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知取気亭主人の四方山話
 

『救急搬送顛末記(1/2)』

 

2016年4月27日

4月20日、この日人生二度目となる救急車に乗った。一度目は、15年ほど前、タイレストランで飲食中に倒れた友人の付き添いとしてだった。今度は、私自身が患者として搬送される、という初めての体験をしてしまった。こう書きだすと、読者の中には「何事か!」と心配される方もおいでると思うので、結論から先に書いておく。

一度目の友人も今度の私も、結果的には何事もなく済んだので、安心して頂きたい。ただ、どちらも、その時は救急車に厄介になるほど体調が悪かったことだけは確かだ。私が搬送された理由は、生まれて初めて経験した、激しい“めまい”だった。

20日の17時半ごろだった。封書を出そうと、階段を使い4階から2階に降りた。その途中で、軽い“めまい”のようなものを感じ、「何かおかしいな?」と一瞬思ったのだが、直ぐに治まったため、そのまま2階に降りて行った。ところが、2階に着き封筒に糊付けをして封をし終わったころ、急に激しい“めまい”を感じ、立っていられなくなった。傍にいた仲間が、その様子を見てすぐ椅子を持って来て座らせてくれたのだが、“めまい”は一向に治まらない。治まるどころか、気持ちが悪くて目を開けていられない。冷や汗も出てくる。

椅子に座ったまま、ネクタイを外し、血圧を測ってもらった。高血圧の薬を飲んでいるぐらいだから元々高めなのだが、以前、血圧が下がり過ぎて度々“立ちくらみ”を起こしたことがあって、今の“めまい”もそれではないかと疑ったのだ。しかし、測ってもらった血圧は、上が133mHgで、下が81 mHgだという。全くの正常だ。

人間、体の具合が悪くなると、その原因を知りたくなるのが人情で、最悪の気分の中でも、アレコレと思いあたる原因を探り当てようとしている。そして、私が辿り着いたのは、脳卒中だ。脳梗塞か脳出血を疑ったのだ。今となって考えれば、意識もハッキリしているし、頭が痛いこともなかったから、その可能性は極めて低いのだが、余りの気持ち悪さに、思いは悪い方にしか行かない。しかも、同じ姿勢を保っていたせいか、左手に何となく“しびれ”を感じてきた。体の“しびれ”と来れば、益々脳卒中を疑いたくなる。

そんな時、仲間が「救急車を呼ぼうか?」と言ってくれた。後先のことを考える余裕もなく、その申し出に甘えることにした。待つこと、凡そ10分ほどか。その間、「応接室のソファで横になったら?」と言ってくれるのだが、気持ち悪くて体を動かすことができない。目を開けたり、体を少し動かしたりするだけで吐きそうなのだ。

サイレンの音が近づき、会社の前で止まったなと思う間もなく、救急隊員が駆けつけてくれた。血圧や眼球の動きなどの検査に加え、アレコレと問診を受け、搬送先の希望病院を聞いてきた。いつも定期健康診断を受けているK病院と、家の近くのI病院の名前を告げる。すると、I病院は今脳疾患の患者が搬送されたからK病院に行きましょう、ということになった。この病院選択が、後に心強い診断を受けることになる。

後日聴いたところによれば、たった2人で、座った状態のままの私をシート状の救急用具に乗せ、救急車まで運んでくれたらしい。ところが、持ち上げられたとたんに、激しい嘔吐が襲ってくる。ビニール袋を口に当て、何度も吐く。しかし、何も出ない。そして、エレベーターに乗り、下り始めたとたんに、今度は時計回りにグルグルと激しく回る。診断してくれた医師によれば、“めまい”には回転性のものとそうでないものがあるのだという。私の“めまい”は前者の方で、抹消神経の障害から来るらしい。ところで、75sもある私を、ストレッチャーでなくシート状の物で、座らせたまま持ち運んでくれた隊員は大変だったと思う。翌日見舞いに来てくれた仲間がその様子を見ていて、「私も体重を落とさねば!」と言っていたが、余程重そうに運んでいたに違いない。救急隊員の皆さんありがとう。

しかし、さすがプロである。「重い!」などという弱音は吐かない。エレベーターから救急車まで、そして狭い救急車の中に固定するまで、一切ストレッチャーを使うことなく運んでくれた。そのうえ頭を動かすのは危ないと判断したのか、救急車の中でも寝かすことなく、足を延ばして背もたれにもたれ掛かっている状態で固定してくれたらしい。“らしい”というのは、何しろまだ目をつぶったままなのだ。そして、仲間が同乗してくれたのを耳で確認すると、直ぐに出発となった。18時半ごろだったらしい。病院までの道中、揺れるたびに閉じている瞼に力が入る。とにかく救急車が揺れると辛いのだ。

20分ほど掛かり病院に着いた。病院のストレッチャーに移され、目をつぶったまま、救急隊員と病院スタッフのやり取りを聞いている。この間、血圧、脈拍、心電図、血中の酸素濃度、体温などを矢継ぎ早に調べられている。そうこうしている内に、悪寒がして来て、右手と両足が小刻みに震えてきた。こうなると、益々脳卒中など、悪いことばかりが頭に浮かんでくる。しかし、相変わらず意識はしっかりしていて、「大した事はない」と思っているもう一人の自分もいる。不思議な感覚だ。

そんな感覚に踊らされていると、長男の声が聞こえてきた。駆けつけてくれたのだ。一寸ホッとする。安堵感に浸っている暇もなく、「CTとMRIを撮りましょう」というドクターの声で、ストレッチャーが動き出した。長男の「お父さん行ってらっしゃい!」の声を頼もしく聞きながらも、やはり動くと気持ちが悪い。その気持ち悪さを我慢して、何とかCTとMRIの検査を済ますことができた。しかも、有り難いことに、意識は意外と混濁してこない。お蔭で、もう一人の「大した事はない」が、大分大きくなってきた。

検査室を出ると、家族同伴で、主治医の先生から既往症などの問診とCTとMRIの画像診断を受けた。脳卒中の痕跡はないという。ホッとする。ただ、「翌日耳鼻科の診察を受けるように」との指示が付いた。何があるのだろう、心配だ。それでも、やっと病室に入る事になった。もう20時近くになっているらしい。少し具合がよくなり、目を開けられそうになってきた。やれやれだ。でも明日には耳鼻科の診察が待っている。この続きは…、次話にしよう。



イカリソウ(薬草になる)

【文責:知取気亭主人】

  
 

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