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知取気亭主人の四方山話
 

『自浄能力』

 

2017年12月13日

お隣の国韓国で開かれる平昌(ピョンチャン)冬季オリンピック開催まで、ついに2ヶ月を切った。それに合わせるかのように、冬のスポーツが俄然熱を帯びてきた。スキーにジャンプ、スピードスケートにフィギュアスケートなど、オリンピック前哨戦となる熱い戦いが世界各地で繰り広げられている。スピードスケートでは、日本の女子選手の活躍が素晴らしい。今シーズンが始まって以来、ワールドカップの結果を聴くのが楽しみになっている。連戦連勝の500mの小平選手、連日世界新を更新している団体追い抜きの高木姉妹と佐藤選手の三選手、いずれも平昌での金メダルを期待させる活躍だ。これまでスピードスケートではオランダを始めとする北欧選手の後塵を拝することが多かっただけに、何としてでも一番良い色のメダルを、と願っている。

ところで、気になるそのメダル争い。平昌まで凡そ2ヶ月に迫ってきた今、競技そのもの以外での話題が、折角盛り上がってきた雰囲気に水を差す事態となっている。ロシアが国として参加できない、というニュースだ。国際オリンピック委員会(IOC)は12月5日、国家ぐるみで組織的なドーピングをしてきたとされるロシアに対し、ロシア選手団の参加を認めないと決めた。厳格な条件を満たせば、個人資格での参加は認められる方向のようだが、こうなると、女子フィギュアスケートの金メダル候補メドベージェワ選手の参加も微妙だ。報道によると、ロシアは2011年から4年間にわたって、組織的な薬物投与に加え、検体のすり替えも組織的にやっていたとされている。酷い話だ。昨年のリオデジャネイロ五輪でも、同じ問題でペナルティーを受け、陸上や重量挙げのチームなどが出場停止となっている。

しかし、いくら国家の威信を掛けた戦いだとは言っても、ズルをしてまでやることなのだろうか。しかも組織的に、というのだからあきれてしまう。組織の中に、国際ルールを守って競技しなければダメだ、と襟を正そうとする常識ある人はいなかったのだろうか。国威発揚ばかりが強調され、よく言われる自浄作用が働く、そんな土壌ではなかったのだろう。そう思われることは、ロシアにとって大きなマイナスだ。他の政治やビジネスの世界でも似たようなことが行われるのではないか、と疑われるからだ。ところが、スポーツの世界ではないものの、日本でも自浄能力がないことによって国の信頼が揺らぐ由々しき事態が起こっている。皆さんよくご存じの、メーカーによる不祥事だ。

日産自動車やSUBARUの無資格者による完成検査問題に端を発した企業の不祥事は、神戸製鋼所や三菱マテリアルや東レなど素材メーカーによる改ざん問題にまで飛び火して、一体どこまで広がるのか、心配の種となっている。しかも、不祥事が発覚しているのは、名だたる企業ばかりである。これでは、ロシアのドーピング疑惑について、とやかく言える立場ではない。日本を代表する企業にも自浄能力の欠如が明らかになった事を考えると、同じ日本人としては、今一度自分の周りを振り返ってみる必要がありそうだ。我々も、“対岸の火事”とノンビリ構えている状況ではないのかもしれない。

折しも、12月8日の北陸中日新聞朝刊に載っていた、一連の企業不祥事に対するカンター元アメリカ通商代表へのインタビュー記事は、我々日本人に「対岸の火事ではないよ」と警鐘を鳴らすものであった。彼が語っていたのは、次のような感想だ。
  〇世界中の取引先に影響を与えている。  〇問題企業の将来に打撃を与える。
  〇世界との貿易で、日本への評価をおとしめることになる。

その上で、役員から一般社員までこの事態を深刻に捉えるべきだ、と警鐘を鳴らしているのだ。その通りだと思う。対岸の火事を決め込むには、我々はあまりにも厳しい競争社会の中にいる。競争相手は、鵜の目鷹の目でチャンスを狙っている。今回の不祥事は千載一遇のチャンスとばかり、競合企業は攻勢をかけてくるだろう。そうしたチャンスを与えないためにも、自ら問題を発見して解決する自浄能力は、企業ばかりでなく、組織や個人にとっても必要不可欠なものだ。しかも、その組織の中に膿があるとすれば尚更だ。

もう、気付いた方もおられるかと思うが、大相撲の件だ。日馬富士が引退を決意した一連の騒動についても同様の事が言える。詳しい顛末はいずれ詳らかになると思うが、私は白鵬の優勝インタビューで言った「膿」という言葉がとても気になっている。どんな膿なのだろうか。今回の騒動となった力士たち当事者間の膿なのか、或いは巷で言われている日本相撲協会と貴乃花親方の確執なのか、それとも週刊誌に文字が踊っている貴乃花親方と白鵬の確執や八百長問題なのか、今のところ膿の正体は見えていない。

大相撲は、これまでも八百長問題や暴力問題、或いは賭博問題などで度々世間を騒がせてきた。その度に一応の解決はしてきたものの、傍から見ると、本当に解決できたのか甚だ心許ない。神事と関わりの深い伝統スポーツとして、特別視される閉鎖社会だからだ。大相撲に限らずこうした歴史ある組織では、“伝統という目に見えない縛り”が自浄能力を自ら弱めて来たことは否めない、と思っている。したがって、残念ではあるけれど、白鵬が言うほど簡単に膿は出し切れるものではないだろう。

江戸勧進相撲発祥の地である富岡八幡宮(以下、神社)の殺傷事件は、そんな膿の根の深さを予見させる出来事だ。神社のホームページに依れば、大相撲との関わりは深く、新横綱誕生の際に土俵入りの奉納が行われるのもこの富岡八幡宮だという。名前の出た、貴乃花も白鵬も日馬富士も、この神社で奉納していることになる。3人も亡くなった今回の事件は、大相撲とは全く関係のないイザコザでの刃傷沙汰らしいが、神社でさえも自浄能力がなかったことに、何やら因縁めいたものを感じてしまう。

【文責:知取気亭主人】

山茶花
山茶花  

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