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知取気亭主人の四方山話
 

『〇それとも×?』

 

2018年7月4日

サッカーのワールドカップロシア大会が熱い。優勝候補が相次いで敗れる波乱の幕開けや、国際サッカー連盟(FIFA)ランキング下位チームの思わぬ活躍が、サッカーファンを魅了している。 そして、何と言っても日本中をヒートアップさせているのは、日本代表の活躍だ。テレビ中継が深夜ということもあって、試合の度に日本全体が熱帯夜状態、寝不足状態になっている。

フタを開けるまでは私も含め多くの国民が「頑張っても1次リーグ敗退が濃厚だろうな」と予想していただけに、日本代表の活躍は、失礼な言い方をすれば嬉しい誤算である。 しかも、2試合が終わったところで、日本が入ったHグループの1位につけていたのだから素晴らしい。なおかつ、全参加チームの中で下から2番目、グループ内では最も低い FIFAランキング(61位)でもあったのだから、日本中が湧きたっているのも無理はない。その上、最終戦までの2試合の戦い方も、世界から称賛されていたのだが…。

ところが、皆さんご存知のように、ポーランドとの1次リーグ最終戦が、一部のファンから酷評されていて、日本ばかりでなく世界のメディアやサッカーファンの物議を醸している。 日本の戦い方はスポーツマンシップに反する、というのが酷評する人たちの言い分だ。大方の予想を覆し、見事決勝トーナメント(以下、決勝T)進出を決めたのは立派だが、私も何となく後味の悪さを感じている。

同時刻に行われていたもう1試合のコロンビア対セネガルの試合経過をにらみながら、ポーランドに0対1と負けていたにも関わらず、最後の約10分間、攻めようともせずボール回しに徹した戦い方に、 決勝T進出を素直に喜べないでいる。嬉しさ半分、と言うのが正直な感想だ。海外でも国内でも賛否両論があり、「ルールに則った立派な決勝T進出だ」という肯定派の論調と、「イヤイヤ、 スポーツマンシップに反する」とこき下ろしている否定派が真っ向から対立している。そこで、このポーランド戦の戦い方は〇なのか、それとも×なのか、私なりに考えてみたい。

結論から言うと、立場によって判断は違う、というのが私の考えだ。立場とは、次に進める権利を得たチームの関係者とその応援団、次に進めなくなった相手チームの関係者と応援団、 そして純粋にその競技を愛するファン、の3つの立場である。それが分かり易いように、今から26年前の夏の甲子園で物議を醸した、松井秀喜選手への5打席連続敬遠という大胆な采配を振り返り、この3つの立場を説明してみたい。

1992年夏の甲子園大会の“星稜高校”対“明徳義塾高校”の試合で、その大胆な采配は行われた。若い人はご存じないかと思うので、簡単に説明するとこうだ。 大リーグでも活躍した松井秀喜選手は、当時石川県の星稜高校の4番で、全国的に知られた強打者だった。その星稜高校と対戦したのが、高知県の明徳義塾高校だ。 明徳の監督は、松井対策として全打席敬遠の指示を出し、1塁走者がいても、またノーアウトランナーなしの先頭打者でも徹底的に勝負を避けた。このため、 松井はこの試合で5度打席に立ったものの、1度もバットを振ることなく甲子園を去ることになってしまった(試合は、3対2で明徳の勝利)。

オラが県の高校を応援する石川県民は、恐らく、その殆どが「正々堂々と戦え!」の大ブーイングであったと思う。当時の私も勿論そうだった。今回1次リーグ突破を争ったセネガルが、 当時の石川県民と同じ感情を持ったとしても不思議はない。2日のネットニュースによれば、セネガルサッカー連盟(FSF)は、1次リーグ敗退の決着方法が納得いかないとして、 FIFAに「反則ポイント制」のルール見直しを訴えるとともに、日本代表の戦いぶりを非難しているという。さもありなん、である。

では、26年前に星稜高校に勝って次の試合に進むことができた明徳義塾高校の地元、高知県民はどうだったのだろう。そこは想定でしかないが、 次の試合に進む為の“ルールに則った立派な戦略の勝利だ”、と半数以上の人は肯定していたのではないかと思う。勿論、チーム関係者の多くがそうだったと思う。 今の、ワールドカップでの日本の応援団と同じ立場だ。「ルールに従って戦い、結果的に次の試合に進むことができたのだから、とやかく言われる筋合いはない」との理論も、何となくではあるが、理解できる。

ところが、純粋に高校野球を愛するファンは、こうした両県民が持つ“オラがクニ”といった郷土愛など関係ない。お互いが持てる力を発揮して力と力の対戦を見たいのだ。 甲子園球場に駆け付けた高校野球ファンは、圧倒的にそういう思いで見に来ていたのだと思う。ブーイングの大合唱と共に観客席からたくさんの物が投げ入れられた事実を見れば、 松井の全打席を敬遠した采配は、ルール上は認められていても、大多数の観客が不満を持っていたことは明らかだ。皆、正々堂々の戦いを観たかったのだ。 今、日本代表に向けられた関係者以外のブーイングの嵐は、高校野球ファンと同じ純粋なサッカーファンの声なのだろう。

私もどちらかと言えば、この26年前の高校野球ファンと同じ気持ちで、(録画で)最後の10分間を見ていた。スポーツ観戦を楽しむ者にとって、 贔屓のチームが負けることは確かに悔しいが、それ以上に悔しいのが、全力で戦っていない試合を見ることだ。今回のこの悔しさを挽回できるのは 日本時間の3日未明に行われたベルギー戦で勝利することだけ、と思っていたのだが、惜しくも2対3で逆転負けを喫してしまった。 しかし、FIFAランキング3位に冷や汗を掻かせた見事な戦いぶりは、ブーイングの嵐を鎮めるのに申し分なかったのではないかと思う。勿論、私の×が○になったのは言うまでもない。

【文責:知取気亭主人】

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