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知取気亭主人の四方山話
 

『凶暴外来ハチを駆除せよ』

 

2015年12月2日

ふた月ほど前、会社に珍しい案内が送られてきた。ハチ毒によるアナフィラキシー症状への対応を事前に準備しておいた方が良いですよ、という呼びかけのパンフレットだ。パンフレットには、「平成20年改正の林業・木材製造業労働災害防止規定で、『…重篤なアレルギー反応を起こす恐れのある作業者は、アドレナリンの自己注射器(エピペン)を携行するよう努めること』が決められた」とある。確かに、測量や現場踏査など、ハチと遭遇することの多い業務をしていると、刺されることがちょくちょくある。会社にも、仕事中2回もスズメバチに刺された仲間がいて、2回とも病院に担ぎ込まれるほどの重篤な症状だった。2回目の時には、「今度刺されたら危ない」と診断されているから怖い。

その彼とは程度が全く違うが、私も小学生の頃、凝りもせず2回も巣を取ろうとして顔を刺され、大きく腫れた経験がある。それ以来しばらく“ハチの一刺し”とは無縁だったのだが、20年ほど前だったか、仕事中に刺され、久し振りにハチ毒の洗礼を受けた。巣のあった草を鎌で刈ってしまったらしい。ただ、何れも、そんなに毒性の強くないアシナガバチだったことが幸いして、アナフィラキシー症状が出ることはなかった。一番ひどかった時でも、顔がパンパンに腫れて医者に診てもらったものの、アンモニア液を塗っただけの簡単な処置で終わってしまい、拍子抜けした記憶がある。当時は、ハチによるアレルギー反応などという概念は無かったのかもしれない。

しかし、調べてみると、毎年20名近くの人がハチ毒によるショックで亡くなっているというから、「ハチぐらい」と侮ることはできない。しかも、息子夫婦の借家に巣を作っていた、黄色スズメバチを処理してくれたハチ駆除の専門家によれば、近年ジュースの空き缶が至る所で捨てられるようになり、随分と身近な場所で営巣するハチが増えているのだという。花蜜や樹液を探さなくても、空き缶に残るジュースは、手軽に得られる何よりのご馳走なのだろう。それと共に、巣との“ばったり遭遇”が増え、運悪くハチに襲われる事態も増えてきているのかもしれない。

ただ、“ばったり遭遇”が増えたとはいえ、最近の子はハチをちょっと怖がり過ぎているのではないか、と感じている。野山を駆け巡っていた私の子供時代と比べると、三十路に突入した我が家の子供たちも、そして小さな孫娘も、羽音を聞いただけで身をすくめていて、その怖がり様は尋常ではない。私が子供の頃は、ハチは巣を攻撃しなければ襲うことはない、と上級生のガキ大将から教えられたものだったのに…。

子供や孫に比べると、ガキ大将から代々受け継がれた教えのお陰か、私は、体の近くにハチが飛んできてもさして怖くない。ところが、野山で駆け巡ることがめっきり減った子供や孫にとっては、実際には刺されたこともないのに、あの羽音を聞くだけで恐怖心が湧いてくるらしい。確かに耳障りな羽音ではある。しかし、「巣を攻撃しなければ襲われることはない」は、今も変わらず本当である。ところが、この教えがこれからは通用しなくなるかもしれない、というから何やら気味が悪い。というのも、極めて攻撃的な新手のハチが、海を渡って日本に上陸して来ているらしいのだ。

そのハチの名を「ツマアカスズメバチ」という。特定外来生物に指定されているこのハチは、「蜂の研究室」(http://t-meister.jp/hachi/lab/syurui/)によると、インドネシア・ジャワ島原産のスズメバチで、全体的に黒い体をしていて、お腹の先端が赤みを帯びた色をしていることから「ツマアカ」と名付けられたらしい。非常に凶暴で、巣に近づいた人を執拗に追いかけて襲う、というから危険極まりない。ヨーロッパや韓国では、既に人を襲う被害や生態系への影響が問題となっているらしい。

危険極まりないこのハチが、あろうことか、日本に侵攻し始めているのだという。当然これまで日本にはいなかったのだが、9月11日、「このハチの巣が北九州で見つかった」と環境省が発表したのだ。巣が見つかったということは、発見された北九州では既に定住していることを指し、地域は限定されるものの、生態系への影響が出始めている可能性すらある。何せ、「気が付いた時には遅かった」ということが、自然界では多々あるからだ。

ところが、さらに驚くことに、国内で初めて発見されたのが実は3年も前(2012年)だった、というから二度ビックリだ。当時、新聞で読んだ記憶も、テレビやラジオで聴いた記憶も無い。私の記憶が正しいとすれば、なぜ全国的な話題にならなかったのだろうか。まさか「視聴率を上げられないから報道しない」という事もないだろうが、最初の発見地が長崎県対馬市で、離島だったという事もあり、全国ニュースにならなかった可能性が大きい。このハチが厄介なのは、その攻撃性もさることながら、何よりの好物がミツバチだという点だ。先の「蜂の研究室」によれば、日本ミツバチを使った養蜂業が盛んな対馬では、既に甚大な被害が発生しているという。にもかかわらず、全国ニュースで報じられた記憶が無いのが、甚だ気になる。

というのも、そういったミツバチの被害について、「市民生活には影響ない」と「そんなの関係ない!」を決め込むには訳にはいかないからだ。何しろ、イチゴにスイカ、リンゴにナシといった果物から、カボチャやナスにキュウリといった野菜まで、数多くの農産物がミツバチのお世話になっているのだ。日本の農業を守るためにも、絶対に農産物まで被害を拡大させてはいけない。そういう意味では、今回のハチも含め、在来種を壊滅させる恐れのある“特定外来生物”について、もっと積極的に国民の啓蒙を図るべきだと感じている。

それについて、実は、とっておきの秘策がある。過剰なテレビコマーシャルを出している宝くじの費用を啓蒙番組に充てるのだ。結構な時間放映できると思うのだが…。  


【文責:知取気亭主人】


日本では4000種以上が生息しているというハチ。
こんなハチもいる(ミカドドロバチ?)

  
 

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