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 動作周波数からマルチコアへ 〜動作周波数による性能向上の終結〜
 

 前回の記事では、2003年以降、プロセスルールは小さくなっている一方、CPUの動作周波数は向上していないとお伝えしました。 今回は、なぜCPU製造会社が動作周波数の向上を目指さなくなったのかについてお伝えしようと思います。

 インテル社などのCPU製造会社が動作周波数の向上からマルチコアによるCPU性能の向上へシフトした理由は、CPU稼働時に発生する熱の温度が高くなり、排熱処理が困難になってしまったからです。

 CPUを稼働させるためには当然ですが電力が必要となります。CPUで消費される電力(消費電力)は熱に変換されて取り除かれます。

 そのため、パソコンに搭載されているCPUには排熱するために、図1のように大きなファンが取り付けられています。

 
図1 CPUのファン

 CPUの消費電力は動的消費電力と静的消費電力の2種類に分けることができます。 そして、動作周波数に関係するものは動的消費電力となります。静的消費電力に関しては専門的な知識が必要ですので、今回は割愛させていただきます。

 さて、この動的消費電力ですが動作周波数だけでなく、電圧とトランジスタも絡んできます。 トランジスタとは半導体素子であり、誤解を恐れずに言えば電気のON/OFFみたいなものです。 ちなみに、Intel Core i7のトランジスタ数は十数億個となっています。

 以下の式は、1つのトランジスタにおける動的消費電力を算出するためのものです。

 CPUの動的消費電力 = α × トランジスタの負荷容量 × 電圧2 × 動作周波数

 ここで、αはトランジスタのON/OFFに切り替わる確率です。 これは実行するアプリケーションやソフトウェアによって変わります。 トランジスタの負荷容量はCPUの製造時に決定されるため、なかなか変更することが難しい項です。

 それらは比例関係となっており、動作周波数を向上させるためにはCPUに供給する電圧を上げる必要があるのです。

 CPUの性能向上を図るために動作周波数を向上させた場合、電圧も同時に上がるため、先の式から動的消費電力は非常に増加してしまうことが分かります。

 
図2 動作周波数の推移

 図2は、1993年から2010年までの動作周波数の推移を示しています。 2003年までは躊躇うことなく動作周波数が向上しています。 同時に、これは動的消費電力がとんでもなく増加し、CPUが発する熱の温度も上がっていることを示しているのです。

 そして、2003年でついにCPUの熱を排熱することができなくなり、動作周波数の向上を諦めたのです。

 実際に、インテル社は2003年の時点でさらに動作周波数が高いCPU(Pentium 4)を開発していましたが、排熱問題を解決できなかったため開発は中止となりました。

 しかし、CPU製造会社はCPU性能を上げていかなければ商売になりません。 そこで、動作周波数と電圧を下げて、演算するユニット(コア)を複数搭載するCPUを発表しました。

 マルチコアCPUの誕生です。

 動作周波数と電圧を下げることで発熱を抑え、コアを複数搭載することでCPU全体の性能を向上させました。

 2003年以降、動作周波数の向上が止まったのは、このような理由からなのです。 そして、CPU製造会社は搭載するコア数を増加させる方向に舵を切ったのです。

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