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知取気亭主人の四方山話
 

『MJO』

 

2015年9月16日

台風18号の影響による記録的な豪雨は、関東・東北地方を中心に大きな被害をもたらした。栃木県や茨城県、そして宮城県などの各地に大雨をもたらし、豪雨の凄まじさと洪水の破壊力を、まざまざと見せつけた。中でも、栃木県から茨城県に向け南流している鬼怒川の被害は甚大だ。常総市において発生した堤防決壊の様子が映像として捉えられていて、次第に破堤が拡大されていく様子や、屋根に人を乗せたまま濁流に飲み込まれていく家屋の様子は、息をのむばかりだった。

総務省消防庁のまとめによると、今回の豪雨による住宅の被害は、15日17時30分の発表資料で、上記の3県を中心に▽全・半壊が17棟、▽一部損壊が95棟、▽床上浸水が7,093棟、▽床下浸水が11,688棟に上るという。また、痛ましいことに、7人が死亡した。そんな中、一時「常総市で15人が行方不明」と報じられていたが、偽の情報1人も含め全員の無事が確認されたのは、唯一の明るいニュースであった。ただ、まだ水の引かない地域もあって、被害の全容はつかめていない。コメを始めとして、収穫前の農作物もあったに違いないのに、農家の皆さんのこれまでの苦労が水の泡と消えてしまわないか心配だ。被災された皆さんに心よりお見舞い申し上げると共に、一日も早く平穏な日々が戻ることを願って止まない。

さて、これほどの被害を出した台風18号だが、日本に近づき影響を及ぼし始めた時点では、気圧そのものは1000ヘクトパスカルに近く、規模的にも勢力的にもそう大きな台風ではないと思っていた。しかし、東海地方に上陸した当りから、凄まじい豪雨による被害が出始め、やがて台風の東側に帯状に積乱雲が次々と発達する「線状降水帯」が居座るようになり、被害を拡大させていった。

ニュース番組で良く出ていた“雲の動き”を見ていると、確かに、同じようなところで、南北に延びる帯状の雨雲が活発に発生しているのが分かる。同じ地域、しかも同じ河川の流域で長時間に亘り降り続けば、時間当たりの降雨強度は左程激しくなくても、河川に大量の雨水が供給される事になり、必然的に洪水の危険性は高くなる。鬼怒川に関しては、南北に流れる川の真上に「線状降水帯」が停滞していたのだから堪ったものではない。

しかし、毎年毎年よくもまあこんなに大雨に起因する災害が発生するものである。「時が経つにつれ忘れ去っている」ということがあるのかも知れないが、ここ10年なのか20年なのかつまびらかには出来ないものの、大雨起因の災害が増えているのはまず間違いないところだ。また、大雨に限らず高温や竜巻など、激しい気象が近年増えて来ている、との指摘もある。その原因は、「人間活動による温暖化などの気候変動によるものだ」とも言われていて、それは多分間違いないところだろう。ただ、こういった最近の異常気象が、地球温暖化によるものだけなのか、それとも地球という天体が元々持っている呼吸の乱れのようなものなのか、議論のあるところでもある。

そんな中、今回の豪雨災害に時を同じくして、近年の異常気象の原因に迫る、大変興味深いテレビ番組を観た。5日の土曜日に放映されたNHKスペシャル「巨大災害」の第1集、「極端化する気象〜海と大気の大変動〜」だ。ただ、実際に観たのは録画されたもので、丁度生々しい鬼怒川堤防決壊のニュース映像を見たばかりだったこともあり、その内容はストンと腑に落ちた。

番組によると、確かに気象の変化は“極端”になり始めているのだが、その原因は、最近の研究によって、地球に仕組まれた「振り子」のような大気や海の変動がいくつも重なったためであることが明らかになってきたという。その変動のひとつに、マッデン・ジュリアン振動(MJO :Madden Julian Oscillation)と呼ばれる、東西数千キロに及ぶ雲の(対流活動が活発な)領域が移動する、聞きなれない地球規模の大気循環があるのだという。マッデンさんとジュリアンさんが1970年代に発見した大気振動の一つで、インド洋上で発生して赤道上空を凡そ40日間掛けて地球を一周し、振動が大きく振れた時にエルニーニョ現象と重なると、スーパー台風を発生させやすくなるのだという。

このMJOの他に、エルニーニョ現象、インド洋で発生するエルニーニョ現象とよく似たダイポールモード現象、北極震動、南極震動、太平洋数十年規模震動、同じく大西洋数十年規模震動、さらに北大西洋震動と呼ばれる地球規模の変動が存在していて、これら「振り子」のような変動が重なることで、気象の極端化が進むとみられている。

では、これらの「振り子」が重なる時期に、規則性はあるのだろうか。それがどうやらあるらしい。初耳だが、雨の中に含まれ、木の年輪に留まる酸素同位体の数を数えることによって(酸素同位体比)、“雨の多い少ない”を推定することが出来るという(興味のある方は、http://www.chikyu.ac.jp/publicity/publications/newsletter/img/newsletter_49.pdfを参照してください)。その方法で日本の遺跡から見つかる古い木を調べたところ、登呂遺跡の時代に当たる127年に今の約3倍もの大雨が降った年があることが分かったという。さらに、凡そ400年周期で激しい降雨変動、いわゆる「大変動」に襲われていたことも突きとめたというから興味深い。

そうなると気になるのが最後の大変動時期だが、今から300年ほど前の1700年前後だと分かっているそうだ。次の大変動までにまだ100年もある、と安心してはいけない。温暖化によって気象の極端化はますます顕著になっていて、研究者によれば、「振り子の重なり」はいつ起こってもおかしくない状況だという。それを素直に受け取れば、最近の異常気象の頻発は、既に大変動の始まりを告げているのかもしれない。

3.11東日本大震災の時に頻繁に使われた「想定外」、その言葉を繰り返さない用心が、今まさに求められている。  


【文責:知取気亭主人】


ヒルガオ

  
 

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