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知取気亭主人の四方山話
 

『厳しい現実』

 

2016年2月10日

日本のテレビ放送の中で、NHKの影響は飛び抜けて大きい。朝の連続テレビ小説(以下、朝ドラ)や日曜日に放映されている大河ドラマ(以下、大河)は、その最たるものだろう。これらの舞台となった地方や地域では、一過性で終わっている所があるものの、観光客が増え大いに賑わっているところが多い。昨年、能登半島を舞台に放映された朝ドラの「まれ」も、能登半島に多くの観光客を呼び込んでくれた。その中心となった輪島市も、全国的に知名度が上がり、以前に比べると観光客はずいぶん増えたらしい。同じ石川県に住む者としては、ありがたい話である。また、10年程前に放映された大河「利家とまつ」の時も、舞台となった金沢を訪れる観光客は、大層増えたと聞く。これだけ集客効果があると、朝ドラや大河の招致活動に熱が入るも頷ける。

政府が掲げる「地方の活性化」や「1億総活躍社会」を実現するための手段としても、効果の継続性に多少疑問が残るものの、朝ドラや大河の誘致は大変有効だと思う。そして、活性化の決定的な方法がなかなか見いだせない中、人口減少に苦しむ地方にとっても、大変有り難い応援である。しかし、そんな応援をもらっても、人口減少に歯止めがかからない市町村が全国にはたくさんある。私が住む石川県も例に漏れずで、能登半島を中心に「まれ」で全国的に宣伝してもらったが、どうやらその効果は限定的のようだ。

5年に一度行われる国勢調査の、2015年調査の石川県に関する速報値が、新聞に載った(北陸中日新聞、2月3日朝刊)。県全体の人口は115万4343人となり、前回の2010年調査時に比べて、過去最多となる1万5千人超(率にすると1.32%)も減少したという。この人数は、能登半島の最先端に位置する珠洲市の全人口に相当するらしい。市と名が付いて、全人口が1万5千人程度とは、珠洲市がいかに小さな市か分かる。しかし、市となった時からその程度しかいなかったかと言えばそうではなく、いつの頃からかどんどん減っていったためである。それは、次表にも表れている。

次表は、2010年の国勢調査時に比べ、今回の調査でどれくらい人口の増減があったかを、石川県の全市町に見た一覧表である。表の上段左隅の珠洲市が能登半島の最先端に位置していて、表の右に向かう程南下する位置関係となっている。したがって、下段の右隅に書かれている加賀市が県南端に位置していて、お隣の福井県に接している。なお、 は4%以上減少した市町、 は逆に人口が増えた市町である。

こうしてみると、いかに能登半島(珠洲市から宝達志水町辺りまでを指す)の人口減少が顕著か分かる。特に、地元で奥能登地方と呼ばれる半島先端に位置する市町が顕著で、珠洲市、能登町の減少率は、何と10%を超えている。穴水町も10%近い。奥能登地域の中心で「まれ」の舞台となった輪島市も、減少に歯止めがかからず、2,653人も減少していて、率にすると9%近い高率で縮小の一途をたどっている。元々、奥能登地域は山が海岸近くまで迫っているため平地が少なく、消滅集落として危惧されているような小さな集落が散在していて、高齢化率が極めて高い。いわゆる限界集落だ。加えて、若者を雇用できるような産業が少なく、人口減少に拍車を掛けている。厳しい現実だ。

それに比べると、県都金沢市を中心とする地域は、能登地域の減少分を吸収しているのか、表に示したように人口が増加している市町が多い。金沢市周辺で減少しているのは唯一白山市だが、白山市は海岸から白山の麓までの広い範囲が行政域となっていて、平野部では増えているものの山間部の人口減が市全体の人口を押し下げている可能性が高い。それを割り引けば、金沢圏内の市町としての恩恵を蒙っているように思える。それは、全国的に見れば小さな県ではあるが、県内では金沢市の経済規模が圧倒的に大きいからだ。人口の増減は、この経済規模の格差によるところが大きく、県内という狭い地域に限ってみてもそれが言える。

都市間や地域間の交通が便利になると、「ストロー現象」と呼ばれる経済格差が生まれることはよく知られている。より経済規模の大きな都市が、ヒト、モノ、カネ、情報、などの経済資源を規模の小さな都市から吸い上げて行く、という理論だ。北陸新幹線開業前に、金沢でもそんな危惧が囁かれていた。いまのところ、金沢の持つ観光資源のお蔭か、「ストロー現象」による経済沈下が始まった、という声は聞こえてこない。ところが、県外地域とではなく、石川県内の中でミニストロー現象が顕在化して来ているように見える。

昭和の時代から金沢と奥能登地域を結ぶ道路は順次整備されて来ていて、有料自動車専用道路だった「のと里山海道」も平成25年に無料化され、随分と便利になった。お蔭で、金沢−輪島間は、30年ほど前までは3時間余り掛かっていたものが、今では2時間ほどで行き来できるようになってきた。こうして便利になった分、ヒト、モノ、カネ、情報、が金沢圏に集まるようになって来てしまったのだ。

世の中が便利になればなるほど、不便さは際立ってくる。その不便さの中に価値を見つけないと、能登半島のような地域の活性化はおぼつかない。厳しい現実の中に光明はないのか、地元の人たちの必死の模索が始まっている。  


【文責:知取気亭主人】


綺麗な花もこんな時が無いと咲かない

  
 

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