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知取気亭主人の四方山話
 

『趣味』

 

2015年10月28日

人は誰しも、歳を重ね第一線を退いて第二の人生を歩み始める頃までに、仕事に代わって“夢中になれる何か”を見つけておく必要がある。仕事中毒の人は特にそうだが、俗に言う、“生きがい”である。時間の使い方が上手い人は、若い頃から仕事以外に夢中になれる趣味を持っていることが多く、あまり心配はいらない。心配があるとすれば、趣味を続けるだけのお小遣いを大蔵省から貰えるかどうか、だけである。しかし、特段そういった夢中になれるものを持っていないと、お小遣いの心配は要らない代わりに、暇を持て余し、怠惰な第二の人生になりかねない。我が身の行く末を案じている意味もあるのだが、酒を飲んで家でゴロゴロとしているだけ、といった具合だ。行き着くところ“粗大ゴミ”である。

しかし、誰しも“粗大ゴミ”にはなりたくない。私とて同じだ。そんなこともあって、高齢者の仲間入りをしてからというもの、第二の人生をどう送るか、真剣に考えるようになってきた。まだ暫く仕事人間が続き、実際に第二の人生をスタートさせるのはもう少し先になりそうだが、60歳を過ぎた頃言われたある先輩の言葉が耳に引っかかっていて、真剣さに拍車をかけている。

冗談もきつい先輩は、「お前の歳になったら棺桶に片足を突っ込んでいるどころか、もう首から上しか出ていないよ」と、笑いながら脅すのだ。それ以来、この冗談とも本気ともつかない一言に、“棺桶”の二文字が妙に身近なものになった。確かに、日本人男性の平均寿命が80歳弱で、健康寿命に至っては72歳弱だというのだから、言われた当時は冗談と聞き流していたが、66歳も半ばを過ぎた今となっては、「首から上しか出ていない」というのも素直に納得、である。

加えて、ここにきて鬼籍に入る友人・知人も増え始め、改めて、「首から上しか出ていない」を悟っている。ところが、夢中になれる趣味を思い返してみたのだが、どれもこれも中途半端で、「これだ!」と胸を張って言えるものがない。夢中になるという意味では、秘かに抱いている子供のような野望があるにはあるのだが、結構な大金が必要で、このままでは夢に終わる可能性が高い。ただ、諦めたくはない。何とか、多少形を変えてでもいいから野望を実現させたい、と皺が減り続けている頭で考えているのだが、なかなか妙案は浮かんでこない。そんな折、素敵な趣味を持った人達とひと時を過ごす機会に恵まれ、夢中になれる趣味の楽しさと魅力を堪能させてもらった。他人を楽しませることが出来る趣味を持つということは、本当に素晴らしいことだ。

私の眼科の主治医であるK先生は、音楽の趣味を持っていて、ギターの弾き語りが得意である。同じ酒好きの匂いがするからなのか、妙に気が合い、一緒に飲みに行ったり、時々他の患者さんなども交えて開く、カラオケボックスなどのミニコンサートに参加させてもらったりしてきた。ほぼ同世代ということもあって、耳に馴染んだフォークソング主体のミニコンサートは、私も家内も大のお気に入りである。酒好きの私にとっては、お酒も入りほろ酔い気分で聴けるのが、何と言っても良い。

そんなミニコンサートが、先日、K先生の医院を会場に開催された。医院での音楽会というのもあまり聞かないが、演奏者も聴衆も入れて総勢10名の、本当にミニのコンサートである。ただ、ミニのコンサートではあったが、先生達のフォークソングに加え、薬剤師との二足の草鞋を履くセミプロのシャンソン歌手も魅惑の歌声を披露してくれて、素晴らしいコンサートになった。

そのシャンソン歌手もK先生の友人、そしてK先生を囲みトリオで演奏と歌声を披露してくれた二人も、勿論K先生の仲間である。聞けば、K先生と仲間のお二人は、洒落たグループ名も付けていて、医療関係のイベントなどで演奏を披露しているという。アマチュアバンドとしてすっかり楽しんでいる様子だ。この二組に加えて、音楽繫がりで、声楽家と医師の二足の草鞋を履く先生も駆け付けてくれた。さわりだけだったが、本格的な素晴らしいテノールを披露してくれた。石川県内ではかなり御高名な先生らしい。手作りのミニコンサートでありながら、何とも素敵な人達が集まったものである。

お蔭で、楽器演奏などからっきしの私は、はなから聴衆を決め込み、美味しい日本酒を頂きながら音楽を聴く、という至福のひと時を過ごさせてもらった。私が誘った(以前、小泉武夫著「すごい和食」(ベスト新書)を紹介してくれた)ご夫妻も、大変喜んでいた。ひょっとしたら何か楽器を演奏されるのかもしれないが、演奏しなくても、音楽が好きだという事はほぼ間違いなさそうだ。音楽のジャンルは違っても、また演奏は出来なくても、歌ったり聴いたりすることは好き、という人は多い。このミニコンサートに集った人は、全員そうだったに違いない。趣味は友を呼ぶ、である。集ったからにはこの会を続けよう、ということで名前も付いた。「百楽会」である。

お酒とくれば「百薬の長」であるが、その百薬を捩り、仕事上での「肩書=冠(草かんむり)」を捨て百歳まで色々なことを楽しもう、と思いを込めている。是非、2回、3回と続けていきたいものである。百回まで行ったら最高だ。

それにしても、趣味で他人を楽しませ、和ませることが出来るとは、素晴らしいことだ。私も、第二の人生に入ったらピアノでも習いたいなと思っているが、他人を楽しませるまで棺桶から出ている部分があるのかどうか、甚だ心配だ。もしまだ顔が出ていたら、先生たちのトリオに乱入・参加したいと思っている。果たして、この夢は叶えられるかな?  


【文責:知取気亭主人】


岩沙參(イワシャジン):お向かいの素敵な趣味

  
 

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