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知取気亭主人の四方山話
 

『真実を知りたい!』

 

2017年3月22日

今、巷では森友学園の問題で持ち切りだ。籠池前理事長のキャラクターも手伝ってか、国有地購入に関する諸々の疑惑で、テレビや新聞に籠池氏の名前が出ない日はない。国民注目の的になっているこの問題、いよいよ佳境に入ってきた。国会の予算委員会で野党から要求されていた理事長の参考人招致、安倍首相をはじめとする政府与党のかたくなな反対で実現は無理だと思っていたのだが、突如森友学園側への寄付金に安倍首相の名前が飛び出すに及んで、ついに実現することとなったからだ。しかも参考人招致ではなく証人喚問だというから、いよいよ風雲急を告げる″、そんな感じである。

野次馬根性丸出しで言わせてもらえば、23日の証人喚問で何が飛び出すか興味津々だ。何故かと言えば、庶民の我々にとって知りたい情報の殆どが、闇の向こうにあって一向に見えないからだ。値引きの根拠も霞が懸かったままだし、不思議なことに一部関係書類も残っていないとか。首相夫妻との関係も含め、野党からの質問に答弁すればするほど疑念は募るばかりだ。国民は真実を知りたいのに、知られたくない事を隠しているようにさえ感じてしまう。たまたまなのかもしれないが、この件以外にも隠ぺいと取られかねない事態が続いているから余計にそうだ。

2020年東京オリンピックに関する費用の問題も東京都の豊洲問題もそうだし、南スーダンに派遣されている陸上自衛隊PKO部隊の日報廃棄問題などもそうだ。真実を知りたくても、庶民の我々には闇が深すぎる。また、それを調べて明らかにする力もないし、術も知らない。恐らく、当事者にとって不都合な真実があるのだろう。しかし、不都合だからと言って覆い隠してばかりいると、多くの場合、我々一般庶民が不利益を被ることになる。やはり国民が納めた税金を予算化し執行する、下種な言い方をすれば金を握っている行政側の人間ほど、不都合な真実に接することが多いからだ。

そうならないためには、国民に真実が伝えられ、国民の納得を得た上で事がなされる必要がある。となると、報道機関の果たす役割が極めて重要だ。特に、現場に出向き直接見聞きする記者には、ジャーナリストしての矜持″を持っていることが大事だと思っている。しかし、記者クラブという独特なもたれ合い組織があって、「御用聞き記者」と揶揄される日本のジャーナリストには、そんなことを期待するのはどだい無理だ。ずっと、そう思っていた。しかし、日本人も捨てたもんではない。気骨のあるジャーナリストがいてくれた。今回は、そんな気骨のあるジャーナリストが書いた、飛び切りの本を3冊紹介したい。

今日の日本は、先に述べた諸問題に加え、情報公開請求で出てくるのり弁オンパレード″などに代表されるように、「不都合な真実が次々と闇に葬られているのではないか」と疑いたくなる社会になってしまった、と感じている。そんな風潮の中で、こんな風に真実をあぶり出してくれたらよいのに、と思える秀逸な本に出会った。いずれもジャーナリスト清水潔氏の手によるものだ。3冊を2日間で読んでしまうほど熱中してしまう、そんな本だった。

1冊目は「桶川ストーカー事件 −遺言」(新潮文庫)である。この本は、1999年10月26日に、埼玉県のJR桶川駅前で起きた、21歳女子大生刺殺事件の真相に迫ったノンフィクションだ。被害者は、受けていた執拗なストーカー行為を警察に訴えていたのだが、警察の対応のまずさから、結局犯人を名指しする遺言を残し、殺されてしまった。後手に回った捜査は難航し、一向に犯人にたどり着けない。ところが、警察の記者クラブに入れない週刊誌の一記者が、警察に先んじて犯人を割り出し、追い詰めた。その記者こそ、清水潔氏である。

結局犯人は自殺し、逮捕されることはなかったが、この事件をきっかけに「ストーカー規制法」が制定されることになる。裏表紙には「『記者の教科書』と絶賛された」と書かれているが、読めば納得である。当事者(この本の場合は埼玉県警)にとって不都合な真実はこの本のように隠ぺいされていくのか、と思うと恐ろしい。しかし、我々の身の回りでも起こりうる話だ。一押しの一冊である。

2冊目の「殺人犯はそこにいる」(新潮文庫)も、1冊目と同じく殺人事件を追った本である。副題は、「隠ぺいされた北関東連続幼女誘拐殺人事件」となっている。群馬県と栃木県、そして埼玉県が交わる半径10qのエリア内で起きた、@1979年(栃木県足利市)、A1984年(栃木県足利市)、B1987年(群馬県尾島町)、C1990年(栃木県足利市)、D1996年(群馬県太田市)の計5件の幼女誘拐事件を追った本だ。いずれの事件も4〜8歳の幼気な幼女が犠牲になった事件で、5件目はいまだに行方不明になったままだ。そして4件目が、「足利事件」と呼ばれている事件である。

「足利事件」と言えば、冤罪報道で記憶にある人もいるだろう。その「足利事件」が冤罪であると突き詰めたのは、ほかならぬ著者の清水潔氏である。それも、5件目の事件が起きてから11年後に動き出して、真犯人が他にいることを突き止めたのだ。それまでの警察の捜査が如何に杜撰だったかが分かる。また、一度下したDNA鑑定の間違いを、素直に認めようとしない警察の体質に、強い憤りを覚えるのを止められなかった。

ところで、この本はカバーが独特だ。「さわや書店 フェザン店」の長江さんという方が書いた文章が、そのままカバーに印刷されている。私と同様、どう表現したら良いのか、適当な言葉が見つからない程複雑な思いが巡った読後感想だったに違いない。その中の一文を引用させてもらい、私もこの本を推薦したい。「それでも僕は、この本をあなたに読んでほしいのです。」

3冊目は、「『南京事件』を調査せよ」(文芸春秋)である。帯には、「『南京事件』は本当にあったのか?なかったのか?」と書かれている。その通りだ。当時を知らない我々は、そこが知りたいのだ。この本は、日本テレビで放映されたドキュメント「南京事件 兵士たちの遺言」に追加取材を加え、書籍化したものだという。とかく犠牲者の数がクローズアップされ、「当時の南京市の人口より多い犠牲者などあり得る筈もなく、大量虐殺そのものもでっち上げだ」などの乱暴な意見も聞こえてくる。でも実際はどうなのだろう。

具体的な内容は差し控えるが、前2冊を読めば、この3冊目の信ぴょう性は、おのずから分かろうというものだ。是非この本を手に取り、皆さんにも南京事件の真実に向き合ってほしい。それこそ、日本人にとっては不都合な真実かもしれないのだが…。

最後に、著者に響くという心の声を紹介して、第714話を閉じることとする。「知ろうとしないことは罪である。」

【文責:知取気亭主人】

  

 


『桶川ストーカー殺人事件 ―遺言』

【著者】清水 潔


【出版社】 新潮社
【発売日】 2004/5/28 
【ISBN-10】 4101492212
【ISBN-13】 978-4101492216
【ページ】文庫: 418ページ
【本体価格】 724円(税込)

 

 


『殺人犯はそこにいる』

【著者】清水 潔


【出版社】 新潮社
【発売日】 2016/5/28 
【ISBN-10】 4101492220
【ISBN-13】 978-4101492223
【ページ】文庫: 509ページ
【本体価格】 810円(税込)

 

 


『「南京事件」を調査せよ』

【著者】清水 潔


【出版社】 文藝春秋
【発売日】 2016/8/25 
【ISBN-10】 4163905146
【ISBN-13】 978-4163905143
【ページ】単行本: 278ページ
【本体価格】 1,500円+税

 

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