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第四紀・・・地質屋であれば当然知っていますよね。高校の地学でも習う地質年代の名称です。この第四紀の定義が変わったのです。
他の地質時代が生物相の大幅な変化(特に大量絶滅)を境界として定められたのに対し、第四紀は人類の時代という意味で決められた。したがって、古人類学の進展に伴い次々に古い原人が発見されるとともに第四紀の始まる年代も変化していった。現在ではヒト属の出現を基準とし、地質層序や気候変動を併用して決定している。
「第四紀」は「人類の時代」ともいわれ、地質学上の時代区分のうち最も新しいじたいです。この時代の始まりが77万年さかのぼり、258万年前に変更されることになったのです。
「はぁ・・そうなんですか〜」と興味のない人もいますが、地質を気にする者にとっては結構大事件なのです。地学の教科書や地質図の修正が迫られるのはもとより、「第四紀」の用語は活断層の定義や火山の分類などにもかかわっていて様々なところで修正が必要となってくるのです。
ではなぜ変わったのでしょう。地質学を学んだ人なら自明ですが、地質学の時代を決める“物差し”は主に生物と考えられてきました。いわゆる示準化石の存在です。例えば生物が多様化した約5億4000万年前以降は「古生代」「中生代」「新生代」の3つに大きく分けられています。ここには示準化石が大きな役割を果たし、古生代は三葉虫、中生代は恐竜やアンモナイト、新生代は人類を含む哺乳類が栄えた時代とされているのです。
「新生代第四紀」。では「代」と「紀」は何が違うのでしょうか。気候変動や地磁気の変化などで「代」をさらに細分化したものが「紀」なのです。第四紀は地球全体が寒冷化し、氷河が発達する氷期と暖かい間氷期を繰り返すようになったことが特徴で、これまでは181万年前に始まったとされてきました。
しかし近年、酸素の同位体を使った気候変動の研究が進展し、寒冷化はより前から始まっていることが分かり論争になったのです。10年以上、議論が続いていましたが、結論を出したのが国際地質科学連合。2009年6月に定義変更を決めたのです。
なぜこんなにも長引いたのか。いろいろな意見があったことも事実なのですが、実は日本では第四紀の地質は広く分布していますが、地質学の進歩を担ってきた欧米にはもともと第四紀の地層が少なく、地質学的にあまり重要視されていなかったようなのです。
日本地質学会などはシンポジウムを開いて対応を協議し、国際的な定義の受け入れ方針を確認しました。今後、日本学術会議で正式に決め、国内での普及を図るわけですが、同会議が学術用語の定義をまとめるのは、惑星から降格した冥王星の分類の訳語を2007年に「準惑星」とした時以来となります。
これに伴い地質図を発行している産業技術総合研究所地質調査総合センターは、新たに発行する地質図については4月以降に新しい基準を反映させるとし、データベースは順次見直していくとしています。ただ、すべてのデータの修正を終えるまでには数年かかる見通しのようです。
実務で我々技術者の関わっているのは、ダム、トンネルなどは別としてもその他は多くの現場で第四紀の地質と向かい合います。その中で今回の変更が最も影響してくるのは、基準や指針の中に記載されている「第四紀」、「活断層」に関わる様々な定義です。
例えばダム提体や原発などの重要構造物の選定にかかわる基準や耐震設計指針などには、活断層や第四紀という言葉が出てきます。活断層の場合はその定義にもよりますが、今回の変更を機に、地質時代と土木の基準が見直しされてくる可能性はあり、その根本的な知識として知っておく必要性があるでしょう。
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