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知取気亭主人の四方山話
 

『怠けるのもアリ?』

 

2016年3月2日

夏のある日のこと。一匹のキリギリスが草むらで楽しそうに歌を歌っていると、アリたちが一生懸命何かを運びながらぞろぞろと歩いてきました。それを見たキリギリスが、「アリさんアリさん、なんで君たちは、そんなに一所懸命働いているんだい?」と聞きました。するとアリは、「これから来る寒い冬に備えて食べ物を運んでいるのさ」と答えました。それを聞いたキリギリスは、 「そんなに働かなくてもいいのに。今は一杯食べ物があるのだから、好きなことをして楽しまないとつまらないじゃないか」と言うと、また楽しそうに歌い始めました。

やがて夏が終わり、秋が去って寒い冬がやってきました。草は枯れ、食べ物はもうありません。雪の降る中をあの時のキリギリスが、お腹を空かせてさまよっていました。と、キリギリスは一軒の家を見つけました。窓からのぞいて見ると、アリたちが、たくさんの食べ物を前に、楽しそうにパーティーを開いているではありませんか。キリギリスは、「なにか食べる物を恵んでくれませんか?」とアリたちにお願いしました。しかし、…。

イソップ物語「アリとキリギリス」の粗筋だ。…で示した結末は、「かわいそう」とかの理由で、めでたしめでたしとなっている筋書きも広がっているようだが、つまるところ、「アリのように真面目に一生懸命働かないと、最後に困るのはあなたですよ」との人生訓を教えている寓話である。この「アリとキリギリス」ではないが、多くの日本人は、家庭は勿論学校でも、アリのように一所懸命真面目に働くのが美徳だ、と教えられてきた。多分、日本ばかりでなく多くの国々でそう教えられてきたのだと思う。

ところが、「一生懸命働く者ばかりでなく、怠け者も実は必要だ」という、怠け者にとっては何とも有り難い研究結果が、新聞記事に載った。しかも、働き者ばかりと思っていたアリの中に、怠け者が、しかも結構たくさんいるというから驚きだ。先の寓話を作ったとされるイソップさんも、さぞかしビックリしているに違いない。そんなアリの生態を知ると、“働き蜂”と揶揄された、日本のサラリーマンの“生態”が、妙に悲しくなってくる。

2月17日の日本経済新聞朝刊に、アリの集団における“怠け者の存在意義”に関する研究成果が報じられていた。北海道大学の長谷川英祐准教授の研究チームが、「アリの集団は、常にすべての個体が働いているよりも、働かないアリがいた方が長く存続できる」ということを突き止めた、というものだ。

同准教授によれば、アリやハチといった「社会性昆虫――集団の中に女王アリ(ハチ)のような個体と働きアリ(ハチ)などの労働する階層などがあり、人間に似た社会的構造で生活している昆虫――」には、働かない怠け者が常に2〜3割いるのだという。5%程度であれば人間社会でも時々散見するから即納得できるが、2〜3割もいるとは驚きだ。そんなにたくさん怠け者がいれば、餌を集める効率が悪く、組織は衰退していくと考えるのが普通だ。ところが、「そうではない」というから首をかしげてしまう。それどころか、怠け者のアリがいないと集団の長期存続に重大なダメージを与えかねない、というから興味深い。

そんな怠け者のアリには、その時が来ると担う重要な役割があるらしい。働き者のアリが疲れると、その代わりとして今まで怠けていたアリが働き始め、長期存続の命運を握る作業を継続させるのだという。どうやら、怠け者のアリといっても、“根っからの怠け者”という訳ではないらしい。

では、命運を握る作業とはどんな作業だろう。新聞によれば、例えばアリであったら卵にカビが生えないようにするなどのように、常に世話をしなければならない仕事のことだ。確かに、世話を怠ると、集団全体に致命的なダメージを与えかねない。怠け者のアリは、こういった仕事などで代打の切り札として存在意義を示す、というから偉い。私が好きだった昔話の「三年寝太郎」などと同じで、腰が重くて動き出しが遅いだけらしい。

“アリも疲れる”という発想もなかったが、“怠け者は働き者に比べると動き出しが遅いだけ”という発想もなかった。もっと言えば、“アリには腰の軽さに個体差がある”というのも分かったらしいが、身につまされるほど人間に似ている。実に面白い研究成果だ。ところで、「集団には怠け者が常に2〜3割は必要だ」などという発想は、人間社会でも言えるのだろうか。“働き蜂”と揶揄された世代としては、気になるところである。

この発想を会社などの組織に当てはめると、常に仕事をしない人間を2〜3割は抱えておく必要がある、という事になる。しかし、いくら「組織の長期的存続のために」といわれても、“民間企業では”不可能だ。とてもそんな余裕はない。また、上司や仲間の目が怖くて、そうは怠けておれないだろう。では、どうやって代打を確保したらいいのだろうか。

協力会社やパートなどが代打の切り札にあたる、とも考えられるが、いざとなれば契約を打ち切る事も出来るから、常時抱えているのにはあたらない。そこで思いついたのが、働き者そのものが疲れたら休む、という方法だ。日本では一般的になっている週休2日制度である。この週休2日を計算すると、率にして3割弱が休みの計算となるではないか。何と見事に合致する。これはどうやら、アリが示してくれた「2〜3割は怠けている」というのは、個人の人間にも当てはまりそうである。もう少し積極的な発想をすれば、仕事を継続的にこなしていくには、「時には怠けるのもアリ」ということである。  


【文責:知取気亭主人】


のんびりと花開くのを待つのも良いかも…

  
 

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