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知取気亭主人の四方山話
 

『CRP15』

 

2016年10月5日

金沢に来たばかりの学生の頃だったと記憶しているが、その昔、「華氏451」という映画を観たことがある。タイトルに使われた「華氏451度(≒摂氏233度)」とは、紙が燃え始める温度を意味している。徹底した思想管理体制の下、書物を読むことを禁じられた社会の中で、書物の持つ魅力に目覚めた青年が同志とともに政府に抗っていく、といったストーリーだったと記憶している。観てから随分と経っているのだが、タイトルの特異さと、書物が燃やされるシーンの異様さが強烈で、今でもおぼろげながら記憶に残っている。

このように、華氏451とは“紙が燃え始める”という“ある状態”が起こる境界の数値、であった。これと同じように、我々の身の回りには「“ある状態”が起きる境界の数値」がたくさんある。身近なものでは、健康診断に使われる血液検査の基準値などがそうだ。ただ、その境界は、華氏451度ほど絶対的なものではなく、個人差や諸々の項目が複雑に絡み合っていて、“ことが絶対起こる”というものではない。しかし、健康状態を表す優れたバロメータになっていて、“見えない健康状態”の可視化に大いに役立っている。

ところが、元気で健康な若いうちは、「血液検査ぐらい…」と安易に捉えがちだ。それが、齢を重ね持病と仲良くなるにつれ、長い年月かけて決められた基準であり健康維持の目安としては極めて有効だ、と気付かされるようになってくる。中には、予防医学としての利用ではなく、既に発症している病の程度を知ろう、という検査もある。例えば、俗に炎症反応と呼ばれる「CRP検査」もその一つだ。

CRP検査は、血液中の「C反応性たんぱく」という成分の含有量を測定することで炎症や感染症の程度が分かる、という大変有り難い検査だ。熱が出たり、風邪が長引いたりした時など、私もこれまで何度か調べてもらったことがある。また、時系列的に検査することで治療の効果判定もできるため、“炎症程度の診断”には欠かせない血液検査となっている。

CRP検査の基準値は0.3mg/dl以下で、これから高くなるにつれ“炎症の度合い”が高いことを示している。真偽のほどは不明だが、「一般的に10mg/dlを超えると入院を要する」と書かれているサイトもある。ネットで調べたところによると、この10mg/dl 以上を重篤な状態としている例もあるが、以下に示した表-1の様に運用されている例もあり(出典:「けんさブック♪」(http://www.kensa-book.com/expression/crp.html))、今回はこの表を利用させてもらう。お気づきの様に、表-1最下段に書かれた「重体な疾患の…」となる境界基準の15という数値を、今回のタイトルにしている。理由は、図らずも、“その重体な疾患”を経験してしまったからだ。

CRP数値の基準値の範囲

翌日出張予定が入っていた26日の夜、何となく“だるさ”と“熱っぽさ”を覚え、いつもより早めに床に就いた。しかし、なかなか寝付けない。1時間もしていると、体が熱くなってきた。体温を測ると38度に近い。出張のことを考えるとこれ以上上がらないでほしい、と願っていたのだが、夜が更けるにつれ38度を超え、やがて39度も超えて上がり続け、濡れタオルで頭を冷やすも、ついに39.9度まで上昇し、一晩中うなされることになる。お陰で、ほとんど一睡もできない。しかし、これだけの熱が出ているのに、一向に汗をかかない。インフルエンザの時の様に関節も痛くない。不思議だ。

それでも、明るくなり始めたころから熱は徐々に下がり始め、27日10時ごろになってやっと36度台になった。その時を見計らい、掛かり付け医のT医院に行ってきた。医院でも、同じように36度台半ばの程良い値を示す。「喉も腫れていないし、咳も出ていないようだから普通の風邪でしょう」との診たてだ。薬が処方され、家に帰り寝ることにした。ところが、夕方近くになると前夜と同じような“だるさ”と“熱っぽさ”に襲われ、28日の早朝にかけて、再び高熱との戦いに巻き込まれてしまった。枕にはアイスノンを置き、冷凍庫で冷やした濡れタオルをビニール袋に入れたものを、両脇、額、首に置いて一夜を過ごしたのだが、この夜も体温は39.1度を記録した。前夜と同じように、寝られないし汗も出ない。

ところが、28日10時近くになると、不思議なことに、再び体温は下がり36度台に落ち着いてくれる。しかし、“だるさ”と“熱っぽさ”は治まらない。加えて、夜中に寝られない分、28日の日中はとろとろとしっ放しだ。その具合の悪さを察した家内がT先生に連絡を取り、一部薬の変更と、「明日必ず診察に来るように!」との指示を受けてきた。夜になっても、“だるさ”と“熱っぽさ”は治まらない。前夜と同じように、枕にはアイスノン、額両脇にはビニール袋入りの冷たい濡れタオルの完全装備で臨んだのだが、この夜も38.5度の高熱が出た。ただ、これまでと違い、少し咳が出るようになり、汗も大量に掻くようになった。

29日、10時ごろになると、これまでの二日間と同じように36度台に下がってきた。不思議だけど有り難い。体が楽になるからだ。指示通り、T先生のところに行き、胸部X線撮影と採血をしてきた。X線写真を見ながら、「右胸の下の方に怪しい影がある」という。「今晩か明朝(30日)には血液検査結果が届くから、両方で総合的に判断しましょう」との診断だ。その夜は、前日までに比べると熱は下がり、38度に届くか届かないほどになった。ただ、冷たいタオルもアイスノンも必要なかったが、前夜と同じように夜中に汗は掻いた。

30日朝、うつろうつろしていると枕元の携帯が鳴った。T先生からだ。電話口の向こうから、「血液検査の結果が出たが、肺炎の可能性がある。精密検査ができるK病院に紹介状を書いたから、なるべく早く取りに来なさい」という先生の声が聞こえる。“怪しい影”と言ったあの場所が、やはり肺炎の病巣だったのだろうか。T先生のところに行くと、「すぐにK病院に行きなさい」という。「血液検査の結果、CRPが19.34、白血球も12,600もあって肺炎が疑われるから…」と送り出され、紹介状片手にK病院に向かった。

K病院に着くと、まず研修医の問診を受け、続いて採血、CT撮影、X線撮影の検査三点セットへと進み、これから結果が出るまで凡そ2時間、診察室前の待合室で待つことになった。さすが地域の基幹病院だ、とにかく患者が多い。待合室の込みようも大変だ。そんな中、男性の入院ベッド確保に奔走している看護師さんの声が待合室まで聞こえてくる。何人かの男性が入院することになったのに、空きベッドが見つからないらしい。いろいろな病棟やフロアーに連絡取るも否定的な答えしか返ってこない、そんな生々しい様子が目の前で繰り広げられている。嫌でも聞こえてくるのだが、ダンボになって聞き耳を立てていると、私の番号が呼ばれた。

ラッキー、若い女医さんだ。無精髭が伸びた鼻の下を伸ばしながら一通りこれまでの経緯を説明し終わると、検査三点セットの結果を見ながら、「昨日より値は下がっているが、明らかな肺炎ですね」という。CT画像を見せられて、右側の肺の背中に近いところが炎症を起こしている、と教えられた。確かに白い。そこはT先生が疑念を持った場所と見事に重なる。CRPが19.34から15.98に、白血球も12,600から8,200に下がっているのだが…。

この検査結果から、これからどうするかの先生の説明が始まった。「CRPはまだ高い値だが白血球よりも遅れて低下するから、炎症は改善されているのだと思う」「見た目に凄くしんどそうでもないし、改善に向かっていると思われるので、数値的には肺炎だが、入院するか自宅療養するか、どちらにしますか」と相談された。「ベッドの空きも…」と言葉を濁されたのを受け、自宅の気ままさもあって、自宅療養することに決めた。ただ、毎日点滴を受けに来ることになった。

9月30日、10月1日、2日と三日続けて点滴を受け、3日の月曜日、これまでの治療効果確認のため、三度目の血液検査とX線撮影を行った。X線写真を見ると、完全にきれいになっているわけではないが、大分白いところが少なくなってきた。また、血液検査の結果も劇的に改善されていた。その嬉しい時系列変化を下の表-2に示した。

 血液検査の結果

こうして一覧表にしてみると、CRPも白血球も、見事に低下している。これまでの治療が効いているのだ。ただ、まだ完全に白い所が無くなった訳ではないことや、CRPも表-1に照らし合わせればまだ「中程度以上の炎症などが検討される範囲」に入ることもあり、3日、4日と点滴を受け、1週間後に四たび検査を受けることとなった。さてどうなることか、表-2の完成が待ち遠しい。

ところで、初めて肺炎にかかったが、結構しんどいものである。最初はマスクのせいかと思っていたのだが、家の2階に上がるだけで息苦しい。そしてだるい。気分も悪い。K病院で待っているとき、健康な状態であれば、なるべく立ったり歩いたりしたくなるのだが、今回は全くそんな気になれない。呼ばれるまで静かに座っているだけだ。やはり健康は有り難い!


【文責:知取気亭主人】
 

先週27日からの心模様
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