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知取気亭主人の四方山話
 

『電気柵事故に想う』

 

2015年7月29日

19日、静岡県西伊豆町で起こった衝撃的な事故が、日本中を駆け巡った。獣害対策用の電気柵に感電して、大人の男性2人が死亡し、小学生の子供を含む5人が重軽傷を負ったというものだ。報道によれば、事故があった電気柵は、橋のたもとのアジサイの花壇を守るために設置されたもので、事故当時は一部が壊れて川に垂れ下がっていた状態だったという。どうやら漏電していたらしい。

電気柵は近年チョクチョク耳にするようになり、結構身近なものだと感じていただけに、これほどの危険と隣り合わせているとは思ってもみなかった。イノシシやシカなどの獣を撃退するために設置されるものであるから、人間にもそれなりの危険性があるとは思っていたのだが、まさか死に至るほどの重篤な事故が起こるとは…。

しかし、よくよく考えてみれば当然と言えば当然のことだ。ただ、私には子供の頃に裸電球のソケットに針金を突っ込んで感電した経験があったため、電気柵の衝撃もその程度だろうと、浅はかにも思い込んでいたのだ。でも、これほど危険なものであるのにも拘らず、随分身近な所に設置されるようになったものである。しかも、私の様に電気柵とは全く無縁の者は勿論、設置して使用している人さえも、その危険性をさほど意識もせずに使用している様に思えるのだが…。

7月23日のYAHOOニュース(産経新聞、http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150723-00000507-san-soci)によると、電気柵を含む獣用の侵入防止柵は、年に約1万キロというすさまじい勢いで増えているという。背景には、シカやイノシシの急増や、全国の中山間地域の過疎化と耕作放棄地の増加がある、と指摘している。加えて、獣害防止のための交付金制度が平成20年度からスタートして、毎年100億円近い予算を各都道府県に分配していることも拍車をかける要因となっていて、この交付金をもとに設けられた防止柵の総延長は全国で4万〜5万キロに達しているのだという。シカやイノシシの増え方も尋常ではないが、電気柵の増え方も凄い。

更に、ホームセンターなどでも100メートル数万円程度で販売されている上に、届け出や登録が不要だと言い、こういった手軽さも急激な普及に拍車を掛けているのだろう。また、どこで使われているのか市町村でも把握できていないのではないか、と農林水産省の担当者もみているというから、随分と心許無い。私と同じように危険性の認識はかなり低かった、と言わざるを得ない。しかし、今回のような事故と隣り合わせの危険性が潜んでいるとすれば、電気柵以外に獣害から農作物や森林を守る手立ては無いものなのだろうか。また、被害はそんなに深刻なのだろうか。そこで、被害の実態を調べてみた。

環境省が出している「鳥獣被害の現状と対策について」という報告書によると(http://www.env.go.jp/nature/choju/effort/effort5/effort5-1a/summary.pdf)、鳥も含めた野生鳥獣に因る農作物の被害額は、平成22年度において239億円にも上り、前年度に比べ26億円増えたという。中でも、シカ、イノシシ、サルによる被害が顕著で、全体の7割をも占めているらしい。専業農家以外の被害もめれば、もっと増えるに違いない。

また、林野庁によると(http://www.rinya.maff.go.jp/j/hogo/higai/tyouju.html)、平成25年度におけるシカやクマ等の野生鳥獣による森林被害面積は、全国で約9千ヘクタールとなっていて、このうち、シカによる枝葉の食害や剥皮被害が全体の約8割を占め、深刻な状況となっているという。そのシカは、丸山直樹氏(東京農工大名誉教授)によると、2000年に80万頭だったものが、現在は250万頭にも増え、このまま放置すれば10年後には500万頭になると言われているらしい。また、シカによる食害は、“南アルプスのお花畑”や尾瀬のミズバショウやニッコウキスゲなどの高山植物にも被害が及んでいて、落ち葉まで食べ尽くすシカの食害は、土砂災害の一因にもなっているという。

では、そんな獣害から農作物や日本の自然を守る、電気柵以外の手立てとして、どんな方法があるのだろうか。実は、目から鱗の方法がありそうなのだ。丸山直樹氏が提唱する、“オオカミの復活”である。

日本経済新聞の7月11日朝刊に、丸山氏のインタビュー記事が載った。氏は「一般社団法人日本オオカミ協会」の会長でもある。以前、NHKラジオで「日本にオオカミ復活を」と熱く語っている方(多分、丸山氏であろう)の話を耳にしていたことと、記事にも載っているアメリカのイエローストーン国立公園でのオオカミ復活の成功例を知っていたこともあって、「オオカミ復活が環境救う」のタイトルに飛びついた。読めば読むほど、私もオオカミ導入に賛成したくなってくる。食物連鎖の頂点に立つのは、やはり肉食獣でないといけないと改めて思う。

しかし、導入しようにも、日本に生息していたニホンオオカミは1905年に既に絶滅している。となると、外来種を導入することになってしまうのだが、NHKラジオの出演者は、北半球に広く生息している「ハイイロオオカミ」が日本に生息していたオオカミの近種で、これが導入候補である、と語っていた。海外からの導入となると、他の動植物と同じように「危険」の頭文字を付けられそうだが、どうやら外来種とはならないらしい。

「一般社団法人日本オオカミ協会」のホームページ(http://japan-wolf.org/)には、「オオカミ移入種説にピリオド:ハイイロオオカミと遺伝子同一を確認」という一文が載っていて、このタイトルが正しいとすれば、トキと同じように、海外から導入しても外来種とはならないようだ。こうなると、「オオカミ復活」が俄然現実味を帯びてくる。人を襲うことはない、とも書かれていて、食物連鎖という自然由来の方法で獣害防止をするのが理にかなった方法だと思うのだが、さて如何だろうか?  


【文責:知取気亭主人】


事故現場に植えられていたというアジサイ
シカの食欲は旺盛らしい。
“シカ算”で増えていくわけである。

  
 

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