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知取気亭主人の四方山話
 

『鯛は相思相愛?』

 

2016年5月11日

桜前線がやっと北海道まで到達した。ネットの情報によれば、5月8日(日曜日)時点での北海道における桜開花状況は、北海道新幹線開業で話題に上ることが多くなった函館の「五稜郭公園」は既に葉桜になっていて、札幌市中央区にある「北海道神宮」も散り始めているらしい。一方、旭川市の「朝日山公園」は、“8分咲き〜2分散り”で、丁度見ごろを迎えているらしい。また、根室市の「清隆寺」はまだ“つぼみ”、富良野市の「朝日ヶ丘公園」は“4分〜7分咲き”とある。広い北海道、まだ暫く桜を楽しめそうだ。( http://www.rurubu.com/season/spring/sakura/list.aspx?KenCD=01&gclid=CJ6u7peTyswCFRWTvQodG-sNng

ところで、この桜前線が本州を北上しているころ、海の中でもあの桜色が見ごろを迎えるらしい。そう、別名「桜鯛」とも言われている真鯛のメスが、見事なパールピンク色を見せ始めるのだという。魚の生態に関してからっきしの私は、メスばかりでなく、てっきりオスも同じ桜色をしているのかと思ったが、そうではないらしい。しかも、この真鯛、結構ユニークな生態をしているのだという。それを知ったのは、4月12日に放送されたNHK名古屋放送局のラジオ番組、「東海北陸あさラジオ」の「旬の食材を楽しもう」のコーナーだ。

そのコーナーに出演していたパーソナリティーの話だと、春、丁度桜の花が咲くころになると、真鯛は恋の季節を迎え、深場から浅場に上昇して来て産卵の準備に入り、この時メスは婚姻色として見事な桜色となり、オスは黒みがかった色になるのだという。こう書くと、「メスは生まれた時から少し桜色をしていて、それが産卵時期になると更に鮮やかになる」と思いたくなるのだが、事はそう単純ではないらしい。メスとオスの神秘的な性転換が静かな海の中で人知れず行われている、というのだ。

当該のNHKラジオと後日調べたネット情報によれば、真鯛は、4歳まで両性生殖腺を持つ現象がみられる、いわゆる雌雄同体なのだそうだ。ただ、何時までも雌雄同体のままという訳ではなく、多くが2歳頃からオスへと性転換し、4歳(30センチクラス)になると両性を持つ真鯛はいなくなってメスとオスがほぼ半分ずつになるという。子孫を残していくために、永い時間掛かって手に入れた方法なのだろうが、不思議な生態だ。きっと激しい生存競争と厳しい自然環境の中では、子孫を残すのに確率の高い方法だったに違いない。

ところが、同じ真鯛でも台湾に生息する真鯛は、「産卵後にメスがオスに変わってしまう」という驚きの性転換をするらしい。これまたビックリの生態だ。しかも、産卵した全てがオスに変わるのではなく、各年齢別群のどれにもメスが残っていて、中には一生メスのまま過ごす変わり者もいるのだという。一生メスのままの方が余程“普通”だと思うのだが、台湾の真鯛たちにとっては、メスのままの仲間は「風変わりな奴だ」位にしか映っていないのだろう。だとすると、同性婚云々で白熱した議論が繰り広げられる人間界よりも、余程進歩的な真鯛の世界なのかもしれない?

また、進歩的な世界という意味では、クロダイの仲間の「ヘダイ亜科」もそのようだ。彼らは、同じ雌雄同体でも、真鯛とは逆にオスからメスに性転換するのだという。「雄性先熟」と言って、2-3歳までは精巣の方が発達していてオスでいるのに、4-5歳になると卵巣の方が発達してきてメスになるらしい。ただし、真鯛と同じように、全てがメスになるわけではなく、雌性ホルモンが不足しているオスは性転換しないらしい。神秘的なのは、そんな生態であっても、クロダイの仲間が今も子孫繁栄を続けられている点だ。ホルモン不足が起こるのは偶然ではなく、何らかの力でコントロールされている可能性が高い。オスとメスがほぼ半分ずつになっているのだろう。まさに生命の神秘だ。

ところで、話を戻すと、真鯛には上記の性転換以外にも意外な生態があるらしい。例えば、魚の結婚と言えば、川を遡るサケの産卵に代表されるように、「メスの産卵と同時に不特定のオスが精子を掛けて後は知らんぷり」の生態が思い浮かぶが、真鯛はそうでないらしい。ラジオでは「漁師の説」と断っていたが、真鯛は一夫一妻で、非常に仲良く一生添い遂げるのではないかというのだ。何故かというと、一匹釣れると同じ場所でもう一匹釣れるかららしい。真鯛、特に桜鯛はめでたい席で良く使われるが、一夫一妻で添い遂げるとは、色や容姿ばかりではなく、確かに宴席に相応しい魚である。

もう一つ、これは意外というよりは、不思議な生態と言った方が相応しい真鯛の生息地がある。国の特別天然記念物に指定されている、千葉県鴨川市小湊の「鯛の浦(地名は妙の浦)」である。小湊は日蓮宗を興した日蓮の生誕地で、日蓮が誕生した際に鯛が飛び跳ねたことから「鯛の浦」と名付けて、漁を禁止したことに由来するらしい。でも、それだけでは特別天然記念物に指定される筈がない。実は、普通の真鯛では考えられないような浅い場所に住み着いているというのだ。

真鯛は、本来30〜200mほどの比較的深い層に生息する魚で、鯛の浦のように水深の浅い所(水深10〜20m)に住み付く(“根つき”になる)ことはないという。ところが、鯛の浦では、根つくはずがない所に根ついていて、これが極めて珍しいという事になり、特別天然記念物に指定されたという訳である。余程鯛の浦が気に入ったのだろう。それとも、日蓮聖人のご利益なのだろうか。

いずれにしても、真鯛という魚、性転換と言う激しい変化を経ても、一夫一妻を守っているとは、余程相思相愛の絆が固いのだろう。我々人間もあやかりタイものである。



「お食い初め」に用意した小ぶりな真鯛

【文責:知取気亭主人】

  
 

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