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知取気亭主人の四方山話
 

『5月10日』

 

2015年5月13日

皆さん、5月10日は何の日かご存じだろうか。そう、「母の日」である。と言いたいところだが、実は私が言いたい記念日はちょっと違う。5月10日が「母の日」になったのは、今年がたまたまである。「母の日は5月の第二日曜日」とどこかの組織が制定しているだけで、先日5月3日の「憲法記念日」の様に、その日が休みになるようにと公布された「国民の祝日に関する法律」に定められている訳でもない。それどころか、同法律で「こどもの日」として制定されている5月5日の条文を読むと、「こどもの人格を重んじ、こどもの幸福をはかるとともに、母に感謝する」と書かれていて、法律的には5月5日を「母の日」と言っても良いかもしれない。

では、私が言いたかったのは何の日かというと、多くの日本人には馴染がないと思われる、「地質の日」である。恐らく、土木関係の仕事をしている人でも、知っている人はあまりいないと思う。私も知らなかった。地質絡みの仕事をしている者にとっては口惜しいことではあるが、それ程マイナーな記念日が5月10日に制定されている。では、そんなマイナーな情報を一体どこから仕入れたかと言えば、意外とお堅いところからの情報で、経済産業省からのお知らせだ。

私は、しばらく前から経済産業省の「新着情報配信サービス」を利用している。いわゆるメールマガジンというやつだ。その5月8日版に、「5月10日は『地質の日』です 〜今年は地質情報を身近に知ってもらうパネル展示を開催します〜」と題した「報道発表」が掲載されてい た(http://www.meti.go.jp/press/2015/05/20150507002/20150507002.html)。この報道発表で、遅まきながら、私も「地質の日」なる記念日があることを初めて知ったのだ。

報道発表に依れば、「明治9年(1876年)の5月10日に、日本で初めて広域的な地質図として「日本蝦夷地質要略之図」(200万分の1)が作成されたことに由来します」とある。その日本初の広域地質図作成を記念して地質関係の組織・学界が制定したらしいのだが、調べてみると、制定したのが2007年というから意外と新しい。地震や火山噴火など、地質に関係する災害が頻発している日本であることを考えると、随分と遅い感じがする。

例えば、1990年以降2007年までの地質的なイベントを上げろと言われれば、1990年〜1996年に掛けて火砕流の恐ろしさを知らしめた雲仙普賢岳の噴火、1993年に奥尻島が甚大な津波被害を被った「平成5年北海道南西沖地震」、今年20年の節目を迎えた1995年のあの「阪神淡路大震災」、2000年には全島避難を余儀なくされた三宅島の噴火と事前避難に成功した有珠山の噴火、更には2004年の新潟県中越地震など、覚えている主だったものだけでもこれだけある。全てのイベントを数え上げれば、それこそ切りがない。加えて、豪雨によって引き起こされる土砂災害も、煎じ詰めれば地質が深く関係している。そう考えると、地質に興味を持ってもらうための記念日制定だとすれば、遅きに失した感が無いでもない。

しかし、将来のことを考えれば、遅きに失したなどと愚にも付かないことは言わずに、この記念日を大いに喧伝して、多くの国民に地質のことに関心を持ってもらう必要がある。自然災害という地質イベントに毎年襲われるこの日本列島に住み続けていく以上、我が身を守るためにも、足下の地質に興味を持つことは、大変大事なことだ。折しも、ネパールでは大地震が発生して甚大な被害が報告されているし、箱根山では噴火の恐れが指摘される火山活動が観測されている。しかも、両地域ともプレートテクトニクスという壮大な地質イベントが深く関与している所で、今後の活動も心配だ。

4月25日にネパールで発生したマグニチュード(Mw)7.8の大地震は、首都カトマンズを中心に被害が広がっており、5月3日現在、ネパール政府の発表に依れば、ネパールだけで死者7,250人・負傷者14,000人にも上るという。この地震は、インドプレートがユーラシアプレートを押し続けている事によって生じている歪を開放する過程で生じたものだ。言い換えれば、その昔平らで動かないと信じられていた地面が、人や建物、山や川までも乗せたまま移動し続けているという、人類の歴史を遥かに凌ぐ壮大な地質イベントの一端を、地震という現象で垣間見せているのだ。

また、4月下旬から活発化してきた箱根山の火山活動は5月に入って一層活発になり、気象庁は、5月6日、噴火警戒レベルを1(平常)から2(火口周辺規制)に引き上げた。山体が数ミリ膨張しているとの観測結果もあり、水蒸気噴火の可能性も指摘されている。この箱根山も、ネパールのヒマラヤ山脈と同じように、プレートとプレートがぶつかってできた地域に位置している。これまた、壮大な地質イベントの一端を火山噴火という形で見せられているのだ。

こうしてみると、我々人間が行使できる力など、地質イベントの持つエネルギーに比べれば、何とちっぽけなことか。しかも我々人間は、その地質イベントによって形成された地盤の上での生活を余儀なくされている。そういう意味では、我々が生活基盤としている足下にもっと興味を持ち、知ることが大事だと思う。5月10日の「地質の日」、これを覚えておいて、足下のことにもっともっと興味を持ってほしいものである。  


【文責:知取気亭主人】


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