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知取気亭主人の四方山話
 

『忘れてはならない』

 

2017年3月15日

2011年に発生した東日本大震災から、6度目の3月11日が訪れた。夕方のテレビ画面に映し出される衝撃映像に釘付けになったあの日、想像を絶する津波の破壊力に、ただただ呆然とし、言い知れぬ恐怖心に身を固くしたのを今でも覚えている。あの時からもう6年とは、やはり月日は待ってくれないものだ。しかし、6年が経っても、3.11が近くなるにつれ、テレビ、新聞は東日本大震災関連の報道で溢れるようになる。あれからは、毎年繰り返されている光景だ。それほどまでに、被害の爪痕はそこかしこに残されている。

発災からひと月ほどが経ち、被害の全容が分かり始めた頃だったと記憶しているが、この甚大な被害から復興完了宣言を出せるにはどれほどの時間が掛かるのだろうか、と暗澹たる思いにさせられたものだった。今6年が経ち、「案の定だった!」というのが偽らざる思いだ。あれだけ広域にわたり甚大な被害が出て、しかも原発事故まで発生したのだから、当然と言えば当然なのかもしれない。しかし、何か釈然としないものがある。

事故を起こした福島第一原発に関しては、6年も経ったというのに、いまだに炉内の様子さえ把握できないでいる。燃料棒が溶け落ちていることは分かったのだが、先日満を持して投入されたロボットも、溶け落ちた核燃料がどこにどれだけ溜まっているのか、期待した成果をほとんど得られないまま、途中で動かなくなってしまった。散乱したガレキに、放射線対策を施した機器でさえ故障させてしまう程の強い放射能、これまで人類が経験したことのない環境下での調査は、困難を極めている。しかし、どうしてもやらなければならない。中の状況が分からなければ、対策の計画さえ立てられないからだ。

ロボット調査で判明した、最大で(1時間に)650シーベルトという数値は、人が浴びれば1分も立たずに死に至る強さだという。3月10日の日経新聞朝刊の「ニュースな科学」欄に掲載されていた一覧表によれば、7シーベルトで99%の人が死亡するというから、その凄さが分かる。しかし、放射能の怖さ、原発事故の怖さは、福島第一原発事故の四半世紀も前に多数の犠牲者によって明らかになっていたのに、何故福島の事故を防げなかったのだろうか。そんな呪文のような疑問が、今も消えないでいる。事故から1年後に発表された福島原発事故独立検証委員会による報告書、「福島原発事故独立検証委員会 調査・検証報告書」(一般財団法人 日本再建イニシアティブ、ディスカヴァー・トゥエンティワン)を読んではいるのだが…(概要は第457話「空気は読めない方がよい」参照)。

今から31年前の1986年4月26日に発生した、人類が初めて経験した原子力発電所の爆発事故、そうあのチェルノブイリ原発事故の現場では、30年以上たったというのに、いまだに復興完了宣言は出されていない(1979年に発生したスリーマイル島の原発事故では、メルトダウンはしているが爆発はしていない)。事故を起こした原発建屋を丸ごと覆う、「石棺」と呼ばれる覆いが築造中だとのニュースを聞いたのは確か昨年だったと思うが、その後の被災地はどのようになっているのだろうか。福島第一原発事故の周辺地域では、既に避難解除が出され始めた区域もあるようなのだが…。

そんな福島第一原発周辺地域の“これから”を想定できる、唯一の教科書とも思えるチェルノブイリ、その“原発事故を起こしたチェルノブイリの今”を取材した記事を、ネットで見つけた。昨年の4月に公開された、日本経済新聞による「悲劇から30年 チェルノブイリの実相」だ(https://vdata.nikkei.com/newsgraphics/chernobyl/)。その記事によれば、いまだにチェルノブイリ原発から半径30q圏内は立ち入り禁止区域だという。ただ、許可を取れば短時間の立ち入りは許されているらしく、また自身の判断で戻ってきた住民が現在約160人暮らしてもいるらしい。

チェルノブイリに比べると、福島の立ち入り禁止区域は一律ではない。福島県の「ふくしま復興ステーション」(http://www.pref.fukushima.lg.jp/site/portal/list271-840.html)に掲載されている「避難指示区域の概念図」を見ると、20q以内でも南相馬市や楢葉町などでは既に避難指示が解除されている区域がある。他方、20qを超えても、第一原発から北西に広がる浪江町や飯館村の一部などのように、帰還困難区域に指定されている区域もある。風の影響だろうと思うが、チェルノブイリに比べると随分と近い区域もある。メルトダウンした核燃料がそのままになっているのに加え、まだ6年しか経っていないのに、こんなに近くに住んで本当に大丈夫なのだろうか。

2020年の東京オリンピック招致活動で、安倍首相は「福島第一原発事故は完全にコントロールされている」とアピールした。しかし、原子炉内の被災状況さえも把握できていないのに、本当に、「完全にコントロールされている」などと言えるのだろうか。避難指示区域の新たな拡大が無い、という意味で「コントロールされている」を使ったのかもしれないが、とても「完全に…」とは言い難い。「強い放射能に翻弄されている」が、現場で対策に携わる人たちの正直な気持ち、ではないだろうか。

加えて、放射能によるイジメもが報道されている。NHKニュースによれば、子供達ばかりでなく、大人へのイジメや嫌がらせもあるという。こうしたイジメの根本原因が原発事故にあることを、そしてこの先いつになったら復興完了宣言が出せるのかその端緒さえ掴めていないことを、忘れてはならない。

【文責:知取気亭主人】

  

 


『福島原発事故 独立検証委員会』

【著者】福島原発事故独立検証委員会


【出版社】 ディスカヴァー・トゥエンティワン
【発売日】 2012/3/12 
【ISBN-10】 4799311581
【ISBN-13】 978-4799311585
【ページ】単行本(ソフトカバー): 412ページ
【本体価格】 \1,575

 

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