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知取気亭主人の四方山話
 

『草食化は日本男子ばかりではない?』

 

2015年4月15日

いつの頃からか、草食系男子、肉食系女子などという表現を聞くようになってきた。私が若い頃にはそんな区分けなど思いも付かなかったのだが、最近の日本では、男と女をさらに細分化するこの洒落た分け方(?)が思いの外幅を利かせている。誰がいつの頃から言い始めたのか定かではないが、それにしても言い得て妙な表現だ。恐らく、他の国ではこんな分け方はされていないだろうし、そんな捉え方もしていないのだろうと思う。

この表現、日本ではしばらく前からバラエティー番組などで良く聞かれるようになってきた。多くの場合、異性に対して積極的でない男子を、からかい半分で草食系男子と呼んでいる節がある。あらゆるものが便利になった現代では、独身でも困ることがないからなのか、或いは結婚願望の低さからなのか、男子の草食化は結構話題に上る。逆に、肉食系女子も良く話題になっていて、何となく男らしさの減退が日本にはびこり始めている様な風潮があり、「男子たるもの…」と育てられた世代としては、一抹の寂しさを感じている。

ところで、何故草食系男子が話題になるのが増えて来たのだろうか。草食系も肉食系も、実際は我々が若い時とそう変わらない比率なのに、女子の結婚願望が強く、男性にハッパをかける意味もあって、草食系男子などという言葉を使っているのではないか、との私の説は如何だろうか。私の勝手な思いだけだから、もちろん断定はできない。ただ、私の勝手な思いだけではなく、身の危険をさほど感じない日本では、もっと過激な表現をすれば平和ボケした現代の日本では、男子の活力が減退してもそんなに不思議はない。生命や民族の危機とほど遠い恵まれた環境に身を置いてれば、動植物ばかりでなく、人間とて子孫を残そうとする生命力はひ弱になって行くのだと思う。多分、それが自然の摂理なのだろう。ところが、そんな人間とは違い、自然環境が悪化したために草食化した動物がいる、という身につまされる研究成果が発表された。その動物とは、北海道に住むヒグマだ。

京都大学と北海道大学、地球環境学研究所は、共同研究成果として「北海道のヒグマ、肉食から草食傾向へ。明治以降の開発が影響か -考古試料の安定同位体分析から-」を発表したhttp://www.kyoto-u.ac.jp/ja/research/research_results/2014/documents/150327_1/01.pdf(以下、資料と記す)。それに依れば、ヒグマは本来雑食性なのだという。テレビで見るヒグマは定番のサケを食べているシーンが多く、チャンスさえあればサケ以外にもシカなど大型動物も食べるという。また、こういった動物性の食物ばかりでなく、ヤマブドウなど木の実の他に、驚いたことにフキなどの茎や葉も餌になるらしい。ここまで雑食だとは思わなかったが、その他にも、クマと言えば蜂蜜が大好物なことも良く知られている。ヒグマは、こういった動物から植物、果ては昆虫まで餌としていて、食物源(餌)の可給性(利用可能かどうか、言い換えると「多さや獲りやすさ」)に合わせて、食性を変化させているのだという。

それもあってか、住んでいる場所によって食性に違いがあることが知られているのだという。研究者の間では、北アメリカに分布するヒグマの仲間はサケなど動物性の餌を中心に採餌しているのに、北海道に住むヒグマは、動物性が少なくフキややヤマブドウなど、いわゆる植物中心の食性になっていることが分かっていたらしい。北海道にも好物のサケがいるのに、である。何故だろうか。実は、その疑問が本研究のきっかけだったと言う。

研究チームは、北海道開拓開始以前(1920年以前)を始めとして、既に死亡している昔の個体の骨なども使い、炭素・窒素・イオウの3元素の「安定同位体比」(用語の説明は資料の最終頁を参照されたい)と呼ばれる分析法用い、主に何を食べていたか、どんな栄養状態であったかを調べたという。この方法を「食性解析手法」というらしいが、この手法によって、過去から現在までのヒグマの食性変化を復元することが出来たという。骨などの組織が残っていれば、遥か昔に死亡した個体でも、その時代の、その個体の食性も復元できるのだというから素晴らしい。

詳しくは資料を見て頂くとして、彼等の食性は、明治以降の時代経過に伴って肉食傾向から草食傾向に大きく変化していたことが明らかになったという。今回のタイトルにも用いた、いわゆる草食化である。道東地域と道南地域の2地区で調査を実施したとあるが、どちらの地域でも、エゾシカや昆虫といった陸上動物の利用が元々60%前後あったものが、最近では約1/8〜1/10ほどまでに激減していたという。道東地域では、サケの利用も半分以下になったという。調べてみると、人間でもそうだが、動物性のタンパク質摂取量が減るとヒグマの小型化が進むらしい。そういう意味からすると、北海道のヒグマの小型化も進んでいるのかもしれない。

いずれにしても、この草食化への大幅な変化は、概ねこの200年間に急激に進行したのだという。200年前というのは明治政府による北海道開拓が本格化した時期と一致すると言い、ヒグマにとっての生活環境、いわゆる自然環境が破壊され始めた時期とも一致するということである。

ヒグマの草食化は、どうやら人間の手によって彼らの生活環境を悪化させたことが原因らしい。そうなると、日本男子の草食化が“ぬるま湯環境の為せる業”だとすれば、ヒグマの草食化は“人間による自然環境破壊の為せる業”と言えそうだ。  


【文責:知取気亭主人】


枝垂桜

  
 

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