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知取気亭主人の四方山話
 

『心を洗われてみませんか』

 

2015年7月22日

近ごろはどうしてこんなに殺伐とした事件が多いのだろうか。新聞を広げるたびに、「またか!」と気が滅入ってしまう。20、30年前に比べると、随分増えたように感じている。そうは感じているが、実は昔とそう大して変わらないのに昔は事件の情報が届かなかっただけ、なのかもしれない。しかし、やけに目についてしまう。いずれにせよ、インターネットやスマートフォンなどの新たなメディアの登場により、情報が広がるスピードが格段に速まったことも影響しているのだろう。

情報の伝達スピードの変化以外にも、考え方の変化も影響しているような気がする。インターネットが日本国内に浸透するにつれ、「ヒルズ族と呼ばれる金持ちたちが勝者」のような短絡的な考え方がテレビなどに登場し、メディアでもてはやされる時代になってきたことが事件の増えた背景にあるのかも知れない。「コツコツと地道に生活する多くの日本人は負け組」と捉えられるような、例えば「金持ち父さん貧乏父さん」に代表されるような本が売れ、物質至上主義が蔓延してしまっている結果なのかもしれないのだ。いずれにしても、庶民の中に一億総中流意識が無くなってしまった今、多くの事件報道に触れるたびに、知らず知らずのうちに日本人の心が穢れ、荒んできているように感じるのは、私だけではないだろう。

6月30日、新横浜―小田原間を走行中の東海道新幹線「のぞみ号」の車中で、71歳になる男性が焼身自殺をして、全国民に衝撃を与えた。同乗していた女性が巻き添えに合い死亡し、25人が気道熱傷などで負傷したが、トンネルの外に緊急停車させた運転手の機転で大惨事にならずに済んだのは、不幸中の幸いであった。自殺の背景には、どうやら“生活苦”があったらしい。公共の乗り物の中で自殺するなど言語道断ではあるが、「高齢者の生活苦」という現代の、またこれからはもっと増えるであろうこの社会問題を考えるとき、一老人の勝手な行動、と切って捨ててしまうには根は深くて暗い。

また、岩手県矢巾町では、中学2年の男子生徒(13)が“いじめ”を苦に、電車に飛び込み自殺した。生徒と先生でやり取りする「生活記録ノート」の中で“いじめ被害”を訴えていたようだが、無情にも訴えが届くことはなかった。男子生徒は随分前からいじめ被害を訴えていたことが報道されているが、相談相手たる教師の返信を読むと、その訴えに何ら反応していないようにみえる。それまでにも何度も自殺をほのめかす記述があったにもかかわらず、担任の反応は至って鈍い。生徒が書いた最後の記述「市(死)ぬ場所はきまってる」を読めば、それまでの記述から判断して、ただ事でないことは誰の目にも明らかなのに、彼の必死の訴えは、担任や校長に届くことはなかった。事件後の聞き取りによる実態調査で、少なくとも約60人の生徒がいじめを見聞きしたことがあると回答したと報道されており、またしても学校という組織の危機感の無さが浮き彫りになっている。母親がインタビューに、家を出てから自殺するまでの2時間、何を考え歩いていたのかを考えると胸が締め付けられる、と答えていたが…。

いじめと言えば、つい半年ほど前の2月20日、川崎市の多摩川河川敷で中学1年生(13歳)が無残にも殺害されていたという陰惨な事件も、いじめの延長線上の犯行と見られている。交流のあった上級生グループから度々いじめを受けていたという。顔にあざがある写真も公開されているが、僅か13歳の少年が、どうして、あのようなむごい殺され方をしなければならなかったのだろうか。犯行に及んだ犯人たちの心模様も理解できない。

上記以外にも、まだまだ殺伐とした事件は引きも切らない。しかし、暗い事件報道にばかり接していると、知らず知らずのうちに感性が鈍感になり、私自身の心が穢れ、そして荒んでいくように感じてしまう。そうならないように日頃から感性は磨いているつもりだが、最近そんな“荒みそうな心”が洗われる、良質な本を読んだので是非皆さんに紹介したい。

NHKラジオ番組の「すっぴん」で紹介された、文化放送「大竹まことゴールデンラジオ!」編の「手のひらにおさまる77のちょっとした幸せ」(株式会社ポプラ社)という本だ。「すっぴん」に出演しているパーソナリティ高橋源一郎氏の「源ちゃんのゲンダイ国語」なるコーナーで紹介され、その心温まる内容から、忽ちファンになった。

本は、文化放送「大竹まことゴールデンラジオ!」という番組の中のコーナー、「大竹発見伝〜ザ・ゴールデンヒストリー」から厳選したエピソード77話を一冊にまとめたものだ。市井の人々に起こったチョットしたドラマを、構成作家が原稿を書き、時には何度も手直しをして完成した77話だという。中には、番組で朗読・紹介された「江ノ電の奇跡」のように、涙なくしては読めない話もある。また、「手話という日本語を」では、何年振りかで枕を濡らした。その他にも、心温まるドラマ満載である。どのドラマ一つをとっても、染みついた穢れが洗い流されるようで清々しい。

ラジオを聞いて直ぐに買おうとしたが、残念ながら既に絶版になっていて、市中の本屋さんで買い求めることは出来なかった。破格の値段が付けられている古本を除けば、ネットでも手に入れるのは難しい。結局、私は金沢市の図書館から借りて来た。そこまでしても読む価値のある本だと思う。殺伐とした事件に最近心が疲れ気味だな、と感じている方は必見だ。必ずや心が洗われると思う。是非、読後の爽やかな気分を味わっていただきたい。  


【文責:知取気亭主人】

 


 
『手のひらにおさまる77のちょっとした幸せ』

【編集】文化放送「大竹まことゴールデンラジオ!」
【出版社】 ポプラ社
【発行年月】 2010/4/24
【ISBN】 978-4591117897(4591117898)
【頁】 単行本(ソフトカバー): 171ページ
【価格】 1,008円(税込)
  
 

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