いさぼうネット
賛助会員一覧
こんにちはゲストさん

登録情報変更(パスワード再発行)

  • rss配信いさぼうネット更新情報はこちら
知取気亭主人の四方山話
 

『陽気に誘われて』

 

2018年3月28日

卒業・入学シーズンの到来と共に、各地から桜の便りが聞かれるようになって来た。例年になく日本列島の広い範囲を悩ませていた大雪に関する情報も、今頃になるとさすがに届かなくなり、気が付けば気温の上昇も随分と足早になってきた。平成に入って一番の大雪となった金沢も、三寒四温を繰り返しながらも大分暖かい日が増えて来ている。朝蛇口をひねって出てくる水も、すっかりぬるんできた。もう、ボイラーを炊かなくても大丈夫だ。

北陸の冬は、雪やみぞれの日が多く、ウンザリするくらい灰色の日が続く。お日様が恋しい日々が何と4ヶ月近くも続くのだ。それがここに来て、サクラ前線の話題が増えるのにつれ、お日様が顔を出す日が一挙に増えて来た。今冬は大雪に悩まされていただけに、太陽の明るい光は、何よりも有り難い。日差しが増えると、北陸の地は、白黒だった世界から一転、椿など早春の花が咲き始め、辺りは明るい総天然色(この表現、今の若い人は知らないかな?)の世界となる。我々雪国に住む者にとっては、待ちに待った季節の到来なのだ。身も心も何となく浮き立ってくる。

我々の若い頃流行ったキャンディーズのヒット曲「春一番」の歌詞、「♪重いコート脱いで 出かけませんか…♪」ではないが、そんな春の陽気に誘われて、先週と先々週の土曜日、孫3人を連れて近くの公園に行ってきた。勿論、コートは脱いで、である。公園と言っても、滑り台と運手がセットされた1台の遊具しかない、テニスコート3面分ほどの小さな公園だ。ただ、小学校の高学年や中学生などがサッカーや野球をするほど広くない分、逆に小学校低学年以下の幼児にとっては静かで安全な場所である。

また、中央付近には小さな東屋があって、散歩で通るお年寄りが良く腰掛けて休んで行く。元々、そうしたお年寄りや幼児が休憩したり遊んだりすることを主眼に置いた公園なのだろう、東屋周辺以外は全て芝生で、転んでも安心な造りとなっている。実は、この公園は私のウォーキングコースにあって、前から目を付けてはいたのだが、やっと今回連れて来てやることができたのだ。

孫達も久し振りの外遊びに大はしゃぎだ。我が家の前の狭い道路で遊ばせるのと違い、車の心配もない。その上、開放感のある広い草地であること、おまけに幼児の大好きな滑り台もあるのだから、孫達には堪らない。大人が大して相手をしなくても、7歳、5歳、2歳の兄弟で楽しく遊んでいる。危険が少ない上に手が掛からないのだから有り難い。

そうしたあれやこれやもあってか、我々と似た様な幼児連れが良く遊びに来ている。先々週には、そんな幼児連れのお父さんと奇跡的な出会いがあった。尤も出会ったのは私ではなく、家内だったのだが…。

孫たちを遊ばせていると、我々と同じ3人の小さな子を連れたお父さんがやって来た。遊具がひとつしかない事と、それぞれの年齢が近いこともあって、6人は仲良く遊び出した。それを傍で見ていたそのお父さんと家内が、世間話をし始めた。暫くすると、その若いお父さんが、『もしかして、〇〇さんですか?』と家内に尋ねてきた。『そうです。〇〇ですけど?』と答えると、すかさず『△△です』とニコニコしながら名乗ってきた。

何という偶然だろう。孫たちの父親、つまり私の長男の幼稚園時代の友達だったのだ。長男は仕事でいなかったのだが、家内が幼稚園の保護者会会長をやっていたことがあり、うっすらと覚えていたらしい。幼稚園以来だから、凡そ30年ぶりなのに良く分かったものである。しかし、もっとビックリしたことがある。と言うのも、丁度その前の土曜日に、私と家内と長男の三人で、その△△君の話をしていたところだったのだ。こんな事ってあるんだ、といたく驚いた次第である。

驚いたと言えば、30年ぶりの再会をした次の週の土曜日に、同じ公園で出会った若いお母さんの話も衝撃的だった。新疆ウイグル自治区から日本に来ている彼女から聞いたのは、故郷での厳しい現実だ。彼女が話す中国政府による諸々の規制や取締は、私には理解し難いものだった。真偽のほどを確認する術を持ち合わせていなので、この程度の表現にとどめるが、ネットなどから漏れ聞こえて来る情報と大きな違いはない。恐らく、彼女の言っていたことは真実なのだろう。真実だとすれば、彼の地のウイグル人は本当に可哀そうだ。

ただ、話の内容は可哀そうではあるのだが、そうした話ができる今を満喫しているようにも見える。たどたどしい日本語で説明してくれる眼差しは真剣ではあるけれど、表情は軟らかい。思いのたけを聴いてくれる相手、それも中国人でない外国人を知らず知らずの内に捜していたのかも知れない。したがって、彼女にとっても良い出会いだったのではないか、と勝手に解釈している。勿論私も、そうした話が聴けて良かったと思っている。これも、外に出て、この公園に来たからこそ実現した出会いなのだろう。

前述の30年ぶりの出会いもそうだが、こうした貴重な話が聴けたのも、春の陽気に誘われて公園に出かけて来た者へのご褒美かも知れない。そう考えると、重いコートを脱いで出かければ、嬉しい出会いが待っていてくれそうな気がしてきた。きっとそうだ。ということで、さぁ皆さん、春だ、出かけよう!

【文責:知取気亭主人】

陽気に誘われて

Copyright(C) 2002- ISABOU.NET All rights reserved.