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知取気亭主人の四方山話
 

『イノベーション力』

 

2017年9月27日

何年振りかで読み返している本がある。P.F.ドラッカー著、上田惇生編訳の「マネジメント 基本と原則【エッセンシャル版】」(ダイヤモンド社)である。今改めて読んでみると、前回の時は如何に読み飛ばしていたかが良く分かる。これまでにも二度、三度と読み返した本はあるのだが、こんなことは初めてだ。殆どと言って良い位に、記憶に残っていない。ところどころに「そう言えばそうだったな」と思う箇所がある程度で、今は全てが新鮮だ。初めて読むのと変わらない。喜んでいいのか悲しんでいいのか、良く分からない状態にある。

とは言うものの、改めて考えさせられたり、「著名なドラッカーと同じ考えだ」と自信を待たせてくれたりしているから、読み返して良かったと思っている。気になる個所については、手帳に書き写して、何とか記憶に留めようと涙ぐましい努力もしている。如何せん前回読んだ内容が殆ど記憶として残っていないのだから、今回も記憶に残らない可能性が多分にあるのだ。もしそうなったら、それこそ読書の時間が勿体ない。“そうならないため”と考えれば、書き写しに費やす時間など微々たるものだ。

ところで、今回の改めての読書で、頭に残ったキーワードがある。よく耳にする「イノベーション」だ。ドラッカーは企業が持つ二つだけの基本的な機能として、「イノベーション」と「マーケティング」を挙げ、この二つだけが成果をもたらす、と言っている。だとすると、それぞれの言葉の定義をしっかりと把握しておく必要がある。「マーケティング」は何となく理解できるのだが、一方の「イノベーション」については、良く耳にする割に分かりにくい。手元にある旺文社の国語辞典で調べると、「技術革新、新機軸」と説明されていて、何となく技術上の革新に焦点が当てられているような感じがする。

ところが、ドラッカーは「イノベーションとは、技術のみに関するコンセプトではない。経済に関わることである。」と述べ、企業の第二の機能としてのイノベーションを“新しい満足を生み出すこと”、と定義している。そして、既存製品の新しい用途を見つけることもイノベーションである、としている。こう書いてくれると分かりやすい。そう考えると、日本の伝統製品である “手ぬぐい”や“風呂敷”をタペストリーとして室内装飾用に販売するのも、イノベーションの一つだと言える。また、筆を化粧用道具として新しい分野を開拓したのは、お手本となる様なイノベーションだ。

こうして、改めてイノベーションについて考えてみると、分かり切ったことだが、豊かな発想力が欠かせないことが分かる。言い方を換えれば、既成概念や固定観念にとらわれない柔軟な発想が必要だ。しかも、自由な発想ばかりでなく、重要なのは新しい満足を生み出すことである。ところが、この新しい満足を生み出すことが意外と難しい。手前味噌や自己満足で新しい商品を投入しても顧客に受け入れられないことを、幾度となく見聞きをし、経験もしている。結果的に、新しい満足を生み出すことができなかったのだ。

ところが、ところが、である。孫たちを見ていると、いとも簡単にイノベーションを起こしているように見える。“遊び”の域を出ないのかもしれないが、“新しい遊び道具”を見つけては夢中になって遊んでいる。そして、その“遊び”は瞬く間に広まっていく。間違いなく、新しい満足を生み出しているのだ。恐るべきクリエイターたちである。先々週の土曜日、そんなイノベーションを間近に垣間見ることができた。

遊びに来ていた孫たちが、捨てようとしていた、我が家の大人にとっては邪魔なゴミを、見事に遊び道具として再利用してしまったのだ。一つ目は、壊れたキャリーバックだ。長女が捨てていったキャリーバックに首だけ出して座り、荷車よろしく引っ張られる遊びを見つけてしまった。写真を見ても分かる通り、本人たちは大喜びだ。荷物を運ぶキャリーバックを幼児用のコンパクトカーにしてしまったのだから、大したものである。これも立派なイノベーションだと言えるだろう。しかも、見ている大人も含め、大満足を生み出している。

イノベーション力-01  イノベーション力-02  イノベーション力-03  イノベーション力-04

二つ目は、一番上の孫娘への誕生日祝いのホッピングが入っていた段ボール箱だ。空になった段ボール箱を見つけた孫息子が、目を爛々と輝かせて近づいてきた。「入る?」、とママが誘うと喜んで乗り込んできた。これで、彼らにとっての夢の乗り物に早変わりだ。ユラユラ揺らすと、その喜びようと言ったらない。大人にとっては不要なゴミも、幼き天才クリエイターたちに掛かると、瞬く間に魔法の遊び道具となってしまう。子供は遊びの天才とよく言われるが、優れたイノベーション力を備えている、とも言える。既成概念から抜け出せないでいる我が身を考えると、羨ましい限りである。

もっとも、そんな遊びを一緒に楽しめる大人の遊び心があってこその、幼児のイノベーション力ではあるのだが…。

【文責:知取気亭主人】

 

マネジメント[エッセンシャル版] - 基本と原則  

マネジメント[エッセンシャル版] - 基本と原則

【著者】P・F・ドラッカー:著 上田惇生:編訳
【出版社】 ダイヤモンド社; エッセンシャル版
【発行年月】 2001年12月
【ISBN】 978-4-478-41023-3
【頁】 320ページ
【定価】 本体2,000円+税

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