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知取気亭主人の四方山話
 

『6月23日』

 

2016年6月29日

世界が大揺れに揺れている。6月23日(現地時間)に行われた、欧州連合(EU)からの離脱の是非を問うイギリスの国民投票で、離脱派が勝利し、世界に激震が走った。その衝撃の凄さは、ヨーロッパから遠く離れた日本にいてもトップニュースで扱われるぐらいだから、直接EUに参加している各国にとっては計り知れないものがある。「イギリスは世界第5位の経済規模で、EU内での影響力が大きい」という事も勿論あるが、「文化も言語も歴史も違う国々がひとつになろうという壮大な実験がほころびを見せ始めた」という意味でも、離脱派の勝利は、世界の国々で極めて深刻に受け止められている。それもあって、このニュースが伝えられると、世界の株式・金融市場は、大荒れに荒れた。

世界中が注視する中、日本時間の24日に離脱派の勝利が伝えられると、日本の株式市場は大幅に下落した。勿論、世界の株式市場も大暴落だった。予想は僅かながらも残留派が優位だっただけに、為替市場も大混乱となって、ユーロやポンドは当然のように大幅にユーロ安、ポンド安となった。その一方で、日本の円は、基軸通貨である米ドルに対し一時100円を割り込むまで大幅な円高になり、日本経済に暗雲をもたらしている。

月曜日(27日)の日本経済新聞を読むと、イギリスでは、終わったばかりだというのに、早くも「もう一度国民投票をしよう」という機運が盛り上がっているとある。しかし、直ぐに再投票ができる筈もなく、今回の離脱決定がどこまで影響を及ぼすのか、この先の世界経済は全く不透明だ。それだけ世界に与えた衝撃は大きかった、ということである。

こうした経済の面ばかりでなく、政治の世界でも影響が懸念されていて、イギリスに続いてEU離脱国が相次ぐ「離脱ドミノ」が起こるのではないか、とも心配されている。また、残留派が多数を占めるスコットランドでは、単独のEU残留交渉に加え、再びイギリスからの独立の声が大きくなっているらしい。驚いたことに、スコットランドに続いてウェールズと首都ロンドンの独立の声も聞こえてくる。更に、この期に及んで、「これだけの影響があるとは考えずに、離脱票を投じてしまった」と悔やむ国民もいるらしい。

こんなニュースを聞くと、今回のこの離脱騒動が、世界に与えたインパクトが如何に大きかったかが分かる。そうした点を考えると、この先の見通しは全く予想できないが、イギリス国民にとっては勿論、イギリス以外のEU参加国にとっても、6月23日は、記憶に残る特別な日になったに違いない。実は、たまたまではあるが、この6月23日は、日本にとっても記憶に残る特別な日でもある。EU離脱とは何の関係もないが…。

ご存知の方も多いと思うが、日本における6月23日は、沖縄の「慰霊の日」である。20万人を超える軍人や住民が亡くなった沖縄戦から数え、今年で71年目を迎えた。太平洋戦争末期の1945年(昭和20年)3月26日から始まった沖縄の地上戦において、旧陸軍の組織的な戦闘が終わったとされるのが、6月23日なのだ。ただ、内閣府沖縄振興局の「沖縄戦関係資料閲覧室」によれば(http://www.okinawa-sen.go.jp/)、その後も局地的には引き続き戦闘が行われていて、日本の守備軍代表が降伏文書に調印したのは、「終戦記念日」よりまだ遅く9月7日のことだったという。なお、沖縄戦を指揮した牛島第32軍司令官が糸満市摩文仁の洞窟に置かれた司令部壕で自決したのも、6月23日である。

この沖縄戦では、県民の4人に1人、約12万人が犠牲になったとされる。「沖縄戦関係資料閲覧室」の資料によれば、沖縄地上戦が始まる僅か20日前の3月6日に、「国民勤労動員令」が公布されて、沖縄県の15歳から45歳までの男女を「根こそぎ」動員したとある。この動員令がひめゆり部隊などの惨劇を生んだ根底にあると思われるが、ともかく「根こそぎ」である。政府の資料にこれほどきつい表現が使われているとは驚きだが、有無を言わさぬ強引さが良く伝わってくる。しかし、15歳と言えば、今の中学3年か高校1年だ。そんな少年・少女までも動員しなければならなかったと思うと、いたたまれない。アフリカや中東で繰り広げられている戦闘に少年兵が駆り出されているニュース映像を時々観るが、当時の日本はそれと似たような悲惨な状況だったのだ。こうした悲劇を繰り返さないためにも、「慰霊の日」は決して忘れてはならない。

しかし、今年でとうに半世紀が過ぎ、71年目を迎えたというのに、沖縄には、戦火の深い傷跡が未だに残っている。昨年6月14日に放映されたNHKスペシャル「沖縄戦全記録」によれば、沖縄では今も毎年100体近い遺骨が見つかっている、というのだ。更に、地中にはまだ3千人以上の遺骨が眠ったままとされる。しかも、これまでの遺骨収集が、主に沖縄戦で亡くなった軍人・軍属の遺族らでつくる「県遺族連合会」やボランティアの手で行われてきた、というから驚きだ。沖縄以外の遺骨収集も似たようなものらしい。

戦争という国策で死亡した人の遺骨に対して、国が責任をもって収集をしていないのは、なんとも理解しがたい。沖縄では、軍民一体の考えの下、兵力不足を充当するため「防衛招集」と称して14歳以上の男子を招集して切り込みを命じたり、一億総玉砕の命令の下、「生きる選択肢はない」との考えを教え込まれ集団自決したりした住民も、数限りなくいた。こうした国策の犠牲者の遺骨が、土に埋もれ収集されないまま、やがて三四半世紀になろうとしている。

同じ6月23日だが、イギリスでは国民の声が国を動かし、日本では国のために命を落とした遺族の声にも国の動きは鈍い。国民投票の結果の是非はともかくとして、イギリスが羨ましい。遺骨収集を加速させる方法として、国家公務員の新人研修の一環として遺骨収集を行う、というのは無謀な考えだろうか。国家の将来を担う人たちが命の尊さや戦争の愚かさを学ぶには、最適だと思うのだが…。


【文責:知取気亭主人】


ツマグロヒョウモンの幼虫(やがて美しい蝶になる)

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