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知取気亭主人の四方山話
 

『お宝』

 

2016年11月16日

先日、何年振りかで、ウィンドウショッピングならぬ、テントショッピングを楽しませてもらった。東京へ出張した折、待ち合わせ場所の一つに決めているJR新橋駅のSL広場で、古本市をやっていたのだ。あの広場を利用したことのある方はご存知だと思うが、さほど広くもない広場に、10張を超えるテントが立ち並んでいて、結構混みあっている。店頭に並んでいるのはその名の通り古本中心で、祭囃子が聞こえるわけではないのだが、混みあった雰囲気は田舎の祭りとたがわない。私の大好きな雰囲気でもある。

何時だったか、以前にも同じ場所で、古本市をやっていたことがあった。その時もテントショッピングを楽しませてもらったのだが、「読書は趣味の一つ」と任じている私にとっては、しばし日常を忘れリフレッシュできる、大変有り難い催しである。その上、何より嬉しいのは、待ち時間をイライラすることなく消化できることだ。並べられた商品を熱心に覗き込む人々を見ていると、それはどうやら私だけではなさそうである。

このSL広場は、東京での定番の待ち合わせスポットになっていて、催しが無くてもたくさんの人たちが集まる場所になっている。恐らく、私の目の前でテントショッピングしている大勢の人の中には、本来、古本市目的ではない人がたくさんいるのだろう。見るからにそれと思しき人たちが興味深そうに商品を手に取っている姿を見ると、私同様、時間潰しの恩恵にあずかっているのが良く分かる。

何故かと言えば、そんな人達を観察していると、待ち合わせ場所で良く見かける、電話をしたりスマホ画面を覗き込んだりしている人が一人もいないのだ。皆、商品棚を眺めたり、商品を手に取ったりしている。一時でも、待ち合わせていることを忘れているのに違いない。しかし、これだけ熱心に品定めをしているということは、買い上げてくれる人も多いということだろう。敢えて店まで足を運ぼうと思わない客を取り込むのには、抜群の立地だ。良い場所を選んだものである。

ところで、私のテントショッピングだが、待ち合わせ時間までの30分少々、冷やかし半分のつもりで、ぶらぶらと見て回った。多くは一瞥しかしないのだが、どの店でも1冊か2冊、興味深いタイトルの本に目が行く。各テントによって商品に多少の違いはあるものの、並べられているのは、文芸や専門書、そして漫画や雑誌などの古本が中心だ。それ以外には、静かなレコードブームを反映してか、懐かしいLPレコードを置いてある店も結構ある。さらには、興味をそそられる古地図や浮世絵などを中心に品揃えしている店もあって、そんな店の前では自然と足が止まる。

本屋に行った時のいつもの癖だが、時代物の古地図や浮世絵などに出会うと、思わず手が伸びる。大航海時代の頃の世界地図が好きなのと、今住んでいる金沢の町がどのように発展してきたか興味があって、以前から古地図販売のイベントに出会うと、それらを捜してしまう。と、もっともらしい理由を述べたが、それ以上に「ひょっとして、とんでもない掘り出し物ではないか?」と期待してしまうのだ。知らず知らずのうちに、「我が家のお宝になるのではないか!」と、いつもの欲望が頭をもたげてくる。そんな魔力が、古地図や浮世絵などに限らず、古い物にはある。

ただ、生憎、今回は気に入った物が見つからない。後で財布の中身を確認して、見つからなくて良かったと安堵もしたのだが、一度もたげた欲望は、おいそれと引き下がってくれない。そこで、古地図や浮世絵がダメなら古本ではどうだ、と古本で宝探しをすることにした。

古本と言えば、かつて、学生時代に暮らしていた寮の先輩で、「古本で大儲けをした」という人がいた。もう半世紀近く前の事だから、“大儲け”と言ってもどれくらい儲けたのかは記憶にはないが、その商売の方法はこうだ。金沢の古本屋でリヤカー一杯になる程の大量の古本を仕入れ、それを東京の古本屋に売るのだそうだ。同じ古本でも、東京の方が高値で取引されていたという。しかも、金沢は戦災に会っていないからか、東京にはない貴重な珍しい古書が結構あって、これが高値で売れたらしい。そうした古書以外にも、小説や雑誌の初版本や、著者のサイン入りの本だとかがたまにあって、それも相当な高値で買ってもらったのだという。それを思い出した。

古書は無理でも初版本やサイン入りの古本だったらあるのではないか、そんな人には言えない淡い期待を抱いて、見て回ることにした。それ程買う気も無いのに、何十冊手に取って見ただろうか。でも、世の中そんなに甘くない。予想通り、手に取るもの全て外れだ。ただ、時間がそんなにある訳でもなく、期待も不純だけに諦めも早い。我が家の“お宝”探しは、早々と諦めた。

結局、立ち読みして買った3冊も外れだ。ただ、いずれも“我が家のお宝”にはなりそうもないが、この四方山話の題材にはなりそうな本である。いつかこの場で日の目を見たら、“私のお宝”として本棚に残してやることにしよう。実際、“その程度のお宝”が、私にはお似合いなのかもしれない。


【文責:知取気亭主人】

小菊 
小菊

 

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