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知取気亭主人の四方山話
 

『超高級魚』

 

2015年2月25日

今、ウナギの稚魚であるシラスウナギの漁が最盛期を迎えているらしい。マリアナ諸島付近で産卵しているとされているニホンウナギの稚魚は、黒潮に乗って日本の川に戻ってくるわけだが、その稚魚を河口付近で生け捕るのがシラスウナギ漁である。その様子を、テレビのニュース映像で何回か観たことある。わずか5センチばかりのか細い小さな半透明な稚魚を“たも網”等ですくい獲るのだが、すくった網に入った稚魚を目を凝らして探す様は、まるで砂金採りを連想させる。それ程みんな真剣なのだ。また、それほど漁獲量が少ないというという事でもある。

独立行政法人水産総合研究センターの「ウナギ総合プロジェクトチーム」による報告書「ニホンウナギの資源状態」(以後、センター資料と記す)に依れば、シラスウナギばかりでなく成魚ウナギの漁獲量も急速に減少しているらしい。その手の話は、ニホンウナギが国際自然保護連合(IUCN)により絶滅危惧種(EN)の指定を受けたニュースを聞いたり(2014年6月)、売られている蒲焼の値段を見たりすれば、ウナギ好きであれば誰でも知っている事だ。しかし、その減り方は尋常ではない。子供の頃(1960年代)に近くの小川でしょっちゅう獲っていた私としては、信じられないほどの減り方だ。

センター資料に依れば、内水面におけるウナギ漁獲量の推移は、1960年台初頭をピークに、時には3000トンを超えていたものが、1970年以降減少の一途をたどり、2011年には230トンまでに激減している。たった40年ほどで、凡そ15分の1以下にもなってしまったわけである。ひょっとすれば、我々遊び仲間が獲っていたのも、減少に拍車をかけたのかもしれない(?)。それは冗談だが、凄まじい減り様だ。

ところで、漁獲量の推移と関係はないが、センター資料に面白い数値が載っていたので紹介しておこう。ここで突然の質問だが、230トンを尾数に換算するとどれくらいの数になるだろうか。凡そ115万尾になるらしい。養殖ウナギの適正出荷サイズが1尾あたり200グラムであることから換算した数値だというが、意外と軽いものである。

さて、話を元に戻すと、成魚が減れば必然的に稚魚も減るわけで、シラスウナギの漁獲量も同じ運命をたどっている。センター資料には、内水面におけるウナギの漁獲量と共にシラスウナギ漁獲量のグラフも掲載されているが、それを読み解くと、次のような推移となっている。

多少の増減はあるものの、1960年代初めの230トンほどをピークに、1980年代初めごろの30トン程まで一気に減少し、約20年間で8分の1にまで落ち込む。その後は細かな増減を繰り返しながら、2010年、2011年には10トンを切るまで、緩やかに減少している。数字が示されている1987年〜2011年の25年間の漁獲量は、6〜27トンで推移しているという。グラフを読み解けば、多分、2010年が最低の6トンであろう。何と半世紀で凡そ40分の1にまでなってしまっている。日本人の底知れぬ食欲は、何とも凄まじいものである。

さて、ここからいよいよ本題に触れていこう。先程の成魚ウナギと同じように、この6トンを尾数に換算すると、3000万尾に相当するという。シラスウナギ1尾を0.2グラムとしているというが、0.2グラムは我々が(たまに)口にする成魚ウナギの1000分の一にしかならない。如何にシラスウナギが小さいか分かる。その小さな、小さな稚魚が、目の玉が飛び出るほどの金額で取引されているという。

2月22日の朝日新聞朝刊にシラスウナギ漁の写真記事が載った。徳島市を流れる吉野川河口で行われているシラスウナギ漁が最盛期を迎えている、という記事だ。その中に、「今年は1キロ当たり100万円〜120万円で取引されている」との、徳島県水産課の話が載っていた。ものすごい金額だ。先程の換算数値を使えば、(1000÷0.2=)5千尾が100万円〜120万円になるわけで、100万円だとしても僅か5センチほどの稚魚が1尾200円にもなる。

もっとも、尾数ではピンと来ないから、重さで他の魚と比較してみる。今北陸で旬と言えば寒ブリとズワイガニだ。近江町での記憶を頼りに書けば、立派な天然の寒ブリ6〜10キロぐらいであっても、2万円も出せばたっぷりとおつりがくるだろう。また、1万円出せば、1キロ近くの大きく立派なズワイガニでも買える。そんな事を考えると、シラスウナギが、目が飛び出るほどべらぼうな高額で取引されているかが分かる。まさに超高級魚だ。しかも、まだ更にそれから手塩にかけて育てないと出荷できないのだから、いかに貴重なのかが分かろうというものだ。我々庶民の口から遠くなってしまったはずである。

どこからの情報か失念しまったが、シラスウナギ1匹を成魚にするまでにかかるコストは、飼料代や設備投資、或いは人件費や光熱費など、1000円以下では無理だといわれているらしい。途中で死んでしまう個体がいる事を考えると、日本産ウナギの蒲焼が、我が家の食卓から消え去ろうとしているのも無理はない。水産庁は、完全養殖の商業化の目標年を2020年としているらしいが、早く実現してほしいものである。そうしないと、「日本にはそんな魚がいた時代もあったな」と思い出話の上だけになってしまいそうである。 

【文責:知取気亭主人】


 昔だったらウナギがいたものだが…。

  
 

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