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知取気亭主人の四方山話
 

『トイレは面白い』

 

2016年12月7日

最近のテレビコマーシャルには、面白いものが多い。ただ商品を映し出し、特徴や機能を文字化したり有名人に連呼してもらったりする手合いのものが減り、最近は、ショートストーリーを面白可笑しく見せた後に商品やサービスあるいはスポンサー名をアピールする、劇場ものが増えてきているように思える。そう感じてしまう理由は、後者の方が圧倒的にインパクトがあるからだ。

と言っても、私自身広告を生業としている業界に身を置いているわけではないから、確かなことは言えない。その上、そんなにテレビを見る方ではなく、平均すると1日1時間も見るか見ないかぐらいだから、コマーシャルに詳しい訳ではない。ただ、「印象に残っているコマーシャルは?」と問われれば、「圧倒的に劇場ものだよ!」と即答できる。中でも私のお気に入りコマーシャルがあって、“ビッグベン”と“リトルベン”が出演している、あのコマーシャルだ。提供しているのは、TOTOである。

丁度我が家の孫ほどの“リトルベン”が見せる仕草と喋り方が、可愛らしくて我が家では大人気だ。加えて、 便器の“便”とベン親子の“ベン”をもじったところが言い得て妙で、このコマーシャルを気に入っているもうひとつの要因だ。どうしても汚いものを想像しがちな便器のコマーシャルを、“ベン親子”を登場させることにより、秀逸なコントに仕上げてしまったところが何とも憎い。

それにしても、便器のコマーシャルに、ロンドン名物の大時計“ビッグベン”を、そしてその子をもじって“リトルベン”を登場させるとは、「こんな手があったのか!」と唸ってしまうほどの発想力だ。よく考えれば、ビッグベンは“大便”を、リトルベンは“小便”を意味している事は容易に想像がつくのだが、観ているものにそんな意識をさせないところが素晴らしい。

広告会社が企画を持ち込んだのか、TOTO自身が「こんな感じのコマーシャルを」とアイデアを提供したのかは知る由もないが、いずれにせよ実に面白いコマーシャルだ。こういった企画が通るということは、TOTOそのものが、「真面目なことを面白く楽しむ」という社風の会社なのかもしれない。実は、それを窺わせる本が手元にある。

本のタイトルを「トイレは笑う 歴史の裏側・古今東西」(プランニングOM編・著、TOTO出版)という。第696話の『お宝』で古本市の話題を取り上げたが、この本はその時買い求めたものだ。タイトルに引き寄せられ、そして立ち読みした中身が面白くて、思わず買ってしまった。よくもそんなにあるものだと感心するが、トイレの話題だけで100話もある。そして、その100話全てが誰かに話したくなってしまう内容だ。副題にあるように、歴史的に見た古今東西のトイレ事情を、面白可笑しく書き上げていて飽きない。

1990年の出版だから廃版になっている可能性が高いが、私と同じように古本であれば、手に入れることが出来るかもしれない。気になる方はぜひ探してみるのをお勧めする。愉快な本が好きな方にはお勧めの本である。それでは、全てを紹介するわけにはいかないが、私が気に入った話のいくつかをかいつまんで紹介しよう。

例えば、ベルサイユ宮殿の舞踏会は、便器持参だったそうだ。「ベルサイユ宮殿にはトイレが無かった」というまことしやかな伝承があるそうだが、この本によれば、それは間違いだという。ただ、あるにはあったのだが数が少なく、18世紀の貴族たちは、舞踏会に行くたびに、男女を問わず香を炊いた携帯便器を持参したのだという。持参と言えば聞こえはいいが、中身はどうするのと言えば、従者が庭に捨ててしまっていたらしい。それに加えて、宮殿内で生活する貴族の排出物も庭に捨てていたらしく、宮殿は悪臭でムカムカするほどだったという。ルイ14世がルーブル宮殿からベルサイユ宮殿に居城を移したのだが、その理由が前のお城が糞尿まみれで汚れたからだ、というから呆れてしまう。そんな裏話を知ってしまうと、一世を風靡した「ベルサイユのばら」も、何となく色あせてくる。

表向きは華やかなフランスはパリに比べると、同時期の日本は、世界に誇る仕組みで大都市江戸の衛生を保っていたという。江戸に限らず、町で生じた糞尿は、近隣の農家が汲み取りをして、肥料として使っていたことが知られている。田舎育ちの高齢者なら、昭和30年代初頭の頃までやられていたのを、見聞きした人も多いだろう。“世界に誇る仕組み”とは、このことである。

江戸時代の長屋の大家さんは、所有者ではなく委託された管理者だったらしい。その給金は、長屋の維持管理費も含めて年間20両ほどしかなかったという。これは腕の良い大工さん程度だったというから、意外と少ない。ところが、長屋の住人の糞尿を農家に売って得る副収入が、全て大家の懐に入れることができたらしい。この金額が年間30両から40両近くにもなった、という説もあるらしい。驚きの副収入である。幕末に来日したオールコックという西洋人が、「江戸市内の街路は…きわめて清潔で…」と認めているというが、こんなエコシステムがあったとはさぞ驚いたことだろう。

さて、最後に御姫様にまつわる問題を出して終えることにしよう。江戸時代、会津若松松平家の若殿様が、上杉家のお姫様と船の上でお見合いをした。5月の風のせいか、やがて姫様がもよおしてきた。大事なお見合いの席。しかも船の上。さて、姫様はどのような方法でこの苦境を脱したか。皆さんならどうしますか?解答は次話までのお楽しみに!


【文責:知取気亭主人】
 


 

「トイレは笑う 歴史の裏側・古今東西」

【著者】プランニングOM
【出版社】 TOTO出版
【発行年月】 1990/03
【ISBN】 978-4-88706-009-8
【頁】 単行本: 221ページ
【定価】 本体971円+税

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