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知取気亭主人の四方山話
 

『違和感』

 

2018年7月11日

人は、他人が下した判断や行動が自分の考えと異なる場合、直感的に「何か変だな?」とか「何かおかしい」と感じることがある。いわゆる“違和感”と呼ばれるやつだ。自分が正しいと思った判断と異なるからだが、その違和感が高じると怒りさえ覚えることがある。つい先日、そんな激しい違和感を抱いた出来事があった。7日土曜日の午前中、テレビを見ていた時のことだ。

先々週の週末から梅雨前線が日本列島に停滞し、これに吹き込む南からの湿った空気によって前線の活動が活発になり、西日本を中心に豪雨が降り続き各地に大きな被害を出している。特に中国、四国地方を中心に甚大な被害が出ていて、NHKテレビでは、土曜日の朝早くから、被害状況を各地からの中継を交えて引っ切り無しに放映していた。私も気になり、点けっぱなしにして見ていた。そんな中、9時40分だったか10時40分だったか記憶は曖昧だが、気象庁の記者会見が始まった。

そして、気象庁の女性職員が豪雨の原因や状況を説明し始め、5分ほど経った時だっただろうか。テレビ画面の上端に、(正確ではないが)「横浜市神奈川区の病院で入院患者が相次いで中毒死した事件で、神奈川県警は元看護士の女性を逮捕した」とのテロップが流れた。すると、気象庁の会見がまだ途中なのに、突然臨時ニュースを読み上げる画面に切り替わってしまったのだ。被害は拡大しているさなかで、亡くなった人も安否が確認できない人も刻一刻と増えている危機的な状況だったのに、である。少なくとも西日本の殆どの人は、この豪雨の今後の予報に最大限の注意を払っていたにも拘らず、その一番大事なところが放映されず中断してしまったのだ。

確かに、横浜市の事件も話題をさらった事件ではあったし、多くの人が関心も持っていた事件だったことも否定はしない。しかし、事件が起こったのはおととしで、しかも被害者が増え続けている訳ではない。したがって、今被害を拡大させている豪雨に関する情報を中断してまで発表する緊急性はない、と考えるのが自然だろう。気象庁の会見が終わってからでも全く問題がなかった筈である。ところがNHKテレビでは、直前まで「これまでに経験したことがない豪雨」と盛んに注意喚起を促し、「今後とも十分な警戒が必要です」と訴え続けていたにも拘らず、専門家がその説明をしている最中に中断してしまったのだ。強烈な違和感を覚えるのは当然のことだろう。

一緒に見ていた娘も、私と同様に違和感を覚えたらしい。穿った見方をすれば、NHKはただただ他のテレビ局よりも一刻も早く看護師逮捕のニュースを流したかっただけ、なのではないだろうか。もっと言えば、豪雨災害が発生しているのは西日本で、NHK本社があり政治経済の中心である首都圏ではなかったからではないのか、そんなひねくれた考え方さえ口に出したくなるほど、違和感を覚えた出来事だった。

もうひとつ、強烈な違和感を覚えた出来事がある。「旧優生保護法」の下で行われた障害者の強制不妊手術が、ここにきて急にクローズアップされていることだ。この法律は1948年(昭和23年)に施行され、1996年(平成8年)まで適用されていたものだという。今年1月に宮城県の60代の女性が、強制不妊手術をされたことは違法だったとして、国家賠償請求を起こした事をきっかけに、全国的に実態の掘り起こしが進められているというのだが…。

初めてこのニュースに接した時、そんな理不尽な法律があったのだ、と思ったのは私だけではないだろう。どう考えてみても、おかしな法律である。人道的にあってはならない法律だ。そんな法律が平成の時代になっても生きながらえていたのが、俄かには信じられない。政治家や医師、弁護士、そうして法律学者は、一体何をしていたのだろう。そこに、強烈な違和感を持ってしまう。つい20年ほど前までこの非人道的な法律が適用され続け、問題が深刻化した原因は、国民の命や人権を守るべき立場にある彼らの不作為ではなかったのか、そんな思いを抱いてしまうのだ。特に、人権派を自認している国会議員が声を挙げなかったことが不思議でならない。

我が国は、先進国首脳会議(サミット)に1975年(昭和50年)の第1回から参加している。多くの国民は、「我々は世界の先進6カ国(2回目から7カ国)の一員である」との自信を持ち、サミットに参加していない国々に対し少なからず優越感を持っていたと思う。ところが経済以外でのその実態はと言うと、先進国と呼ぶには恥ずべき法律が綿々と生きながらえていて、障害者に対して冷たい、誠にお粗末な国だったのだ。非人道的な法律がつい20年ほど前まで生きていたとは、本当に恥ずかしい。

7月6日の北陸中日新聞朝刊によれば、確認されている強制手術を受けさせられた人は1万6,475人に上るというから酷い。しかも、共同通信の全国調査でその存在が確認されたのは、32の都道府県に残された5,090人分(石川県では126人分)で、全体の僅か3割に留まるという。国が法律で強制不妊手術を認めていたにも拘らず、国は記名資料の現存状況を把握していないという。恐らく大多数の人は、こんな蛮行に違和感を禁じ得ないと思う。ただ、違和感に留めていてはダメだ。やはり怒るべきだと思うのだが、皆さんはどんなふうに感じているのだろうか。 

【文責:知取気亭主人】

合歓の木 
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