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知取気亭主人の四方山話
 

『たまにあたる?』

 

2015年12月16日

とうとう、今年も残すところ2週間余りとなった。それでなくても時間に追われる毎日なのに、年の瀬はそれに輪をかけてせわしない。しかし、そのせわしない分のご褒美なのか、左党にとってはニンマリの時季でもある。そう、忘年会だ。消費税率のアップもあって懐事情が年々厳しくなる中、妻帯者にとっては、堂々と飲める数少ないチャンスなのだ。それをいいことに、ここぞとばかり12月は殆ど毎日忘年会、という羨ましい御仁もいそうだ。また、忘年会のリハーサルやら下見と称して、強引に杯を傾けている猛者も目に浮かぶ。何はともあれ、呑兵衛にとっては嬉しいシーズンの到来である。

その忘年会と言えば、忘れてならないのが酒と料理だ。昭和の頃と違って今は、忘年会などの宴会用に飲み放題プランを提供する店が多く、酒はビールに日本酒、そして焼酎が既にプランに組み込まれているのが定番だ。一方、その酒に比べると、料理の方はそれぞれの店の特徴が出ている場合が多く、幹事の腕の見せ所でもある。さて、その料理だが、皆さんならどんな料理を思い浮かべるだろうか。

最近ではイタリアンやフレンチ、あるいは焼肉などでの忘年会も開かれる様だが、やはり一番多いのは和食だろう。ただし、和食と言っても種類は多い。その和食の中で、1種類の魚で店の看板が成り立ち、今の時季に好まれる料理がある。私の中ではあまりメジャーではないが、専門店の多い大都市や西日本では、この料理を思い浮かべる人も多いのではないだろうか。フグ料理だ。通の間では、「フグは福に通じる」という事から目出度い料理とされ、忘年会などの宴会料理の定番の一つになっているらしい。先日、そのフグ料理に関して、面白い情報を仕入れたので紹介しよう。ネタの出所は、小生御用達のNHKラジオである。

フグと言われると、直ぐ浮かぶのは「テッサ」と「テッチリ」だ。他にも空揚げや白子焼きなど、呑兵衛には堪らない料理もあるが、さほど馴染みのない小生にとって、何と言ってもこの二つが双璧だ。その双璧の「テッサ」と「テッチリ」、何だか変わった名前で、どう考えてもフグとは結びつかない。ところが、その由来を知ると、「成るほど!」と合点がいく。少し前置きは長くなるが、説明するとこうだ。

関西では、「フグの毒に“たまに中(あた)る”」と「鉄砲の“弾に当たる”」をかけて、フグのことを“鉄砲”と言うらしい。関西らしい、遊び心満載の面白い表現だ。でも、この表現が当たっているとすると、どうやら、現代ほどフグ料理の免許制度がうるさくなかった昔でも、フグを食べたからと言っていつも毒に中っていた訳ではないらしい。有名な歌舞伎俳優などしびれるのを好んで食べていたとも聞くから、フグ好きが食べる量を間違えて、たまに中っていた人もいたのだろう。また、オスとメスの両性を持ったフグがたまにいるらしく、そんな両性の白子には普通のオスの白子には無い筈の毒があるため、“たまに中る”場合があるのだという。そんなところから、“たまに”という表現が出たのだという。「成るほど!」である。

これで、「たまにあたる」のダジャレから出て、“フグ”が“鉄砲”と言われるようになったになったことは、納得していただけたと思う。後は至って単純だ。テッポウのサシミだから、日本人お得意の言葉を縮める技を使い、「テッサ」と言う様になった訳である。同様に、フグを具材にした“ちり鍋”を「テッチリ」と言う様になったのも道理である。しかし道理とは言うものの、「テッ」は理解できるのだが、今度は“ちり鍋”の「チリ」が分からない。そこで、“ちり鍋”の由来も調べてみた。

“ちり鍋”とは、白身魚の切り身を野菜や豆腐とともに水煮にし、ポン酢などに浸けて食べる鍋料理である。冬の季語でもあるらしい。我が家では、“水炊き”とも呼んでいる。ポン酢に九州特産の“ゆず胡椒”を入れた辛めの漬け汁を造り、それに浸けて食べるのが私は大好きだ。フウフウしながら食べれば、体の中からホッカホカになる。酒の肴にも最高だ。家では、フグを入れたことはないが、北陸でよく出回るタラを使った「タラチリ」も美味い。オッといけない。酒の肴の話になると、つい本題からそれてしまう。

“ちり鍋”の話に戻ろう。新鮮な白身魚の切り身を熱湯に入れると“ちりちり”にちぢれて縮むのだが、その様子から“ちり鍋”と呼ぶようになった、との説が有力らしい。こちらも、「成るほど!」である。昔の人は上手いこと名付けるものである。また、最近では、白身魚だけでなく鶏肉などの肉類を使った鍋料理も、水煮であれば“ちり鍋”と扱われるようになっているらしい。確かに、我が家でも時々鳥肉が入った“水炊き”が出てくる。タラと同じようにゆず胡椒入りのポン酢で食べるのだが、これもまた美味しい。日本人に生まれてよかったな、を感じる至福の時である。勿論、日本酒もしっかりとお供をしている。

こんな事を書いていたら、“ちり鍋”で一杯やりたくなってきた。フグと違って懐にも優しいし、「たまに中る」のも嫌だから、「タラチリ」でもリクエストすることにしよう。中る心配のない白子も美味いしいし…。  


【文責:知取気亭主人】


花弁が一枚ずつ落ちていた。さて、椿? それとも山茶花?

  
 

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