いさぼうネット
賛助会員一覧
こんにちはゲストさん

登録情報変更(パスワード再発行)

  • rss配信いさぼうネット更新情報はこちら
知取気亭主人の四方山話
 

『男の美学』

 

2016年11月9日

広島東洋カープの黒田博樹投手が、20年に及ぶプロ野球選手生活に終止符を打ち、今季限りで現役を引退した。昨年、大リーグニューヨークヤンキースからの高額の年俸提示を蹴り、8年ぶりに日本球界に復帰して話題となったが、その際語っていた日本球界復帰の理由に、多くのプロ野球ファンが拍手を送ったものだった。そして、今年、見事にその思いを実現させてみせた。日本一は逃したものの、25年ぶり7度目のリーグ優勝を果たし、復帰理由で述べていた「古巣広島の優勝に貢献したい」の思いが叶ったのだ。

勿論、優勝できたのは彼一人の力でない。しかし、行動で示した「金じゃないんだ!」の彼の熱い思いが、チームにやる気と力を与えたのは間違いないだろう。そういう意味では、チームの仲間に、広島の熱いファンに、そして多くの野球ファンに、野球人としての素晴らしい生き方を見せてくれた。彼のこうした生き方は、海を渡った大リーグでも高く評価されているらしい。私も同じで、引退も含めたそうした彼の決断や行動からは、最近では聞かれなくなった「男気」が感じられ、爽やかな気分にさせてもらった。

若い人には理解しづらい「男らしい気構え」とも言い換えられるこの「男気」、少し臭い表現ではあるが、私は、男として生きていく上で大切にしたい「男の美学」だ、と思っている。ところが、最近のニュースに登場する日本人男性には真逆の事件を起こす男が多く、常々嘆かわしいと思っていた。それだけに、黒田投手の行動は胸のすく思いをさせてくれたのだ。男たるもの、こうありたいものである。

昭和の高度成長期を知っている日本人、つまりそれなりに齢を重ねた日本人は、子供のころ、「男たるもの…」と育てられた人が多い。勿論、私もその内の一人だ。気になる「…」には、「泣き言を言うな」とか「言い訳をするな」とか、あるいは「弱きを助け、強きをくじく」などが当てはまり、総じて我慢を強いられることが多かった。「弱音を吐くな」もその一つで、中学や高校の運動クラブでもその傾向は強く、過度の振りかざしで非難の対象になることの多い「根性論」が、幅を利かせている時代でもあった。

今ではあまりお勧めできない考え方も中には在るのかもしれないが、長年そうした考え方の下で育ち生活してきたこともあって、今でも何かというと、「男たるもの…」が頭の隅から離れないでいる。時には邪魔になり、生きにくくさせることのあるこの「男たるもの…」が、先の「男気」の根底をなす考え方になっていて、「男だったらこうありたい!」という「男の美学」に通じている。

「男の美学」といっても、三島由紀夫の世界ではない。耽美主義と目される世界でもない。そして、筋骨隆々として偉丈夫、腕力が強い男を賛美するものでもない。その考え方や行動が、男らしいのだ。会社の同僚と5年ほど前、「男の美学」の例としてよく持ち出していたのが、「失敗した仲間のピンチを救うと我が身に火の粉が降りかかる可能性がある場合、敢えて火中の栗を拾うか否か。当然、拾うのが、我々が教わってきた男の美学だ」との理論だ。言い換えれば、「目先の利害にとらわれず、男だったら弱い者を守れ!」ということである。勿論むやみやたらに守るわけではないが、最近メディアを賑わすニュースには真逆の事件や出来事が多く、男の美学もどこかに雲散霧消してしまったのではないか、と危惧している。弱い者に手を挙げる、男の風上にも置けない輩が、とにかく多いのだ。

そんな中でも、特に強烈な記憶として残っている三つの事件がある。一つ目は、今年の5月に、5人の東大生・東大大学院生が強制わいせつ容疑で逮捕された事件だ。大衆居酒屋で飲み会を行った後、メンバーの自宅マンションに女子大生を連れ込んで犯行に及んだ、というのだが、家内によれば、テレビで報道された犯行の一部始終は余りにも卑劣で、ここに書くのも憚れるほどのものだったという。酔わせた上に、しかも集団で暴行するとは、呆れてものも言えない。「男の美学」以前に、人間としても最低だ。最高学府が聞いて呆れる。

二つ目は、19人が死亡し、26人がけがをした、神奈川県相模原市の障害者施設「津久井やまゆり園」の事件だ。日本ではアメリカの様に銃による乱射事件が無いだけに、これまで一人の犯人が犯した事件としては、これほどの大量殺人が発生したことはなく、日本の犯罪史上まれにみる凄惨な事件となった。7月16日未明、同施設に刃物を持った男が侵入し、入所していた知的障害者19人を殺めたのだが、施設に入っていたのは全員が知的障害者で、身体の不自由な人もいたという。中にはほとんど体を動かすことができない人もいた、というから許されない。守られるべき弱者を次々と殺害した、卑劣で残忍な犯行だ。男の美学云々言うのも恥ずかしい。

最後の三つめは、つい最近ニュースになった事件だ。堺市に住民登録がある4歳の男児が約3年前から所在不明となり、両親が児童手当の詐欺容疑で逮捕された。その後、35歳の父親を傷害致死容疑で、32歳の母親を保護責任者遺棄致死容疑で再逮捕したのだが、警察の発表によれば、昨年12月中旬、男児に何らかの暴行を加えて死亡させ、大阪府との県境に近い奈良県の山中に遺体を遺棄したという。幼気な幼子を、しかも愛しいはずの我が子を殺めるなんて、とても信じられない。親の情愛は、何に消されてしまったのだろう。

しかし、どうしてこうも嫌な事件が続くのだろう。我々が教えられた「男たるもの…」は、遠い過去の思い出になってしまうのだろうか。そんな思いがしないでもない。ただ、黒田投手の一連の行動に意気を感じている人が多いとしたら、まだまだ捨てたものでないのかもしれない。


【文責:知取気亭主人】

お腹を見せて申し訳ないけど、ボク(?)頑張ってるよ!-1  お腹を見せて申し訳ないけど、ボク(?)頑張ってるよ!-2
お腹を見せて申し訳ないけど、ボク(?)頑張ってるよ!

 

Copyright(C) 2002- ISABOU.NET All rights reserved.