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 −「CIM」− 測量技術は二次元から三次元へ
2017.08.24

 i-Constructionによる「ICTの全面的な活用」の推進により、測量技術も大きな転換期を迎えています。従来、点と線で地形を表現していた時代から、面で取得する、更に二次元から三次元で取得する時代となってきました。

 先日、国土交通省地方整備局が中心に開催している「ICT活用工事講習会(実践者クラス)」に参加してきました。ICT活用工事に従事している技術者を対象とした講習会ということで、三次元設計データ作成実習とUAVおよび地上レーザースキャナ(TLS)による出来形管理実習という、非常に実践的な内容でした。特にTLSについては、初めて機器を間近に見る受講者も多く、非常に注目が集まっていました。
 これまで、TLSは遺跡や文化財調査、構造物モデリング、災害調査等が主な用途で、土木測量に用いられるケースは少数でした。
 i-Constructionによる「ICTの全面的な活用」の一環としてこの春、新たに導入されたICT舗装工では、出来形計測にTLSを用いる事が標準となりました。また、国土地理院は、平成29年3月に地上レーザースキャナを用いた公共測量マニュアル(案)を制定しました。
 CIM、特に施工分野でのICTの推進により、UAV、TLSといった、三次元計測技術の導入が進み、より一般化していくものと予見されます。

 三次元による地形の計測手法について、この春に公開されたCIM導入ガイドラインにおいて、網羅的にまとめられています。今回は、「CIMガイドライン(案) 第1編 共通編」を参考にしながら、三次元地形計測手法について紹介していきます。

【参考資料】
CIM導入ガイドライン・CIMの運用に関する基準
http://www.mlit.go.jp/tec/it/ (国土交通省HP)

(1)地形モデルの計測手法の守備範囲と特徴
 地形モデルの主な計測手法として、2箇所以上から撮影した写真から地物の三次元の形を計測する「写真測量」と、レーザー測距装置を利用した「レーザ測量」に大別されます。それぞれ、計測方法・高度の違いから、計測精度、面的な密度及び計測可能範囲に違いがあります。


【CIM導入ガイドライン(案) 第1編 共通編より】

 「写真測量」には、旧来より存在する有人航空機に設置したカメラを利用した「空中写真測量」とUAVにカメラを搭載した「UAV空中写真測量」等があります。
 「レーザ測量」には、レーザー測距器とカメラを有人航空機に搭載した「航空レーザ測量」、レーザー測距器とカメラを車両に搭載した「車載写真レーザ測量」、レーザー測距器をUAVに搭載した「UAVレーザ測量」、レーザー測距器を地上に設置して計測する「地上レーザ測量」に区分されます。

 各測量手法には、位置精度、点群密度、経済性、樹木伐採の必要性等、得手不得手があることから、目的に応じて測量手法を使い分ける、また組み合わせることが重要となります。
また、面的な三次元計測手法では、コントロールポイントとなる境界線や構造物のエッジなどピンポイントでの測量には向いていません。例えば、用地境界や既設の水路構造物の底高計測には、従来からのトータルステーションやレベルでの計測を組み合わせる必要があります。

(2)写真測量
[1].空中写真測量
 「航空写真測量」ともいわれ、有人の航空機から撮影した写真を使用して、広域の地理・地形情報を精密に抽出する技術です。
 近年はデジタルによるマッピングが主流となり、紙地図への出力だけでなく、GISの基盤地図として大いに利活用されています。
 一般的には、地表の垂直写真を飛行コースに沿って60%〜80%ずつ重複させながら撮影した航空写真と地上の位置関係を詳細に求め、写真上での像の違いを立体的にかつ精密に測定することによって正確な3次元計測、地形図の作成が可能となります。

メリット ・上空から計測するため、地上から立ち入れない区域のデータも取得できる。
・上空で撮影を実施することにより、広範囲に計測を実施することが可能。
デメリット ・上空から樹木や構造物などにより遮断される部分は取得できない。
・地上付近より撮影する技術に比べ、測量精度が低い。


【国土地理院HPより】

[2].UAVを用いた空中写真による三次元点群測量
 UAVに搭載した市販のデジタルカメラで撮影した連続写真を、専用のソフトウエアで画像解析を行うことで、三次元点群データを作成することができます。
 写真は、空中写真測量と同様に飛行コースに沿って80〜90%ずつ重複させながら撮影します。画像解析により各写真の特徴点抽出と写真間の対応付けを自動的に行うことで、カメラ位置(X、Y、Z、Yaw、Pitch、Roll)を推定し、ポイントクラウドとよばれる、三次元座標をもった点を大量に得ることができます。有人の空中写真測量と比べ、低空で撮影した高解像度画像を用いることから、より詳細な地形を得ることができます。また、機体や解析ソフトが比較的安価なため、ICTの活用工事の起工測量、出来形計測に標準的に活用されています。

メリット ・局所的な範囲の地図作成が得意である。
・人が立ち入れない箇所でも、計測が可能。
デメリット ・UAVの落下に対する安全の確保が必要。
・草木が存在している場合にはその下の地面を撮影できないため、標高を取得できない。

(3)レーザ測量
[1].航空レーザ測量
 航空レーザ測量は、航空機にレーザースキャナー、カメラ等を搭載して、空から面的に点群データ、写真画像を取得する手法です。GNSS受信機、IMU(慣性計測装置)装置を同時に搭載することで、レーザ光の位置と高さを算出することが可能となっています。
 レーザ測量は、樹木があっても樹木下の地表面のデータを得られる点が、写真測量との大きな違いといえます。

メリット ・上空から計測するため、地上から立ち入れない区域のデータも取得できる。
・樹木があっても、葉や枝の隙間をレーザーが通過することから、地表からの反射波を記録し、フィルタリング処理を行うことで、地表面を再現できる。
デメリット ・上空から構造物などにより遮断される部分は取得できない。
・水域は計測できない。


【国土地理院HPより】

[2].UAVレーザ測量
 UAVレーザ測量は、UAVに小型のレーザースキャナを搭載して、空中から面的に三次元で地形を計測する手法です。航空レーザ測量と同様に、GNSS/IMU を搭載し、高精度な計測が可能となっています。
 新しい技術で、非常に注目される計測手法であるものの、計測装置(小型レーザースキャナおよびGNSS/IMU)が高価(数千万)であることが課題とされています。近年、比較的安価(数百万)な小型レーザースキャナ-が発売されたこともあり、実用化に向けた精度検証が進められています。  

メリット ・レーザーを利用するため、フィルタリングと組み合わせることで樹木が存在する状況で地面の計測可能。
・十分な日照が得られない場合でも計測が可能。
・局所的な範囲の地図作成が可能。
・人が立ち入れない箇所でも、計測が可能。
デメリット ・UAVの落下に対する安全の確保が必要。
・レーザースキャナ、IMU/GNSSが高価である。
・水域は計測できない。

[3].地上レーザ測量(TLS)
 地上レーザ測量は、地上でレーザースキャナーを用いて 3 次元点群データを取得する手法です。特定の位置に機器を据え付け、前方に断面を測量するようにレーザ光を照射すると同時に、機器本体を回転させることにより、周囲の地形・地物までの方向と距離を面的に観測します。
 平成29年3月に追加されたICT舗装工の出来形管理においては、TLSを用いた高精度・高密度計測(表層表面 鉛直規格値±4mm)が標準となっています。

メリット ・機器性能の向上により、照射距離が500m以内の場合、2〜3cm程度の位置精度(地図情報レベル250)が得られるようになってきた。
・計測の準備作業が軽減でき、また計測時間も短いために測量作業が大幅に効率化する。
・測量結果を三次元CADで処理することにより、鳥瞰図や縦断図・横断図など、ユーザの必要なデータが抽出できる。
デメリット ・計測箇所をピンポイントに計測できない。
・取得データの計測密度にばらつきがある。
・機材設置の移動が多くなると、その都度、標定点の計測が必要となるため非効率になる場合がある。


【右図:国土地理院 地上レーザースキャナを用いた公共測量マニュアル(案)より】

[4].車載写真レーザ測量(MMS)
 車載写真レーザ測量は、車両にレーザースキャナー、カメラ等を搭載し、連続的に位置、姿勢を計測することによって、道路周辺の正確な3次元情報(座標点群)と、これに重なる映像情報を同時に取得します。
 道路や河川堤防の三次元地形データの取得に適しており、詳細設計に用いる高精度の地形測量にも活用できる計測手法として期待されています。また、工事後の完成図書を作成するための三次元計測や維持管理面で日常の構造物点検・巡視に活用できるなど幅広い分野で採用されつつあります。最近では、施工中の現場内を走行し、出来高管理に用いる試みもなされています。

メリット ・計測調査で交通規制を行う必要がない。
・トンネル内など上空から計測できない部分に対しても有効。
・詳細設計でも使用できるデータ。
・三次元鳥瞰図(色付き点群データ)を迅速に作成することができる。
デメリット ・山間部のGNSS受信状況が悪い区間や未舗装道路は不向き。


【CIM導入ガイドライン(案) 第1編 共通編より】

[5].航空レーザ測深(ALB)
 従来の航空レーザ測量(近赤外レーザ)では困難であった海底・河床の地形を取得できる計測方法です。水中を透過するグリーンレーザと近赤外レーザを同時に照射することで、水底の地形が把握でき、陸域と水域の連続的な高精細・高精度な三次元地形の取得が可能です。
  海岸・海洋分野、河川分野などで実用的に活用されつつあります。昨年度、福井県九頭竜川では、全国で初めて、河川の定期縦横断測量にALBを本格的に活用するとの報道発表がありました。

メリット ・海域及び河川において、上空からの計測により水部内の面的な地形データを得ることができる。特に浅い水域において船舶による計測ができない範囲の計測ができる。
デメリット ・計測域における水質状況(濁度)や波浪の影響により、データ欠損が起きることがある。

【CIM導入ガイドライン(案) 第1編 共通編より】

(4)まとめ
 近年、ICT技術の発展に伴い、非常に多様な三次元地形計測手法が実用化され、また日進月歩で進化しています。それぞれ、得手不得手があるため、目的や現場条件、計測精度、予算等に見合った、適切な計測方法を提案することが、我々土木技術者には求められています。
 また、異なる手法で取得された三次元点群データや従来のトータルステーションやレベルで観測した点および線のデータを、利用目的や用途を踏まえ、効率よく編集する手法・ノウハウも重要となります。さらに、膨大な点群データの情報を、土木ビックデータとして、より高度に活用していくことも、今後の課題と言えます。

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