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知取気亭主人の四方山話
 

『命名、ユリモドキ?』

 

2016年9月14日

先日、山梨県南巨摩郡は南アルプス連峰身延山地の一角にある、七面山に行ってきた。七面山は日蓮宗の総本山として知られた「身延山久遠寺」の西南西に位置していて、標高は身延山地の中で最も高く1982メートルある。山頂近くには敬慎院というお寺があって、法華経の守護神「七面山大明神」がまつられている。「身延山久遠寺」のホームページにも書かれているが(http://www.kuonji.jp/shichimenzan/shichi-history.htm)、法華経の聖地として名高く、山全体が山岳信仰の対象になっている。その七面山の登山道脇で、見たこともない可憐な花を見つけた。

登る時から気になっていたのだが、名前が分からない。下山の時に写真に収め、帰ってから調べてみよう、と忘れないよう一緒に行った家内にも話しておいた。次の日、そのチャンスが意外と早くやってきた。仲間の下山を、武骨な男三人が登山道脇で待つことになったのだ。何の話だったかは記憶にないがとにかく三人で話が盛り上がっているとき、ふと足元を見ると、我々には不釣り合いの可憐な花が咲いているではないか。良く見ると、登るとき気になっていた例の花だ。これはチャンスとばかりに、家内から借りてきたスマートフォンで写真を撮り始めた。

すると、傍にいた二人が「何だ、何だ?」と寄ってきた。ことの成り行きを説明し、「でも花の名前が分からない」と話すと、Nさんがスマートフォンで調べ始めてくれた。“山野草”やら“高山植物”などのキーワードで検索するのだが、目の前の花と一緒の画像は出てこない。もう一人のMさんも一生懸命観察しているのだが、彼の頭のデータの中には一致する花はないらしい。もともと花には縁のなさそうな野郎三人のこと、あれやこれやとあてずっぽうを言うのだが、これだという決め手がない。

接写できないスマートフォンのカメラだったので映りはあまり良くないが、その名前不詳の可憐な花の写真をお見せしよう。左が開花している状態、右がつぼみだ。

開花  つぼみ  

さて、皆さんは、この2枚の写真で花の名前が分かっただろうか。もし分かったなら、かなりの山野草通だ。ところが、我々三人はさっぱりだ。ただ、左の開花状態を見て、Mさんが「ユリみたいだね」と呟いた。よく見ると、そう言われれば確かに花の状態も、葉も似てなくもない。その時、私の得意な妄想癖がニョキニョキと頭を持ち上げ始めた。

「これだけ調べてもネットに出てこないところをみると、ひょっとしたらこれは新種かも知れない」

「だとしたら、我々三人の名前を冠した命名を申請して、時の人になろうじゃないか」

「新聞に名前入りで載ったりして!」

「でもその前に、仮の名前を付けておく必要がありそうだ」

「Mさんがユリに似ていることを発見したから、『ユリモドキ』というのはどうだろう」

「Nさんの義理のお母さんは山野草に詳しいから、下りてきたら聞いてみよう」

「知らないと言ったら、これは『ユリモドキ』だと得意げに教えてやろう」

「いいね!」

などと好き勝手な冗談で盛り上がっているところに、仲間たちが下りてきた。Mさん知り合いの女性が最初に降りてきたのをつかまえ、内心「ネットでも見つからなかったのだから知らないだろうな」と思いながら、「この花の名前は何?」と聞いてみた。すると、一瞥して、「ホトトギスじゃない?」と間髪入れず答えてしまった。エッ、と野郎三人。思わず顔を見合わせた。そう、すんなり答えてしまったのだ。先程の「新種発見の妄想」は、やはり妄想で終わり、一瞬のうちに吹き飛んでしまった。

妄想は吹き飛んでしまったが、楽しい時間だった。野郎三人が登山道の脇で楽しいひと時を過ごすなど、想像もつかいないだろうが、「新種発見の妄想」のお蔭で、仲間の下山を待つ時間もあっという間に過ぎてしまった。妄想もたまには役に立つものである。

ところで、詳しい花の名前だが、ヤマホトトギスではないかと思う。似たような花で、ヤマジノホトトギスというのもあるらしいが、手元にある図鑑によれば、恐らくヤマホトトギスで間違いと思う。残念ながら、新種ではなさそうだ!でも、ユリ科だった!

ヤマホトトギス 


【文責:知取気亭主人】

  
 

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