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知取気亭主人の四方山話
 

『科学技術の進歩を支える夢と失敗』

 

2016年4月13日

科学技術の進歩には、果てない夢と失敗が欠かせない。これまでどれだけ多くの科学者が夢にチャレンジし、どれほどの失敗を経験してきたことだろう。人類は、その失敗を乗り越え、数多くの夢を実現し、新たな科学技術を手に入れてきた。今我々が便利な生活を送ることができるのは、そういった先人たちの夢と、夢実現に向け幾多の苦難を乗り越えた、飽くなき思いのお陰である。それは、宇宙に関する科学技術も然り、である。

宇宙に目を向けると、ユーリイ・ガガーリンが人類初の宇宙飛行を成功させた、宇宙開発黎明期から今日まで、数多くの失敗が繰り返されてきた。中には、チャレンジャー号爆発事故(1986年1月)やコロンビア号の空中分解事故(2003年2月)に代表されるような悲惨な失敗もあった。しかし、人類はこれらを乗り越え、今では宇宙ステーションに長期滞在するのが普通になってきた。志半ばで凶弾に倒れたケネディー元米大統領も、さぞかし喜んでいることだろう。しかし、実現したい夢や乗り越えなければならない壁はまだまだたくさんある。まだ遭遇していないトラブルが、これからも出てくる可能性があるからだ。

つい最近も、日本の宇宙工学の分野でこれまで聞いたことがないような手痛い失敗があり、宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、原因究明に血眼になっている。人工衛星が分解してしまったのではないかとみられる今回のこの種のトラブルは、これまでニュースで報じられた記憶がない。恐らく、日本の宇宙科学は深刻な壁にぶつかったことになる。是非、この失敗を乗り越え、新たな飛躍に繋げて欲しいものである。

トラブルに見舞われたのは、2月17日に打ち上げられたエックス線天文衛星「ひとみ」(全長約14メートル、重量約2.7トン)だ。打ち上げからほぼ1ヶ月経った、試験運用中の3月26日に破損したとみられ、予定の軌道上には達しているものの、3月29日以降は通信が全くできない状態が続いているという。北陸中日新聞によれば(4月9日、朝刊)、姿勢制御用の装置が壊れてガスが噴出するなどの異常が起きた可能性があることが判明した、とJAXAは分析しているらしい。スペースデブリと呼ばれる宇宙ゴミが衝突した、との見方も一時報じられていたが、詳細は不明だ。

また、すばる望遠鏡の観測で、全長14メートルあるはずの「ひとみ」の衛星本体が数メートルの大きさしか残っていないことが分かったらしいのだが、なんともショッキングなトラブルだ。米軍がレーダー観測で捉えたという10個以上の物体は、衛星本体や脱落した部品の破片とみられている。それこそ人工衛星が空中分解してしまうなんて、こんなトラブルはこれまで聞いたことがない。

とは言うものの、実は、日本のエックス線天文衛星はご難続きの歴史だった、というのも事実だ。2000年2月には「アストロE」を乗せたM5ロケットの打ち上げそのものが失敗し、続く2005年の「すざく」は、打ち上げこそ成功したものの、主要な観測機器にトラブルが発生するなどして残った機器で観測するという綱渡りを続け、昨年運用を終えている。したがって、今回の「ひとみ」は満を持しての打ち上げだったのだが、実に残念だ。ただ、これまでもそうだったように、今回の失敗を必ずや乗り越えてくれるはずだ。つい先日、アメリカの挑戦者たちが成し遂げた夢の技術のように。

4月9日の土曜日、海の向こうのアメリカから、これまで夢と思われていたロケット技術に成功した、というニュース映像が流れてきた。電気自動車メーカー「テスラ・モーターズ」の最高経営責任者(CEO)が立ち上げた米宇宙開発企業スペースX社が8日、国際宇宙ステーション(ISS)に滞在する宇宙飛行士用の貨物を搭載したロケット「ファルコン9」を打ち上げた後、ロケットの第1段を洋上の台船へ着陸させることに初めて成功した、というものだ。これまでも、このロケットの再利用に向けた画期的な挑戦は、何度もニュースで報じられていて私も知ってはいたが、地上への着陸は既に成功させていたものの、洋上台船への着陸には4回失敗していたという。3度目の正直ならぬ5度目の正直だ。「成功する秘訣は成功するまでやり続けることだ」というが、改めてそれを実証した形だ。

それにしても、漫画やアニメではよく見られるシーンだが、直立して地球に帰還するというのは、なんとも言えず近未来的で素晴らしい。第1段だけでも再利用できれば、打ち上げコストは画期的に下げられるし、打ち上げ間隔もぐんと短縮でき、持続可能な宇宙飛行の実現も視野に入ってくる。ただ、スペースX社は昨年6月にもファルコン9を打ち上げたが、この時は打ち上げ後わずか2分後に爆発していて、当時宇宙ステーションへの物資輸送に黄色信号が灯ったと心配されたものだった。そんな失敗を見事に乗り越え、今回の成功に繋げたのだから見事というしかない。

こんな夢の実現だったら大歓迎だ。しかし、同じロケットと言っても、歓迎されるどころか、世界中から非難の目で見られる成功報道もある。北朝鮮の朝鮮中央通信が報じた、新型のロケットエンジンの地上噴射実験成功だ。

9日のテレビニュースは、北朝鮮で新型の大陸間弾道弾(ICBM)用大出力エンジンの地上噴射実験に成功した、と一斉に報じた。北朝鮮のメディアは、3月にも固体燃料による大出力エンジンの地上噴出実験に成功したと報じ、自国技術の高さを誇示している。アメリカ本土にも届くICBMの技術力が確実に向上している、と米国をけん制しているのだろう。しかし、極貧生活に瀕している自国民の救済よりも他国への威圧に法外な国家予算を使うとは、どう考えても、健全な思考ではない。純粋に人類の平和のための科学技術ならばこんな思いはしないのだが…。



踏まれても、踏まれても、土筆は毎年顔を出す

【文責:知取気亭主人】

  
 

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