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知取気亭主人の四方山話
 

『僅か30秒だけど…』

 

2017年2月1日

世界の国々に不安と反感を撒き散らしているトランプ政権が、いよいよ動き出した。選挙期間中に彼が発した言動が、これからの政策と一致するのか否か、世界中が固唾をのんで見守っている。就任にしてまだ2週間も経っていないのに、国の内外からこれほど心配されている指導者も珍しい。ところが、就任から1週間たった27日、日本経済新聞朝刊(以降、日経)の一面に、「NY株、初の2万ドル」の文字が躍った。分からないものだ。メキシコとの国境に壁を造るとか、中東・北アフリカ7カ国の出身者の一時入国禁止や、全ての国からの難民の受け入れを一時停止する大統領令に署名したとか、外交的にはとかく批判の多い新大統領だが、こと国内経済に関しては随分と期待値が大きいらしい。

日経によれば、1999年に初めて1万ドル台に乗せてから18年の歳月を経て、2万ドルに到達したことになるという。一方、日本の株価はというと、日経平均株価でみると1999年の終値が1万8934円であったものが、2017年1月26日の終値ではやっと1万9402円になっただけだという。同じ18年間で、日経平均は、僅か500円ほどしか上がっていないことになる。アメリカンドリームという言葉をよく聞くが、日本に比べ桁違いに大きいこの株価上昇を知ると、経済成長の堅調さとダイナミズムを感じずにはいられない。恐らく、ビジネスを立ち上げたり拡大したりしていくには、縦割り行政の弊害が一向に是正されない日本に比べ、アメリカの制度は柔軟性に富み、アイデアを具現化しやすいのだろう。さすが、世界一の経済大国である。

トランプ・ラリーと称される造語まで飛び出して株価を初の2万ドルに乗せたり、製造業の国内投資旋風まで巻き起こしたりしているのだから、「トランプ大統領、中々やるもんですな!」と称賛してやりたいほどだ。ところが、国内経済以外の、例えば外交に目を転じると、「暗雲が垂れ込み始めている」と世界の指導者たちは捉えていて、期待よりも不安の方が遥かに大きいようだ。その不安を象徴する出来事が、NHKラジオから流れてきた。第二次大戦後の1947年に、広島・長崎に投下した原爆の開発プロジェクト、マンハッタン計画に携わった科学者たちの呼びかけで始まった「終末時計」と呼ばれる、世界の安全性を示す時計の針が、トランプ大統領が就任したことで30秒進められ、残り時間が僅か2分30秒になってしまったというのだ。

「終末時計」は、核兵器などによって人類が滅びる地球最後の時を深夜零時と仮定して、それまでの残り時間を概念的に示すもので、1947年に初めて登場した際は7分前だったらしい。その後、核開発競争や政治情勢の変化やテロ、あるいは地球温暖化など、世界のめまぐるしい動きを俯瞰しながら、時計の針を進めたり戻したりしていて、これまで凡そ70年に亘り時の指導者たちに警鐘を鳴らしてきた。下図は、その経年変化を示したものだ。

第2次世界大戦後の冷戦期だった1953年には、前年に米ソが相次いで水爆実験に成功して三度目となる世界大戦の暗雲が垂れ込めたため、これまでで最も深夜零時に近づいて、残り時間はたった2分とされた(下図の@参照)。この緊張状態は1959年の米ソ国交回復まで続いたが、それ以降、トランプ大統領が登場するまで3分を切ったことは一度も無かった。ただ、世界の動きによって針は進退を繰り返し、ソビエト連邦が崩壊して米ソが軍縮条約に調印したことを受けた1991年には、危機は後退したと判断されて、17分に戻されたこともあった(図のA)。この1991年からの3年が、70年間で最も残り時間が多かった時期だ。

その後残り時間は、ほぼ減少するばかりである。94年以降で針が進められた主な出来事としては、インドとパキスタンが相次いで核実験を行った結果、1998年には一挙に5分も進められたり(同B)、日本も針を進めるのに関わっていて、東日本大震災により福島原発事故が発生(2011年)した翌年(同C)に1分進められたりしている。また、直近の2015年には(同D)、記憶に新しいウクライナ問題などが発生して、時計は3分まで進んでいた。そして、トランプ大統領の登壇、である。

残り時間を決めた委員会は、30秒進めた理由として、昨年北朝鮮が2度の核実験を強行したことや、シリアやウクライナ問題をめぐる国際情勢の不安定化に加え、トランプ氏の「核兵器の使用や拡散について不穏な発言をし、気候変動について後ろ向きな発言をしたこと」を挙げているらしい。僅か30秒だが、前大戦直後の米ソ冷戦と似た、緊迫した状況になっている、と判断された訳である。今も、毎日のようにトランプ関連のニュースが、トップで流れてくる。本当に大統領に相応しい人物なのだろうか?

終末時計、残り時間の変化

Wikipedia「世界終末時計」のデータを使用して作成)

【文責:知取気亭主人】

  
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