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知取気亭主人の四方山話
 

『バーゲンとご祝儀相場』

 

2017年12月6日

今年もお歳暮の季節がやって来た。年の瀬が迫ってきたこの時期に品物を贈るお歳暮、日本の古くからの風習だと思っていたが、どうやらそうでもないらしい。飯倉晴武著「日本人のしきたり」(青春新書)には次のように書かれていて、今のような形になったのはそんなに古くはなさそうである。元々は、年の暮れに年神様や先祖の霊に米などの供物を家族で持ち寄ったのが始まりらしい。それが、帰省できない子供や遠くの親戚が、本家の祭壇に供える供物を贈るようになり、やがて、親たちの長寿の願いも加わり今のお歳暮という形なったのだという。しかし、今では親戚ばかりでなくお世話になった方や取引先などへも贈る様になって来ており、元々あった先祖の霊を供養するという意味合いは、随分薄らいできているように感じられる。

我が家も、先祖の霊を供養するといったことを考えることもなく、今年一年の御礼と来年もよろしくとの思いで、親戚などに贈っている。その贈り先が、この10年ほどで、子供たちの結婚と共に増えて来ている。増えてくると悩ましいのが、何を贈るかだ。当然のことながら「贈って喜ばれる物を!」と考えるのだが、懐具合と相談すると、「これだ!」と言い切れるものがなかなか見つからない。ただ、贈り先の殆どが石川県外であることを考えると、やはり地元石川県産の特産物が良いだろうと思っている。そんな思いで見て回るのだが、思いと懐具合がピタッと一致するものが少なく、毎年あれやこれやと頭を悩ましている。

悩み解消の為にお世話になっているのが、近くにあるショッピングセンターや市内のデパートだ。加えて、北陸新幹線開業以来すっかり観光地化してしまった感のある、近江町市場を利用することもある。今年は、贈り先が1軒増えたこともあり、滅多にないことだがその3ヶ所を物色して回り、近江町市場には2週続けて行ってきた。その近江町市場で、観光客の人込みに圧倒されながら並べられた魚介類を見ているうちに、疑問が湧いてきた。商品の値段の付け方についてだ。

最初に行ったのは、先月の末、11月25日の土曜日だ。9時過ぎに行ったのにえらく混んでいる。しかも、客の殆どは観光客だ。インバウンドの効果(影響?)なのだろう、見るからに外国人と思しき人もいる。ご多分に漏れず日本語以外の言葉もあちこちで飛び交わっていて、近年の近江町市場では、こうした観光客目当ての商品が目立つようになり、地元客で賑わっていた以前と比べ随分と様変わりしてきた。店頭でカキやウニなどを食べられる店が現れ、人気のズワイガニやノドグロが幅を利かせるようになっている。

しかし、観光客に人気のある商品は、総じて高い。観光客が増える前の様子を知っている地元民にとっては、手を出すには少しばかり勇気がいる。ただ石川県では、ズワイガニは別にしてカキやウニなどは、お歳暮として使われることが少ないため、お歳暮シーズンになったからと言ってさほど大きな変動は無いように見受けられる。どちらかと言うと、高止まりしたままだ。ところが、ブリは違う。北陸では、今獲れる寒ブリをお歳暮として贈る習慣があり、定置網漁が始まり市場に出回る11月中旬ころに比べると、12月に入り年末が迫ってくるとグンと値が上がる。俗に言う、ご祝儀相場だ。

天然ブリは、漁獲量によってその値段が随分違う。豊漁であれば安くなるし、不漁であれば高くなる。誰でも分かる道理である。今年は、先月中ごろから始まった定置網漁が豊漁で比較的安い、とニュースでは報じられていた。したがって、ご祝儀相場になっても手ごろな値段に収まってくれるのではないかと期待していた。しかし、最初に行った先月25日の時にはキロ2千円前後の相場だったのに、2回目に行った先週の土曜日(12月2日)にはもう値上がりしていて、キロ3千円以上にもなっている。年末に向けまだまだ上がるのではないか、と思っている。

ところが、である。ショッピングセンターやデパートでは、ご祝儀相場とは真逆の、お歳暮の特設コーナーを設け送料無料などのバーゲンをしている。中には、早割と称して、12月4日までに申し込むと10%から15%値引きする商品まで置いてある。同じお歳暮商品なのにこの違いはなんだろう。バーゲンをするのは、値下げをしてたくさん買ってもらおう、という商魂たくましい意図だが、勿論理解もできる。

しかし、その反対のご祝儀相場の意図はなんだろう。夕張メロンや大間のマグロ、石川だと高級ブドウですっかり有名になったルビーロマンなどのブランド化した特産品を、シーズンの初セリで目の玉が飛び出すような高値で競り落とすのは、良く分かる。取引シーズンの始まりを祝っての値段だからだ。でも、寒ブリやズワイガニの場合は、初セリとは関係なくお歳暮シーズンに入ると値が上がって行く。迎える新年は勿論めでたいが、値が上がれば買い控えも起こり売れ行きは落ちる、と思うのだが…。

恐らく、年に一度の事だから少々高くても買ってくれるだろう、との思いがあるのだろう。また買う方も、年末年始ぐらい豪勢にいきたい、思いきり寒ブリを味わいたい、と願っているのだろう。そうした売り手と買い手の絶妙なバランスで値段が決まっているのかもしれない。或いは、ご祝儀相場というのは、漁師さんへのご祝儀、の意味なのかもしれない。漁師さんへのご祝儀ということであれば、納得もできるし腑にも落ちる。でもそうすると、鮮魚以外のお歳暮商品を作っている人達へのご祝儀というのは、無いのだろうか。イヤイヤ、全国民が新年を祝う筈だから、買い手にとってもご祝儀相場があっても良いものだと思うのだが…。でもよくよく考えたら、バーゲンセールがその買い手にとってのご祝儀相場、なのかもしれない。一体、ご祝儀相場って、誰のためなんだ?

【文責:知取気亭主人】

近江町市場の店の様子(数年前)
近江町市場の店の様子(数年前)  

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