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知取気亭主人の四方山話
 

『乾杯』

 

2016年9月7日

次男が結婚式を挙げた。9月4日の日曜日だ。7月にはもう既に入籍しているから、お披露目的な色合いが濃い。とは言っても、お互いの親族や職場の上司、同僚や友人などを招いて開く、ごく一般的な披露宴もある。さぞかし気持ちが高ぶって来ているだろうと思いきや、前日帰ってきた本人の弁によれば、「席次表作りなどの準備では忙しかったけれど、明日結婚式だなんて実感が湧いてこない」という。里帰りした長女も、弟が結婚するという実感が全然ない、と同じようなことを言っている。お互いに日々の仕事に追われているせいなのだろうか、それとも既に新しい命が宿っていることを皆が知っているせいなのか、かく言う私もさほど湧いてこない。一番実感しているのは、あれやこれや細々としたことに気遣い、準備をしている家内なのかもしれない。

養子に出した身とはいえ、腹を痛めた我が子に変わりない。いや、養子に出した子だからこそ、あれやこれやと気遣いをしたくなるのだろうし、そうしていないと気持ちが落ち着かないのかもしれない。その気持ちもよくわかる。男親の私でさえ、「これで親としての責任は果たせた」との安堵の気持ちの一方で、息子に養子先とお嫁さんの実家そして我が家との付き合い方を諭すときなど、一抹の寂しさを感じてしまうのだ。養子に出した時点で、分かってはいたのだけれど…。

ただ、それも親の都合の良い感想なのかもしれない。一抹どころか、寂しさを一番感じているのは、養子を承諾してくれた次男に外ならないのだから。本人はもちろん口に出している訳ではない。が、何となくそれを感じてしまう。また、長男の嫁を含めた5人の子供たちは皆仲が良いだけに、彼等をはたから見ていると、そんな次男の心模様を皆感じ取っているように見える。彼等もきっと、複雑な思いを持っているに違いない。皆大人だから、口にこそ出さないが…。

オッと、そんなしんみりした話はやめよう。折角の目出度い話題だ。楽しい話で盛り上がろう。さて、「披露宴で欠かせないもの」といえば、新郎新婦(!)を始めとしていろいろある。また、結婚式や披露宴のスタイルの変化に伴って、欠かせないと思っていたのに消えつつあるものや、新たに加わってきたものもある。消えつつあるものの代表は、地域に根差した婚礼に係わる風習だろう。一方、加わったものは沢山あって、指輪やウウェディングケーキのセレモニー、更にはお色直しなどもそうだ。しかし、そんな変化の中で、昔と変わっていないものもある。その代表はお酒を飲んで祝うことだ。そして、お酒と来れば、「さあ飲むぞ!」の合図と理解している“乾杯”がまず浮かぶ。

披露宴でなくとも、複数の人が集まって酒を飲もうとすれば、大概“乾杯”がその宴会開始の合図と相場が決まっている。2、3人の小グループでもそうだし、100人を超える大きなグループでも同じだ。ただ、乾杯の発声や儀式は同じでも、飲み物が少しずつ変化してきているように感じている。今では、ビールが乾杯用の飲み物の定番になっているが、ビールが流行るずっと以前は“どぶろく”などもあっただろうし、私の経験では、温泉旅館などでは差別化を図ろうという意図があってか、梅酒やヤマモモ酒が乾杯用のお酒だったこともある。また、今回次男の結婚式で使われたシャンパンというのも、最近増えてきているのかもしれない。そんな乾杯に関して、石川県が面白い条例を制定した。いや、面白いというよりは、酒好きにとっては「やったぁ!」と思わず手を叩きたくなる、本当に素敵な条例だ。「いしかわの酒による乾杯を推進する条例」という。

http://www.pref.ishikawa.lg.jp/gikai/kaikaku/documents/kanpaijourei.pdf

石川県は、日本でも有数な日本酒造りが盛んな県である。昔は能登地方の農家の農閑期の仕事として「杜氏」をしていた人たちも多く、「能登杜氏」として、石川県に住む日本酒愛飲家にはつとに知られている。「能登杜氏」は全国の酒蔵で活躍していて、1995年に発生した「阪神淡路大震災」では、犠牲になった人たちも多かったと聞く。また、その「能登杜氏」の中には現代の名工に選ばれた農口尚彦氏もいて、「オラが県こそ日本酒王国」を標榜する県のひとつとなっている。また、最近では能登半島にワイナリーも出来て、石川県産のワインも堪能できるようになってきた。そんな石川県が日本酒を始めとする石川県産の酒の消費拡大を支援しようと制定したのが、くだんの「いしかわの酒による乾杯を推進する条例」という訳である。

今から2年半ほど前の平成26年2月26日に制定されたこの条例は、「条例名を読むだけで中身が直ぐに分かる」という、難しい言い回しの多い法律の文章としては極めて珍しい特徴を持っている。また、条例というからには条文があるのだが、これもいたって簡潔で、全5条はA4一枚に余裕で収まってしまう。目的が書かれている、一番長い第一条をそのまま引用してみよう。

「この条例は、日本酒をはじめとする本県で生産された酒類及び本県産の原材料を使用して生産された酒類(以下「いしかわの酒」という。)による乾杯を推進することにより、いしかわの酒の普及を図るとともに、いしかわの酒による人と人との交流を促進し、もって酒類製造業その他関連産業の発展及びふるさとへの感謝の念の醸成に資することを目的とする。」

如何だろう。「…乾杯を推進する…」などとは、酒好きには堪らない目的ではないか。更に、第四条には「県民は、県及び事業者が行ういしかわの酒による乾杯を推進することによるいしかわの酒を普及促進する取組に協力するよう努めるものとする。」とニンマリする内容が謳われている。県が制定した条例でこう書かれている以上、石川県民としては協力しない訳にはいかない。という訳で、奥さん、よろしくね!


【文責:知取気亭主人】
 

コエビソウ
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