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知取気亭主人の四方山話
 

『普通?』

 

2017年10月25日

今年になって、同じテーマを扱った本を立て続けに三冊読んだ。発達障害に関する本だ。一冊目は岩波明著「発達障害」(文春新書)、次にチャレンジしたのは、備瀬哲弘著「大人の発達障害」(マキノ出版)である。そして、今週の月曜日に読み終えたばかりの三冊目が、スティーブ・シルバーマン著、正高信男・入口真夕子訳「自閉症の世界」(講談社ブルーバックス)である。勿論、同じテーマの本を読んだのには訳がある。実は、5歳になる孫息子が発達障害を疑われていて、既に地元にある療育センターに月に二度通っているのだが、少しでもこの障害のことを知り彼の良き理解者になりたい、と思っているからだ。

療育センターの先生の診断は聞いていないが、子供の発達障害を専門にしている臨床心理士の長女は、孫息子は発達障害の中でも自閉スぺクトラム症だろうという(小さな頃の診断はなかなか難しいらしい)。「症状としては軽い」との診たてだが、時々発達障害の特徴の幾つかに当てはまる行動をとることがある。特に顕著なのは、周りが理解できない言葉を喋ることがあるとか(これを宇宙語と言うらしい)、言葉がやや遅いため大人の手を取って目的地まで連れてゆき、自分が欲しいもの(例えば冷蔵庫に入っているお菓子など)を取ってもらう様な行動(これをクレーン行動というらしい)をすることがある、などである。

また、ビー玉や卵の模型など“丸いモノ”や、タイヤなどの“回転するモノ”へのこだわりが強い特徴もある。更には、服装や食べ物など、慣れていない環境や物への抵抗感も人一倍強いように見える。周囲とのコミュニケーションも、どちらかと言えば苦手だ。ただ、それ以外は全く5歳の子供そのもので、周りが言っている事も全て理解しているように見える。それどころか、祖父としての欲目かも知れないのだが、遊びの中で時折見せる彼の行動は、楽しみな将来を大いに予感させるものだ。

例えば、3歳の頃だったと記憶しているが、近所の小学3、4年生と鬼ごっこで遊んでいた時、その歳上の子から「この子頭良い!」と驚きの声が出るようなことがあった。家を一周する形で鬼ごっこをしていたのだが、追いかけても無理だと分かったのか、直ぐに反対側に先回りしようとしたのだ。時折遊ぶジグゾーパズルも、私より格段に速くはめて行く。恐らく、言葉がやや遅い分、図形認識や空間認識などが発達しているのだろう。記憶力も優れているように思える。

また、私と外で遊んでいる時に、どこまで悪戯したら私から「ダメだよ!」と言われるのか、明らかに私を試している事が良くある。私の方を見ながら、そしてニコニコしながら悪戯をするのだ。明らかに、私は遊ばれている。彼が予想した通りの行動を私がとるのを、ヤッタァとばかりに楽しんでいるように見える。相手の心理を読み取っているのだ。そんな彼を見ていると、まだ言葉は自由に操れないが、頭の中では全てを理解している事が分かる。

このように、孫息子には発達が遅れているところも確かにあるが、秀でていると思われる点も多々ある。こうした、凸凹している全ての点が彼の特徴でもあるのだ。恐らく、言葉の遅れなどは、療育によって成長とともに取り戻すことができるのだと思う。苦手なところも克服できるかもしれない。そうした期待は勿論しているが、優れた特性を見出してそれを伸ばしてやることがより大切だ、と思っている。ただ、よく言われる“普通の子と違う”という世間の好奇の目が、特性を見出す目を曇らせる事が良くある。そうならないように、周りの大人は勿論だが、本人も“普通の振る舞い”という考え方にあまり束縛されることなく、生まれ持った(まだ隠れている)才能を思う存分伸ばしてもらいたい、と願っている。

と分かったようなことを書いているが、そう思えるようになったのは、幼児教育に造詣が深い家内や臨床心理士である長女の存在に加え、くだんの三冊の影響が大きく関与している。ぼんやりとした思いを確信に変えてくれたのが、三冊の本だ。特に「自閉症の世界」は、孫息子が生を受けたのが今で良かった、と思わせる本であった。そして、彼の将来を楽しめる余裕を持たせてくれた本でもある。

「自閉症の世界」は、自閉症研究史と呼んでもいい本だ。第一次大戦から第二次大戦にかけて行われた、自閉症児(この場合は障害を持った子供と言うべきか)へのおぞましい虐待は、文字に表すのもはばかられるほどだ。また、その後も続く自閉症児やその親への偏見は、無知の何ものでもなかったし、自閉症を研究していた医師の名誉欲がそれを助長していた側面もあるという。そうした紆余曲折を経て、また真摯な研究者の地道な努力の積み重ねによって、自閉症の世界が少しずつ明らかになってきている。その結果と言うべきだろう、この本の中で、私が一番勇気づけられた文章に出会うことになる。

本書から引用させてもらうと、「自閉症を遺伝子プールから完全に取り除こうと試みることは、数千年間にわたって文化や技術革新を進化させてきた才能を一掃することでもあり、人類の未来を危険にさらしかねないと彼女は警告した。」というものだ。“普通”ではないとみられた彼らが、便利になった“普通の暮らし”を今我々に享受させてくれている。一体“普通”って何だろう?

【文責:知取気亭主人】

 

発達障害  

発達障害

【著者】 岩波 明
【出版社】 文春新書
【発行年月】 2017年3月17日
【ISBN】  978-4-16-661123-2
【頁】 256ページ
【定価】 本体820円+税

自閉症の世界 多様性に満ちた内面の真実  

自閉症の世界 多様性に満ちた内面の真実

【著者】 著:スティーブ・シルバーマン 訳:正高 信男 訳:入口 真夕子
【出版社】 講談社
【発行年月】 2017年5月17日
【ISBN】 978-4-06-502014-2
【頁】 640ページ
【定価】 本体1,600円(税別)

大人の発達障害―アスペルガー症候群<br>AD/HD、自閉症が楽になる本  

大人の発達障害―アスペルガー症候群
AD/HD、自閉症が楽になる本


【著者】 備瀬 哲弘
【出版社】 マキノ出版
【発行年月】 2009年3月14日
【ISBN】 978-4837671084
【頁】 210ページ
【定価】 1,404円(税込)

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