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知取気亭主人の四方山話
 

『日本人のさが?』

 

2015年11月4日

横浜市都筑区のマンションで起きた基礎杭に関するデータ改ざん事件が、世間を賑わしている。発覚以来、基礎杭工事を担当した旭化成建材施工の物件が全国で何千件あるだとか、データ改ざんに係わった現場代理人の担当した物件が幾つあるだとか、関連ニュースが毎日のように報道されている。既に「北海道でも改ざんが行われていた」との報道もあって、まだまだ出てきそうな、嫌な雰囲気になって来ている。一体どこまで拡大するのだろう。最悪の場合、業界全体を巻き込む大スキャンダルに発展していくのではないか、との危惧さえ抱いている。ただ、被害の広がりを伝える報道が多く、ニュースの中心からずれてしまった感のある当該マンションの住民の皆さんは、腹立たしさに加え、さぞかし不安なことだと思う。心中察するに余りある。

しかし、建物の安全性を左右する重要な杭なのに、なぜデータ改ざんなどという不正が行われたのだろう。背景には、建設業界の人手不足やタイトな工期の中での“工期優先の弊害”が取り沙汰されている。また、建設業界の長年の課題である“重層下請け”という構造では元請けに物申す空気にない、ということも言われている。さらには、渦中の現場代理人が年上の人達を使わなければならなかった立場や性格なども原因の一端にある、とも囁かれている。恐らく、どれも間違いではないだろう。でも、果たしてそういったことだけが、不正の温床や原因になっているのだろうか。記憶にある大企業が犯した不正や個人の捏造事件を思い返してみると、一概にそうとばかり言えないのではないか、と思えてくる。もっと根深いものがあるように思えてならないのだ。

今回の杭基礎に関するデータ改ざん事件は、今のところ、現場代理人が犯した不正であるとみなす報道が多い。しかし、これまで世間を騒がせた、改ざんや捏造に係わる不正事件を思い返してみると、個人のみに責任を帰するものばかりでなく、企業の経営陣が深く係わり、ある種企業ぐるみで犯した不正も結構多い。しかも、名だたる大企業が犯したものがかなりあるのも周知の事実だ。

記憶にある最近のものだけを取り上げても、オリンパス工業の有価証券取引によって生じた巨額損失隠ぺい事件、東洋ゴム工業の免振装置に絡むデータ改ざん事件、決算発表時期までも遅らせざるを得なかった東芝の不正会計問題、更には世界を驚かせたフォルクスワーゲン社による排ガス不正ソフトの利用などがすぐ浮かぶ。データの種類は違っても、どれも改ざんという不正を犯した事件だ。それ以外にも、ノバルティスファーマ社の降圧剤「ディオバン」の臨床研究データ改ざん事件も記憶に新しい。

また、企業のみならず、個人で日本や世界を欺いた人達も結構いる。世界の医学界や難病患者をジュットコースターのように翻弄した小保方晴子氏のSTAP細胞騒動も、今となってはデータ捏造という不正を犯したとされている。小保方氏以前に、お隣の韓国では、ノーベル賞に最も近いと噂されていた、ソウル大のファン教授の「ES細胞」に関する論文捏造事件もあった。更に、科学以外では、歴史を冒涜した旧石器捏造事件もあり、当時随分と世間を騒がせた。“神の手”と呼ばれた考古学者藤村新一氏の、旧石器発見が捏造であったという事件だ。この事件では、日本の歴史教科書を書き換えなければならなかった、というから影響は極めて大きかった。

その他、他人の成功にちゃっかり便乗した、虚偽の売名行為もあった。iPS細胞の研究で山中伸弥氏がノーベル賞を受賞し日本中が湧き返っている頃、突如、森口尚史なる人物がiPS細胞を使った世界初の心筋移植手術を実施した、と新聞で大々的に報じられた。しかし、多方面から数々の疑義が起こり、その僅か2日後には「同氏の説明は虚偽」との訂正報道がされた、笑い話のような騒動もあった。

この様に、データの改ざんや捏造をして不当な利益や名声を得ようとした事件は、大きなニュースになったものだけでもこれだけある。ニュースにならなかったものも含めれば、星の数ほどあるに違いない。そして、フォルクスワーゲン社の問題やファン教授の捏造事件に見られるように、諸外国でも似たような事件はある。しかし、日本でのニュースにしか接していないからなのか、日本人が犯した改ざん・捏造事件が殊の外多いように感じている。「我々日本人は基本的に真面目で嘘をつかない」と日本人の多くは信じているが、そういった思いは、実は日本人の切なる願いだったのではないか、とさえ思えてくる。

日本には「お茶を濁す」の諺があるように、“今”をやり過ごせば後は何とかなる、の考え方が結構横行していたのではないかと思う。それは、諸外国の多くが「物事を白黒はっきりさせる」との考え方に立つ社会なのに対し、日本の社会は「人を疑うなんて失礼だ。曖昧大いに結構」を基本としていたからではないか、と思っている。言い方を変えれば、お人好しが多い、ということだ。だから、日本人の多くは人をすぐに信用する。それを悪用している典型例が、今横行している高齢者を狙った“振り込め詐欺”などだ。騙そうとする側は、いつでもそこを突いてくる。翻って、今から70余年前、戦況が日増しに悪化しているにも拘らず常に大勝利を伝えたという大本営発表などは、その最たるものだったと言って良い。疑うことを知らない国民を見事に欺いていたのだ。

こんな風に考えると、今回の基礎杭データ改ざん事件は、疑いの目で見ることが出来ない“日本人のさが”が根底にある、と言えなくもない。やはり、物事によっては、「白黒はっきりさせる風土」の醸成が早急に求められている。いつまでも“お人好し”ではいられない!  


【文責:知取気亭主人】


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