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知取気亭主人の四方山話
 

『危険生物とビジネス』

 

2015年10月07日

登録しているあるメールマガジンから、かのビル・ゲイツが自身のブログで危険な生物ランキングの図を掲載し注目を集めている、との情報を得た。早速閲覧してみたところ、情報通りなかなか興味深い図である。その生物によって一年間でどれほどの人が命を落としているか、人数によってランキングをつけているのだが、予想外の生物が登場したり、もっと多くの人が犠牲になっているだろうと思っていたら意外と少なかったりと、非常に興味深い。また、生活環境や保健衛生の重要性、またシリアスに捉えると、「ヒトとは何ぞや?」などを考えさせられる内容でもある。

タイトルを「The Deadliest Animal in the World」という。興味のある方は是非ご覧になって頂きたい(http://www.gatesnotes.com/Health/Most-Lethal-Animal-Mosquito-Week)。それでは、早速そのランキングを紹介しよう。命を落としている人数の少ない順に、図に書かれているのをそのまま表にすると以下のとおりとなる。なお、表の左端に示した順位は、犠牲者の多い順であり、()の中の日本語と共に私が加筆した。

これを見ると、カバに因る被害が意外と多いのにはビックリだが、サメからワニにかけての10位以下は、大きな野生生物の代表選手による被害と言えなくもなく、人口の増加や野生生物にとっての環境悪化に伴って、ヒトと猛獣との生活圏がグッと近くなってきた証拠なのかもしれない。これら猛獣の上位に来る8位、9位は、寄生虫によるものだ。私が子供の頃には、野菜の肥料に人糞を使っていたこともあり、日本でも多くの人がこれに悩まされていた。小学生だった私にも回虫がいたこともあって、カイニンソウと呼ばれる虫下し薬を飲まされた記憶がある。今の日本ではこれらで命を落とす人はいないと思うが、世界にはまだまだ衛生状態の良くない国が多い、ということの何よりの証拠でもある。

次の10,000人もの犠牲者を出すとされる5位の三つの病は、何れも小さな生物が媒介する病気だ。ジストマ菌による住血吸虫病は、私が中学生の頃、ツベルクリン反応と同じ様な方法で検査をしたことがあって、不治の病と噂されていた。「淡水のカニやタニシは十分火を通して食べろ」と言われていたが、高校の頃になると検査自体も行われなくなったから、日本での流行は殆ど無かったのだろう。また、同じ順位のサシガメは、文字通り昆虫界の暗殺者として名高い生物らしい(英単語のassassinには“暗殺者”とか“刺客”という意味がある)。初めて聞く生物だが、日本で言えば、さしずめダニの一種である「ツツガムシ」や「マダニ」のような生物で、これらと同様に厄介な病気を媒介するのだろう。

さて、いよいよトップ4だが、意外な生物が上位を占めているのに驚く。まず4位は、多くの国でペットとしての人気が高い犬だ。噛み殺される事例もたまにニュースで聞くが、圧倒的に多いのは狂犬病だろう。日本では予防接種が義務化されているため、滅多に聞くことはない。しかし、世界では年間25,000人も犠牲になっているというのだから驚きだ。確かに、野良犬がやたらと多い国があるとも聞く。いくら犬好きだと言っても、海外では犬にむやみに近づかない方が良さそうだ。

次の3位のヘビにもビックリだ。日本でも沖縄などでハブによる犠牲者がたまに報道されているが、正直これ程多いとは思わなかった。世界中の殆どの国に、猛毒を持ったヘビがいるのかも知れない。また、毒ヘビ以外にも、熱帯地方ではアナコンダのような大蛇による被害もきっと多いのだろう。

残るは1位と2位だが、2位を飛ばして、先に1位を見てみよう。70万人を超す犠牲者を出して1位となったのは、羽音も耳障りな蚊である。熱帯地方を中心にマラリアやデング熱、また日本では日本脳炎などを媒介する、あの厄介な生物である。日本を始めとする先進諸国では、上・下水道や水路、河川や湖沼の整備により、蚊そのものも大分減ってきた。しかし、熱帯地方には、これらの未整備な国が多く、特にマラリアによる被害は深刻だ。最近、日本の蚊帳が注目を浴びているとの話も聞くが、住環境が劣悪な国がまだまだ多いだけに、当面、1位2位を争うのが定位置となっていそうである。

最後に2位だ。まさか我々ヒトがランクインするとは、しかも2位だとは思ってもみなかった。ビックリ仰天だ。しかし、冷静になって考えれば、常にどこかで殺し合いが行われているのだから、当然と言えば当然なのかもしれない。国同士の戦争、内戦や宗教間の争い、テロ、殺人、事故など、他人に殺される理由や手段はいろいろあるが、ヒトが欲望を持っている限り、殺し合いは無くならない。ただ、毎日の様に戦争やテロのニュースに接していると、475,000人という数は少なすぎるのではないか、と思えてしまうから恐ろしい。ヒトという生物が誕生し、財産を持つようになり、国という概念が定着して以降は、常に1位か2位が定位置となっているのだろう。国や価値観の違う見知らぬ他人でも、せめて犬よりは安心して接していたいものである。

ところで、このビル・ゲイツのランキングを見ていて気が付いたのだが、これらの生物による犠牲者を少なくする取り組みとしては、ヒトの努力でいくらでも出来るものばかりである。そしてその対策は、全てビジネスにすることが出来る。ヒト以外の生物に対しては、生活環境や保健衛生の改善、そして特効薬の開発・投与をすることによって、犠牲者の数はかなり減らせる。それらの支援やビジネスは、犠牲者を多く出している国や地域の住民からは、深く感謝されるに違いない。それは、今年のノーベル生理学・医学賞に、寄生虫による熱帯病の治療薬開発に貢献した大村智北里特別栄誉教授と米ドリュー大学のウィリアム・キャンベル名誉研究フェロー、そしてマラリアの画期的な治療薬を開発した中国中医科学院の屠呦呦(ト・ユウユウ)終身研究員兼主席研究員が受賞したことからも分かる。

ところが、ヒトに関しては、このロジックは難しい。世界中の人々が平穏に仲良く共存していくには、ヒトは余りにも欲が深すぎる。底が無いのではないか、と思ってしまうぐらいだ。ましてや、犠牲者を増やす武器を製造販売するビジネスを、国家レベルでやっている国もあるのだから、悲しくなってしまう。

最近、日本もそんな国に一歩近づいてしまったのではないか、と危惧している。10月1日、戦闘機などの防衛装備品の研究開発から調達、そして輸出までをも一元的に担う「防衛装備庁」が発足したのだ。日本を取り巻く安全保障環境の厳しさは理解できるが、同じビジネスをするなら犠牲者の数を減らす対策で成功して欲しい、と願うのは荒唐無稽な願いなのだろうか。  


【文責:知取気亭主人】


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