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 コンピューターの頭脳CPUの進化(製造技術編)
 

 家電量販店だけでなく、通信販売やインターネットショップなどパソコンを販売しているお店では、各パソコンのスペック表が提示されています。 そして、その表にはCPUという欄が必ずあります。 そのCPU欄を参考に購入の有無を決めることも珍しくありません。

 パソコン好きな人達は新しいCPUが発売されるたびに、以前のCPUよりどれだけ性能がよくなったのかを実際に確認したりします。

 なぜ、CPUがこんなに重要視・注目されるのでしょう?

 それはCPUがコンピュータの頭脳だからです!


図1.実際のCPUチップ
(写真内の赤枠がインテル社のCPU(Core2Duo)のチップです。この1円玉より小さいチップでほとんどの処理を行っています。CPUカバーを上手く外すことができなかったため、チップに銀色のカバーが残ってしまいました。)

 今回から数回にわたりCPUの進化についてお伝えしようと思います。CPUはコンピュータの頭脳と言われるだけあり、その中身は非常に複雑で多くの装置が搭載されています。 そのため、CPUは様々な局面で進化があります。 今回は、それら中でもCPU製造技術の進化についてお伝えしたいと思います。

 CPUの正式名称はセントラル・プロセッシング・ユニット(Central Processing Unit)であり、日本語では中央処理装置と呼ばれます。近年の有名なCPUといえば、「インテル入ってる」でお馴染みのインテル社が開発・製造しているCore iシリーズになります。 このシリーズはデスクトップパソコンやノートパソコンを対象としたCPUです。

 とはいえ、CPUはパソコンのみで使われているわけではありません。
 スマートフォン、デジタルカメラ、医療機器、航空機、自動車、洗濯機、冷蔵庫などにもCPUが搭載されています。 これらに搭載されているCPUは、国外ではARM社、サムスン社やアップル社、国内ではルネサスエレクトロニクス社などが開発・製造をしています。

 ちなみに、スーパーコンピュータにもCPUは搭載されており、京で使われているCPUは富士通社が開発したものです。 外国のスーパーコンピュータの多くはインテル社の高性能CPUを利用しています。

 少し話が反れてしまいましたが、CPU製造技術の進化を見ていきましょう。

 現代のCPUは、半導体上にCPUの回路を実現します。このときに重要なのはプロセスルールと呼ばれるものです。 (プロセスルールは製造プロセスとも呼ばれます。)パソコンやCPUのアピールとして「○◯nmプロセス採用」などと記載されている場合もあります。

 プロセスルールとは回路内の配線幅のことです。例えば、図2のような回路を半導体上に作成した場合、緑ラインの幅(赤丸内の矢印間)がプロセスルールとなります。 黄色の図形は演算回路ですが、この内部にも緑ラインと同じ配線が山程あります。


図2.半導体上に実現された回路例

 なぜプロセスルールが重要なのかというと、プロセスルールが小さい程、同サイズの半導体に多くの回路を配置できるからです。 したがって、プロセスルールの歴史を見ることでCPU製造技術の進化を確認できます。


図3.インテル社のプロセスルールの歴史

 図3はインテル社の初期のPentiumから最新のCore i7までのプロセスルールの変化を示しています。 プロセスルールは、約2年間隔でコンスタントに、直前の70%前後まで小さくなっています。 これはムーアの法則に則して小さくなっています。

 最新のプロセスルールは14nm(ナノメートル)です。 そして、このプロセスルールを利用したCPUのチップサイズは122.4mm2とのことです[1].122.4mm2のチップに14nmで配線すると言われてもあまり直感的ではありませんね。 身近なスケールに置き換えてみましょう。

 例えば、7mmのボールペンで線を書く場合、東京ドーム約654個分の面積に線を書くのと同じなのです。 なんとも気の遠くなる作業と思いませんでしょうか?そして、122.4mm2という小さな面積に同量の配線を行うという技術にも驚かされます。

 図3のグラフでは、プロセスルールは順調に小さくなっています。 しかし、この成長を続けるために回路の作成方法や材料の変更など多くの研究と努力が行われてきました。

 将来的にプロセスルールはどうなるでしょうか?

 2016年以降も同じような流れで小さくなっていくのでしょうか?

 14nmの次のプロセスルールは10nm程度(=14nm☓70%)となります。 まだ世には出ていませんが、各半導体メーカーは10nmのCPUにとりかかっているレポートがあります。

 さらに次のプロセスルールに当たる7nmは、2015年7月にIBM社が試作として実現したと報告がありました[2].将来的に7nmプロセスルールを採用したCPUが登場することは間違いがなさそうです。 このIBM社の報告は、半導体の最先端を走っているインテル社より先に発表されたため、半導体業界で非常に驚かれ、色々な所で盛り上がりました。

 14nmから3世代先となる5nmの実現は技術的に非常に難しく、プロセスルールの限界ではないかとも言われています。それは、プロセスルールが電子レベルに近づき、配線から電流が漏れてしまうからです。 そのため、各半導体メーカーで5nmのプロセスルールに関する実験・研究が行われています。

 今回はCPUの製造プロセスの観点からCPUの進化をお伝えしました。

 次回は、プロセスルールの成長に伴うCPUの構成の変化についてお伝えしたいと思っております。

[1] ANANDTECH, http://www.anandtech.com/show/9505/skylake-cpu-package-analysis
[2] IBM, http://www-03.ibm.com/press/us/en/pressrelease/47301.wss

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