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知取気亭主人の四方山話
 

『違法操業を取り締まる』

 

2017年7月19日

「サンマ乱獲防止できず」、こんなタイトルの記事が、7月16日の日本経済新聞朝刊に載った。日本、韓国、中国、台湾など八つの国と地域が参加する北太平洋漁業委員会が開催され、日本が提案していた「サンマの漁獲枠創設」の議論が、予想通り決裂したのだ。ひとまず操業漁船の増加を見合わせる、ということでお茶を濁す結果になったらしいが、このまま今の野放図な乱獲が続けば、いずれ庶民の食卓から尾頭付きのサンマが消える日が来るのではないか、と思っている。ところが、魚好きがそんな寂しい危惧をしなければいけないのは、実はサンマだけではない。スルメイカも、である。

能登半島沖の日本海に「大和堆(やまとたい)」と呼ばれる、国内有数の漁場がある。ここは、日本の排他的経済水域(EEZ)に含まれていて、日本が優先的に漁を行える場所である。ところが、この水域で、昨年の10月頃から北朝鮮船籍と見られる船や、中国船籍と見られる船が多数押し寄せるようになり、日本漁船の目の前で堂々と違法操業をしている。しかも数が非常に多く、日本の船が遠慮をしている状態らしい。

この水域はスルメイカ漁も盛んで、私が住む石川県の能登半島には、そこを漁場としている国内有数の水揚げを誇る小木港がある。今が丁度その漁期なのだが、北朝鮮船籍と見られる船は、日本の船の明かりをめがけて寄って来るのだという。小木港所属の船は、これら違法操業船との衝突を避ける為に、やむを得ず大和堆での操業を諦め、北海道沖まで出かけるという理不尽な漁を強いられている。理不尽な状況はそればかりではない。報道によれば、こうした違法漁業を取り締まる、水産庁の漁業取締船が、小銃で威嚇されるという事件まで起きているのだ(http://www.jiji.com/jc/article?k=2017071200968&g=prk)。

しかし、どうしてこれほど傍若無人に振る舞えるのだろう。原因は、日本が毅然とした態度を示さないからではないか、と感じている。第一、こうした外国漁船による違法操業を取り締まるのは、水産庁ではなく海の警察たる海上保安庁の方が適任ではないかと思う。恐らく、縦割り行政の弊害として出ているその辺の守備範囲の曖昧さが、違法操業をしている船員たちを図に載せている原因になっているのではないか、と疑っている。そこで、水産庁の取締船について調べてみた。

水産庁ホームページによれば(http://www.jfa.maff.go.jp/j/koho/senpaku.html)、同庁に所属している船舶は、漁業調査船として海洋丸(総トン数2,630トン、定けい港:東京)の1隻、今回の話題に登場する漁業取締船としては、驚いたことに、照洋丸(2,183トン、東京)、東光丸(2,071トン、東京)、白竜丸(1,598トン、東京)、白嶺丸(499トン、堺港)、白鷺(149トン、神戸、所属:瀬戸内海漁業調整事務所)、白鷗丸(499トン、博多)、白萩丸(499トン、博多)の僅か7隻しかない。たったこれだけで、この日本の広い漁場を取り締まるのはどだい無理だ。

しかも、読んでの通り「定けい港(いつも係留しておく港)」は、大都市ばかりで、漁業の盛んな北海道や東北地方にも、そして数年前に中国の大船団によって紅サンゴが密漁された小笠原諸島や伊豆諸島にも、一つもない。勿論、能登半島を含めた日本海側の港も全て蚊帳の外だ。東京偏重がこんなところにも表れているとは、何をかいわんや、である。果たして、東京にどれだけの漁師がいて、どれだけの水揚げがあるというのだろう。

漁業取締船として都道府県に所属する船もあるが、例えば石川県を例にとって言えば、平成15年に公表された「石川県漁業取締船建造工事」と題したエクセルシートでは、平成17年度に竣工予定とされた「ほうだつ」(54トン)しかなく、恐らく今でもこの「ほうだつ」だけだろう。この大きさでは、危険を顧みない密漁船に対峙するのは危険だ。また、民間の船を借り上げているとの情報を読んだこともあるが、銃器を持てない状況では取り締まりの効果は限定的にならざるを得ない。

現行の法令では、水産庁の漁業監督官及び都道府県の漁業監督吏員には拳銃など銃器での武装は全く認められていない。船に装備されている銃器としては、船首の砲塔に備え付けている放水砲しかないというから驚きだ。その他、密漁者に対峙する武器(?)として装備されているのは、音と光による威嚇装置、カラーボール発射装置だけだというから、法律上仕方がないとはいえあまりにお粗末だ。これでは威嚇にもならないだろう。今回のように小銃で威嚇されたら逃げるしかない、というのも納得せざるを得ない。

それにしても、自国の権利や資源、そして漁業者の生活を守ろうというには、あまりにお粗末すぎないだろうか。もういっそのこと、漁業取締は海上保安庁に移管してしまってはどうだろう。勿論、海上保安庁の船も職員も大幅に増やすことが前提だが、毅然とした取締をするには、ある程度の銃火器を装備した船の配備が必要不可欠だろう。そして、定けい港は取り締まり対象となる漁場に近い所にすべきだ。例えば、大和堆であれば小木港や輪島港、佐渡島の両津港などである。

ところで、水産庁ホームページを見ていてひとつ気が付いたことがある。幾ら探しても、「小銃で威嚇された」という発表が見当たらないのだ。「外交上の…」といって、“イワザル”を決め込むのだろうか。それとも、日本の漁師が大迷惑を蒙っているのに、取るに足らぬ事、としたのだろうか。どちらにせよ、39%しかない食料自給率(カロリーベース)の中で数少ない有望資源である漁業資源を守るべき唯一の国家組織なのに、ホームページからは、そうした組織としての矜持が感じられない。そう感じてしまうのは私だけなのだろうか…。

【文責:知取気亭主人】

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