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知取気亭主人の四方山話
 

『和食に乾杯』

 

2015年7月15日

キンキンに冷えたビールが美味しい季節となってきた。先週の後半あたりから台風9号の影響で全国的に厳しい暑さが続いている。ここ金沢でも、フェーン現象などの影響を受けて、11日の土曜日からぐんぐん気温が上がり、連日30℃を超す真夏日となっている。12日には今年初めての猛暑日となり、孫相手に汗だくになった。熱波はその後も衰えず、13日には37.4℃と、とうとう平熱を超えた。

暑いのは決して嫌いではないが、これだけ暑いと、体はクーラーの効いた部屋と冷たい飲み物を求め、辿り着いた先での動きはまるでナマケモノだ。どうやら、体ばかりでなく、脳の活動も、思考に関しては夏バテ状態に陥るらしい。ところが、どうしたことか、ジョッキに注がれたキンキンに冷えたビールが、クリーミーな泡を伴ってくっきりと脳裏に浮かぶ。きっと、火照った体と脳が、生命活動を維持するために必死に求めているのだろう。

体と脳が求めているとなれば、求めに応じない訳にはいかない。ジョッキビールでなくても缶ビールでも構わない。とにかく、キンキンに冷えたビールを一杯やることだ。喉越しのあの独特な苦みと冷たさを味わえば、どちらも瞬く間に落ち着いてくれる。落ち着いてくれればこっちのものだ。後は、好きなお酒と心地良い酔いを、ゆっくりと楽しむだけだ。ただ、お酒をより楽しむには、気の利いたお供がどうしても必要になる。そう、酒の肴である。

今の季節で酒の肴と言えば、まず思い浮かぶのが「枝豆」だろう。ビールのつまみとして、日本では横綱級の定番だ。また、以前この四方山話にも書いたが、生まれ育った静岡などで今頃の季節になると必ず店先に並んでいる「新生姜」も、ビールとの相性は抜群だ。新鮮な「新生姜」に味噌を付けて頂くシンプルな食べ方だが、口の中をさっぱりとしてくれる少々の辛みと爽やかな香りが堪らない。私の大好物の一つでもある。ただ、この「新生姜」は東海地方を中心とする太平洋側でのみ食べられていて、金沢で買い求めることが出来ないのが何とも残念だ。

「生姜」とくれば、「冷奴」を忘れてはいけない。冷たく冷やした豆腐にすりおろした生姜を薬味として添えれば、ビールばかりでなくどんなお酒にも合う。また、簡素な味付けではあるが、蒸し暑い日本の夏に食欲をそそる、数少ない定番料理のひとつでもある。もうひとつ、我が家には夏の定番料理がある。今頃の季節になると毎年食卓に上り、しかも私がこよなく愛するお酒の仲の良いお供でもある。夏野菜の「糠漬け」だ。

人によっては「その匂いが苦手」という人もいるが、その匂いといい、塩加減といい、食感といい、色鮮やかな見た目といい、ご飯のお供にも抜群で、家族全員の大好物となっている。家庭菜園で採れるナスにキュウリ、買い求めたキャベツに人参は言うに及ばず、ブロッコリーの茎などの糠漬けも実に美味い。時々リクエストするスイカの皮も、一口頬張るとほんのりとした甘さが口に広がり、子供の頃に返ったようで私は好きだ。きっと肉厚の野菜だったら何でも合うに違いない。この糠漬け、胃腸が弱り食欲が落ちた時などには貴重な食欲促進剤になってくれる、真に有り難い食品である。

ところで、糠漬けの「糠」の字を分解すると、“米”偏に造りは健康の“康”となる。玄米から白米に精米する時に出るのが糠であるが、「ヒトの体に良い成分は糠に多く含まれている」ということを表しているのだろう。いつの時代のどなたが考えたか知らないが、実によく考えられた漢字である。

その米糠には、漢字の意味する通り、消化吸収や神経機能の働きを高めるビタミンB郡、カルシウムの吸収を助けるビタミンDやビタミンEなどのビタミン類、さらには食物繊維、マグネシウムやカルシウムなどのミネラル類など、人体に有益な栄養素がたくさん含まれている。また、糠床には塩も加えられており、糠床の中で発酵食品となった糠漬けは、汗をかきミネラル不足に陥り易い日本の夏にはもってこいの食品となっている。誰が思い付いたのか、ビタミンやミネラルなどの名前は勿論、成分分析など知る由もない遥か昔から、「米の栄養分は糠に在る」と理解していたのだろう。改めて日本人の知恵は凄いと思う。そんな日本人の食文化である「和食」について、熱く語っている研究者がいる。発酵学者の小泉武夫氏である。

ひと月ほど前、初めてお会いした方から、小泉武夫氏の「すごい和食」(ベスト新書)を紹介された。お酒と肴の話で盛り上がり、是非にと勧められた本だ。小泉氏に関しては名前だけは存じ上げていたが、まだ著作を読んだことがなく、早速手に入れ読んでみた。紹介していただいた通り、“目から鱗の情報”満載の本だ。また、「和食」への愛情溢れるその語り口が何とも熱く、ぐいぐいと引き寄せられる。

タイトルが示す通り、和食礼賛の本である。例えば、「牛肉のタンパク質が平均17〜18パーセントであるのに対し、凍み豆腐(高野豆腐)は52パーセントもあって、この地球上で一番栄養がある食品ではないか」と述べている。食べてはいても、殆どの日本人は知らない情報だ。そんな凄い食品が日本にあることを、我々は誇りに思わなければいけないのだが…。

凍み豆腐以外にも、身近な和食で、優れた料理や食品が多数紹介されている。最近はどこの家庭でも洋食を食べる機会が増えているが、日本人の体に合うのは、断然食文化として根付いた和食だろう。ましてや、日本酒を楽しむ時の肴は、和食に限る。お酒好きの皆さん、皆さんの健康のためにも、是非一読することをお勧めする。読み終わった後は、勿論、和食に乾杯だ。  


【文責:知取気亭主人】

 


 
『すごい和食』 (ベスト新書)

【著者】小泉 武夫
【出版社】 ベストセラーズ
【発行年月】 2011/11/9
【ISBN】 978-4584123508(4584123500)
【頁】 新書: 207ページ
【価格】 853円(税込)
  
 

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