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知取気亭主人の四方山話
 

『お医者さんごっこ』

 

2018年5月16日

「お医者さんごっこ」と聞くと、甘酸っぱい子供時代の思い出が蘇ってくる方もいるのではないだろうか。ただ、勘違いしてもらっては困るが、私が言っているのは純粋な意味での“ごっこ遊び”である。 私は小さな頃から野山を駆け巡るのが大好きで、家の中での遊びとはトンと縁がなかった。したがって、“お医者さんごっこ”など、やった記憶が全くない。 第一やろうにも、医者に掛かったことが少なかった為、診療の真似をするまでの情報がなかったのだ。私の勝手な想像だが、私と同世代でお医者さんごっこをしたという人は意外と少ないのではないか、と思っている。

私が過ごしたお医者さんごっこ世代(3〜7歳ぐらいだろうか)は、今に比べると医学部が遥かに少なかったこともあり、医師自体の数も極め て少なかった。また、当時はまだ日本全体が貧しく、特に私が育ったような田舎では、少々の怪我や病気の時は常備薬で済ませ、余程 のことがない限り病院には行かなかったのではないかと想像している。とは言うものの、決して病気に罹らなかったわけではない。 私も、幼少の頃3度死にかけたことがある、と母から良く聞かされていた。ただ、記憶は全く残っていない。

病院に行った最初の記憶は、ナタで右手の人差し指を切り、ブラブラになった指を必死で握りながら、母と一緒に診療所に飛び込んだものだ。小学校入学前だったと思う。また、小学2年生ぐらいの時に、 左手の親指を石で潰し、爪がはがれ、何針か縫ったことがあった。どちらも傷跡は今なお残っているのだが、どうやって治療してもらったのか全く覚えていない。ところが、お医者さんごっこ世代を過ぎると、 病院での治療の様子も記憶に残る様になって来る。最初の記憶は、右足だったか左足だったか忘れたが、 怪我をした踵が化膿して、お尻にペニシリン注射を打たれたことだ。3年生か4年生の時だったと思うが、注射の痛みを鮮明に覚えている。どちらにしても、怪我ばかりである。

こうして我が身を振り返ってみると、治療をしてもらった記憶があるのは、ごっこ世代を過ぎたあたりからで、それ以前は、怪我をした記憶だけはあるのだがどんな治療をしてもらったのかは覚えていない。 右手の人差し指も左手の親指も、指半周ほどの傷が残っているから、麻酔を利かせて治療した可能性が高いのだが…。ただ、手術前の医者とのやりとりも飛んでいるから、激しい痛みと出血が 記憶中枢に悪さをしたのかも知れない。いずれにしても、お医者さんごっこ世代の、私の治療の記憶は怪しいものなのだ。ところが、一番上の孫娘(7歳)と年長さんの孫息子(5歳)の、 診療記憶が極めて鮮明であることを知って、驚いている。知ったきっかけは、彼らのお医者さんごっこである。

先月の下旬頃だったか、孫達に“ミズイボ”ができて、その治療の付添として皮膚科に行ってきた。元々、最初は一番上が小学校のプールでもらってきたものらしく、昨年の秋ぐらいから時々皮膚科に通っていた。 嫁の話だと、ミズイボの治療は極めて簡単で、ピンセットでつまんでむしり取り傷跡に絆創膏を貼る、 という原始的なものだという。簡単ではあるが、痛みもあり前触れもなくむしり取って行くから、小さな子供にとってはチョット衝撃的な治療法だ。そのミズイボが、先月下の二人に見つかった。

「恐らく泣き叫ぶから」という理由で、孫3人に大人3人の大所帯で行ってきた。診てもらうと、孫息子に多数見つかり、特に下半身に多い。 見つけにくい“タマタマの袋”の裏にもたくさんできているのが分かった。これを一つ一つピンセットで取って行くのだから堪らない。 当然、診察台の上で暴れ、泣き叫んでいた。看護婦と母親、二人に押さえつけられてむしり取られていく姿は、年端もいかない子供だけに痛々しい。一つ一つに絆創膏が貼られ、やっと治療は終わった。時間にして10分ほどだ。

それから家に帰り、暫く経った時だ。孫息子が突然玩具の聴診器を耳に当て、クマのぬいぐるみのお尻を診察する真似をし始めた。やがて、 私の所に聴診器を持ってきて、私にもぬいぐるみを診ろと言う。次は自分もだと言わんばかりに、自分に聴診器を当てさせ、「ハイ寝てください!」 と言いながら、私の横に寝転んだ。そして足を上げてお尻を見せる。その時やっと理解した。そうかこの子は、自分が受けた診療と治療を真似て、お医者さんごっこをしようとしているんだと。

それからは、生まれて初めてのお医者さんごっこを、孫三人と楽しませてもらった。勿論医者は私で、患者は孫息子と3歳直前の下の孫娘だ。 一番上の孫娘はママと看護婦さん役である。興が乗ってきたらしく、手書きで待合室の表札まで作ってしまった(写真-1参照)。

遊んで驚いたのが、孫息子の観察力だ。まず医者のすぐそばにあるイスに腰掛け、上半身を診察する。次に、治療用のベッドに寝て下半身を診察した後、 直ぐ治療に入る。治療が終わると、「これで終わり。またね」と声を掛けて、「次の方どうぞ」と次の患者を呼び入れる。この一連の動きを完全にコピーしているのだ。 そして、「絆創膏を剥がしてはダメですよ」という母親への注意も、真似をする。あの泣き叫びを見ていると、とてもそうした細かい観察は出来ていないと思うのだが、 あにはからんや、である。治療中の記憶が殆ど残っていない私とは随分と違う。痛かったとは思うが、それを遊びにしてしまうところを見ると、結構ポジティブに捉えているのかも知れない。

それにしても、子供は柔軟だ。発想力も豊かだ。こんな事でも遊べるんだ、と改めて再認識させられた次第である。再認識という意味では、 お医者さんごっこが子供に受け入れられる理由が分かった様な気がする。だって、やってみると結構楽しいんだよ!

【文責:知取気亭主人】

写真-1、ふすまに張られた手書き表札
写真-1、ふすまに張られた手書き表札
写真-2、アメリカフウ(?)の若葉
写真-2、アメリカフウ(?)の若葉

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