いさぼうネット
賛助会員一覧
こんにちはゲストさん

登録情報変更(パスワード再発行)

  • rss配信いさぼうネット更新情報はこちら
知取気亭主人の四方山話
 

『漁業のエコラベル』

 

2016年9月21日

「暑さ寒さも彼岸まで」とはよく言ったもので、今年はまさにその格言通りになりそうな雰囲気だ。秋雨前線の影響か、あるいはシルバーウィークめがけて日本列島に近づきつつある台風16号の影響なのか、ここ金沢では、平年並みの気温の日が多くなり、先週の週末あたりから急に過ごしやすく秋の気配が色濃くなってきた。雨の影響もあってか、半袖では日中でも肌寒さを感じるようになっている。マーケットにも秋の果物がたくさん並ぶようになり、秋本番が間近に迫ってきている。

そうした秋本番の気配を感じるようになると、毎年のように話題になるのが、サンマの値段だ。いつの頃からか忘れたが、かつては100円以下で買えていた庶民の味が、100円を超えるようになり、やがて200円を超え、今年は300円を超えてしまっている。我が家でもサンマの塩焼きが食卓に上る回数はとんと減ってきた。18日(日曜日)に行ったーケットでは、驚くなかれ1尾398円の高値が付いていた。サンマばかりではない。アジも高い。20センチほどの、さして大きくないアジが250円もする。これまで庶民の魚として親しまれてきたこれら青魚が、だんだん高級魚の階段を登り始めているのだ。原因は、漁獲量の減少だ。

さんま  真あじ  

「サンマの漁獲量が減っているのは、中国や台湾の漁船が、日本近海に回遊して来るまでに大型船で大量に獲ってしまうからだ」と日本の漁業関係者の懸念がニュースになったことが以前あったが、今年はそれに加え海水温が影響しているらしい。先日のニュースでやっていたのだが、北海道から三陸沖にかけての日本近海の海水温が例年より高く、回遊してこないのだという。漁獲量が減れば値段が上がるのは道理だ。しかし、海水温の影響ばかりではない気がする。しばらく前からウナギや太平洋クロマグロの漁獲制限がかまびすしいが、これらの魚と同様に、乱獲による漁業資源の減少も大きく影響しているのだと思う。

ブリやカキの様に既に養殖技術が確立されている漁業資源は、枯渇の心配は左程ない。しかし、養殖技術が確立されていないものは、無計画に獲る一方だけではやがてレッドデータブックに登録され、いずれ漁獲禁止という決定的な判断が下される可能性すらある。例えば我が家の家族も大好きなシラス、10年、20年前に比べると随分高くなっている。カタクチイワシなどの稚魚だが、いくら大量に獲れるからと言って無尽蔵にあるわけではない。

シラスは食物連鎖の最下段の方に位置しているのだが、結果的にこれらをエサにしている魚の横取りをしてしまっていることになり、連鎖の鎖を人間の手で傷つけていることになる。こうした乱獲を防ぎ、持続可能な漁業を実現させようとする、世界的な取り組みが20年ほど前から始まっているのを、皆さんご存知だろうか。海洋管理協議会(MSC)という国際的なNPOだ。今から4年前の2012年2月1日の静岡新聞「NEWS交差点」で扱っていたのが、そのMSCに関する記事だった。サンマのニュースで思い出し、スクラップファイルに入れたままになっていたのを引っ張り出してきた。

環境省によれば(https://www.env.go.jp/policy/hozen/green/ecolabel/a04_27.html)、「海洋管理協議会(MSC:Marine Stewardship Council)は、世界の水産資源の維持・回復や海洋環境の保全を目指し、認証とエコラベルを通じて持続可能で適切に管理された漁業を推進している国際的なNPOです。本部はロンドンで、その他、米国、日本、オーストラリア、オランダ、中国、ドイツ、南アフリカ、デンマーク、カナダ、フランス、スペイン、スウェーデン、チリ、ブラジル、シンガポール、アイスランドに事務所があります。」とある。運営開始は、今から19年前の1997年だ。

2013年5月15日現在、全世界では201漁業が認証取得しているらしい。ところが、日本のMSC認証漁業は、京都府機船底曳網漁業連合会のズワイガニとアカガレイ漁業、そして北海道漁業協同組合連合会のホタテガイ漁業の、僅か3漁業だけだという。寂しい限りだ。また、MSC認証ラベル「海のエコラベル」が付いている製品数についてみても、全世界では20,000品目もあるのに、日本では僅か約200品目に過ぎない。先ほどの静岡新聞にも、「欧米に比べて非常に少ない」とある。2010年に行われた調査では、「MSCを知っている」と答えた人にしても、ドイツの36%に対して、半分以下の16%にとどまったという。海洋国家を標榜する我が国としては、また水産資源を大量に消費する日本としては、胸を張れる数値ではない。もっと真剣に、認証取得に向けた取り組をしければならない。天然水産資源ばかりではない。養殖漁業も、より環境負荷の少ない方法が求められている。

世界的環境保全団体である世界自然保護基金(WWF:World Wide Fund for Nature)によれば(http://www.wwf.or.jp/activities/nature/cat1136/cat1143/)、2010年にWWFとHDI社によって設立されたのが、水産養殖管理協議会(ASC:Aquaculture Stewardship Council)だという。オランダのユトレヒトに本拠を置き、独立した非営利団体として活動していて、2012年にはベトナムのティラピア養殖場が世界初のASC認証を取得したとある。ベトナムなど東南アジアで盛んなエビ、北欧や南米のサケ、或いはカキ、日本のブリやタイなど、養殖は年々盛んになってきている。最近では、難しいとされてきたマグロも養殖が可能になってきた。「2020年までには世界の水産物の40%以上が養殖によって生産される」とも予想されているらしく、ますます環境負荷の少ない養殖技術の確立が求められている。

MSC認証ラベル  ASC認証ラベル
MSC認証ラベル  ASC認証ラベル  

上の写真は、家の近くにある大手スーパーのイオンで写してきた、MSCとASCの認証ラベルだが、ラベルそのものの存在を知っていれば、たくさん並んだ商品の中からも容易に見つけられる。こうしたMSCやASCの取り組みによって、加工・流通・小売事業者も、そして我々消費者も、自分たちの意思を示すことができる。漁業者から消費者まで、誰もが責任ある持続可能な水産資源の利用に参加できるしくみだ。

しかし、そう簡単に認証されるものではないらしい。くだんの静岡新聞の記事に、「サケのふ化放流事業が、野生のサケに悪影響を与えないようにするなどMSC取得に向けた課題は多い」と書かれているように、認証取得するには多種多様なことを考慮しなければいけない。かと言って、いずれ無視することはできなくなるだろう。これまで庶民の食卓を飾ってきた水産物が、これまでと同じように食卓に上るよう、持続可能な漁業への取り組みを加速させていってほしいものである。だって、秋になったらやっぱりサンマを食べたいじゃないか!


【文責:知取気亭主人】

  
 

Copyright(C) 2002- ISABOU.NET All rights reserved.