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 ディスプレイに繋がないグラフィックボード 〜なぜ、繋ぐ必要がないのか?〜
 

 【グラフィックボード】とは、パソコンに搭載されているグラフィック処理専用のボード(基盤)です。グラフィックボードは『グラボ』や『ビデオカード』とも呼ばれますので、みなさんも一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか?

 下の写真はグラフィックボード(ASUS GRX650-E-1GD5)です。このようなボードがパソコンには搭載されています。

 グラフィック処理のときに高い熱が発生するため、熱対策として大きな冷却ファンがつけられています。このファンがなければ、グラフィックボードが熱で溶けてしまうからです。

 一般的に、グラフィックボードはパソコンでフルハイビジョンの動画再生や高画質なゲームの描写などのために使用されています。また、3D-CAD設計などの業務では高いグラフィック性能が要求されるので、グラフィックボードは必須となっています。

 そういった用途に使われるようになったおかげで一昔前と違い、今ではグラフィックボードを搭載しているパソコンの販売は珍しくはなくなってきました。

 電気量販店やパソコンショップで販売されているパソコンのスペック表を見てみますと、「NVIDIA社の○○○を搭載」や「GeForce ○○○搭載」などが記載されているパソコンがあります。

 これらが記載されているパソコンにはグラフィックボードが搭載されています。この記事を見ている方のパソコンにも、グラフィックボードが搭載されていると思います。

 下の左端の写真は、一般的なタワー型のパソコンです。中央の2つは、パソコンの側面の蓋をとった写真と、グラフィックボードの確認ために拡大した写真になります。そして、右端の写真は、パソコンを後ろから見た写真です。

 中央のものがグラフィックボードです。ちなみに、ノートパソコンではグラフィックボードを物理的に搭載できませんので、ノートパソコン専用のものがマザーボードに組み込まれています。

 右端の写真の四角の部分がディスプレイと接続するグラフィックボードの出力端子になります。

 グラフィックボードの出力端子にディスプレイを繋ぐこともできますが、右端の写真ではグラフィックボードにはさしておりません。

 なぜか?

 それがこの記事の主題になってきます。グラフィックボードをグラフィック処理以外で利用するためです。最近では様々なところでこのような試みが行われています。


 先に述べたように、一般の人でもグラフィックボードを使用する機会が増えていますので、グラフィックボードは量産されており、その価格の幅は広くなっています。

 グラフィックボードの価格は、主にグラフィックボードのコア数とメモリサイズに依存しています。コアとは計算する機構です。コアの数が多いほど一度に多くの処理ができます。メモリサイズは、グラフィック処理の作業するための領域です。グラフィックボードのメモリはパソコンのメモリとは少し違いますが、やっていることはほぼ同じです。

 下の表は、現行のグラフィックボードのいくつかをピックアップして価格、コア数とメモリサイズを調べたものです。(2014年4月に調査)

チップの型番 価格 コア数 メモリサイズ(GB)
K6000 約60万 2880 12
GTX 780 約8万 2304 3
GTX 660 約2万 960 2
GTX 650 約1万 384 1

 価格は、NVIDIA社のチップを用いたグラフィックボードの価格を示しています。NVIDIA社はそのチップを製造している世界的に有名な企業です。

 表からコア数とメモリサイズが増加するにつれて、価格も増加していることが分かります。

 たとえば、K6000を搭載するグラフィックボードは、3D-CAD設計などの業務用途を対象とした人向けでコア数とメモリが多く、価格は数十万台になります。このクラスになると、多量のコア数とメモリサイズだけでなく、信頼性を上げるために様々な技術が組み込まれています。

 一方、GTXのチップが搭載されたグラフィックボードは、一般の人を対象としたグラフィックボードなので、コア数とメモリサイズはK6000 より低いですが、数万円台と安価になってきます。

 さて、上の表の「コア数」に注目してみます。

 CPUのコア数と比べると非常に多いことがわかります。

 例えば、「インテル、入ってる」で有名なインテルのCPUには2から6のコア数が搭載されています。

 ですが、グラフィックボードのコア数は、安価なグラフィックボードでさえも384コアも搭載しています。

 グラフィックボードでは、グラフィック処理を多数のコアで並列に実行できます。

 CPUでは2〜6並列でしか処理できないため、CPUだけで画像や動画を処理しようとするとスムーズに映像がディスプレイに表示されません。

 ゆえに、膨大なグラフィック処理をスムーズに行うために、グラフィックボードが必要となるのです。

 グラフィックボードは、汎用的な能力をもったCPUとは異なり、グラフィック処理に特化しているので、汎用性をもたせるための機構が不要です。ですから、多くのコアを搭載させることが可能となりました。

 上の図は、CPUのみのパソコンとグラフィックボードを搭載したパソコンの比較を示したものです。

 コア数にこれだけの差があるのです。


 研究者と解析の専門家たちは、CPUとは比べ物にならないほどのコア数をもち、安価でもあるグラフィックボードに目をつけました。

 グラフィックボードをグラフィック処理以外の時間がかかる様々な処理に利用することで、処理時間の短縮化(高速化)ができるのではないかと考えたのです。

  

 上の図をご覧下さい。

 左の図は、グラフィック処理をするための概念図です。この場合のグラフィックボードは、ディスプレイに表示するためのグラフィック処理として利用されます。

 ですので、グラフィックボードは、グラフィック処理の結果をディスプレイに送るためにディスプレイと接続されています。

 右の図はグラフィック処理以外で使用されるときの概念図となります。グラフィックボードはディスプレイとは接続されず、パソコンとだけ接続されています。

 グラフィック処理以外にグラフィックボードを使用するので、ディスプレイと接続する必要がないのです。先程のパソコンの写真は、そのためにディスプレイと接続していませんでした。

 グラフィックボードで計算した結果はCPUやメモリに送られます。

 現在では医療、金融や流体力学などの分野で、グラフィックボードはグラフィック処理以外の目的で使用されています。最近のスーパーコンピュータではグラフィックボードが搭載されたものもあります。

 それだけグラフィックボードは凄い能力をもっているのです。

 詳細は、グラフィックボードの応用事例として次回で述べていこうと思いますが、なんと100倍以上の高速化ができる計算手法もあります。

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