステムを構築することも可能な、ひと昔前なら夢のような環境になりつつあることにかなり驚きました。 そこで、最新の代表的なモジュールとその応用基板の入手方法を以下に紹介します。

(注:日本国内ではGNSSモジュール単体で、しかも250個以上のロット単位でしか現在入手できません)

〇NEO/LEA-M8Tモジュール

48.87 USD〜55.75 USD

・GPS/QZSS、GLONASS、BeiDouの同時並行受信が可能なモジュール
・RTKエンジンは内蔵されていませんが、その代わり安価です。

〇NEO-M8P-2モジュール

125.05 USD

・u-blox M8ローバーおよび基準局機能搭載の高精度測位モジュール
・リアルタイム・キネマティック (RTK) を組込み済み

〇M8TとM8Pの違いについて

 両者の大きな違いは、RTKエンジンがモジュールに内蔵されているかいないかです。
つまり、M8TはRTKエンジンが内蔵されていない為、後述する(RTKLIB)等のRTK解析ソフトウェアで基線解析等を行う必要があります。 M8Pは高いだけあって、基準局(Base)用と移動局(Rover)用の2基のGNSSを無線等で接続する手段があれば、外部ソフトウェアにたよらなくても、RTKの測位結果を出力する機能があります。


(5)利用しやすいモジュール搭載基板タイプの入手方法とお勧めの基板、アンテナ

 最初、(4)で紹介したGNSSモジュール(それも最低250枚発注)でしか日本国内では入手できないことを知って愕然としていましたが、いろいろ検索しまくっているうちに海外からモジュール付き基板が入手できることを知り、すぐに発注しました。
(送料は基板2枚、GNSSアンテナ2個の場合でEMSで40$程度)

 その入手先はヨーロッパにある(CSG Shop)というGNSS専門のオンラインショップです。




いろいろありますが、最も安価にRTK-GNSSを構築できる基板とアンテナを紹介します。

〇M8Tモジュール時計・SMAアンテナコネクタ・USB付き基板
 前述のNEO/LEA-M8Tモジュールを搭載した基板です。これをラズベリーパイ等のARMコンピュータに接続し、SMA端子にGNSSアンテナを付け、LAN経由またはモバイル経由で基線解析計算サーバと接続すれば、RTKが可能になります。


UBLOX NEO-M8T TIME & RAW RECEIVER BOARD WITH SMA (RTK READY)
$74.99

(注1:この基板利用でRTKを行う場合は後述の(RTKLIB)等の基線解析ソフト等が必要です。)
(注2:RTKを行うには基準局(Base)用と移動局(Rover)用の2セットが必要です。)

〇M8PモジュールSMAアンテナコネクタ・USB付き基板(基準局、移動局兼用タイプ)

 前述のNEO-M8Pモジュールを搭載した基板です。SMA端子にGNSSアンテナを付け、一基を基準局、2基目を移動局にして、無線LANモジュール等で接続すれば、基線解析計算サーバなしで、RTKが可能になります。


UBLOX NEO-M8P RTK GNSS RECEIVER BOARD WITH SMA BASE OR ROVER
$239.99

(注:現在のところ、内蔵のキネマティック計算機能がGPS/QZSS、GLONASS、BeiDouの同時並行受信には対応していないようです。)

〇GNSSアンテナ
・おそらく、写真から判断してu-blox社のANN-MSという車載用アンテナと同じものではないかと思います。
・グランドプレーンと呼ばれる直径20cm程度の自作のアルミ板を下部につけるだけで5db程度の性能向上が図れるようです。


HIGH PERFORMANCE ACTIVE GPS ANTENNA
$19.99


(6)RTK-GNSS界の神ソフトウェア(RTKLIB)について

 2006年の12月に東京海洋大学情報通信工学研究室の高須先生が開発したGNSS解析ソフトウェアです。
 高精度な測位を目的に開発されたもので、RTKの他にも数多くの機能が搭載され、今や世界各国で使用されています。
 Windows用とlinux用があります。RTKを自作する方は必ず使用するソフトと言っていいでしょう。

「RTKLIBダウンロードサイト」
▽RTKLIB: An Open Source Program Package for GNSS Positioning
http://www.rtklib.com/


(7)Ntrip Casterを利用する

 最近Ntrip Casterと呼ばれる基準局データの配信サーバの有料サービスが始まっています。
 Ntrip Casterの場合は基準局をNtrip Serverと呼び、移動局の方をNtrip clientと呼びます。
 Ntrip Caster はNTRIP(Network Transport of RTCM via Internet Protocol)と呼ばれるHTTPプロトコルをベースとしたプロトコルでデータをやりとりします。
 自分で基準局を作ることができなくても、前述の(RTKLIB)を使用すればNtrip Serverになり、Ntrip Casterサービスに接続するだけで基準局を開設することが可能となります。 また、Ntrip Casterサービスは有料が多いですが、(RTK2go)という無料で行っているサイトも存在します。 自分でサーバを作るのが困難な方は一度試してみてはどうでしょうか。



続きは【第18回】 安くても誤差数センチ?RTK-GNSSにチャレンジ!(その二)です。
 
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