|
|
 |
2019.08.29 |
この春より、准教授となられた石川工業高等専門学校(以下、「石川高専」という) 環境都市工学科 新保先生に、「地震時の土構造物の破壊に関する研究」や「防災すごろく」などのお話を伺いました。
いさぼうネットにも関わりのある分野にて、どのような研究や教育が行われているのか興味があるところです。
∇新保先生プロフィール
https://researchmap.jp/T-shimbo/
――准教授になられた抱負などありましたら、お聞かせください。
新保准教授:
これまでよりも、より地域に開かれた教育研究に力を入れていきたいと考えています。
例えば、防災教育のために「防災すごろく」を交通計画の先生と共同で作成しました。地震のときなど、日ごろからどう逃げるかを考える必要があります。例えば、津波に関しては高台への避難が基本ですが、道が混雑していた場合などを想定して、普段から、2番手のルートまで、考えておくことが大事です。
「防災すごろく」には、交通渋滞などを考慮した内容が含まれており、みんなで協力して、グループで相談しあうようになっています。
大人子供関係なく、楽しみながら防災すごろくを通して避難経路について学んでほしいという願いを込めています。
また、初学者、知らない人に「怖い」という情報を口で言ってもなかなか伝わりづらい部分があります。そこで、IoTやICTを絡めた見せ方として、VR(仮想現実) 、AR(拡張現実)を使って災害について知識を広めて頂きたいと考えています。
――最近の学生は、どうですか?
新保准教授:
自ら外部のコンテストに参加したいというモチベーションの高い学生が増えてきたと感じます。夏休み中もコンテスト用の模型作りをしていたり、自由研究を実施していたり、活発に活動しています。学内に目を向けるだけではなく、外に目を向けてくれるようになってきて、とても良いと思います。
――新保先生の具体的な研究内容について、教えてください。
新保准教授:
- 地盤破壊の数値解析
もし壊れたとしても被害がないように壊し方を制御するフェールセーフという考え方があります。ものがどう壊れるかが分かり、よりリアリスティックに表現できれば地盤破壊に対してもそれが実現すると考えています。そのための新しい数値解析手法を研究しています。
- 耐震防災、盛土の地震時の変形の解析
- VRの活用研究
とっかかりは落石です。落石現場は、危険も多いです。現地に行かなくても会社にいながら検討できないか、
という相談から、VR上で落石のシミュレーションすることを始めました。
VR上で直接現地を見ながら検討するということが可能になり、現地に行くのも時間も取られないということだけではなく、現場に行けば危険なことも多く、それを回避したり、有能な高齢技術者などにも活用できたりするのではないかと期待しています。
――4月に地盤破壊に関する研究で、科学研究費が獲れたそうですが、どのような内容でしょうか?
新保准教授:
「Peridynamicsを用いた進行性破壊予測の破壊力学的イノベーション」というテーマで文部科学省: 科学研究費補助金(基盤研究C)を獲得することができました。
「Peridynamics」という物の破壊を表現する数値解析手法は、粘土や砂などの地盤の材料に適用するためには不十分なところがあります。そこを当補助金で研究しています。解析プログラムの高度化や実験の再現解析をとおして、どのような条件でどのような壊れ方をするのか、関係性をみつけたい。壊れ始めから崩壊後までを一貫して表現できることに期待しています。
将来的には、豪雨時や地震時に盛土や河川堤防が崩れるといったこところまでもっていきたいと思っています。
――苦労している点は?
新保准教授:
数値解析手法を検証するには、実物実験とまではいかなくても、実験などと比較して検証する必要があります。大きな土層(数メートルクラス)になるとなかなか実施できず、その点は苦労しています。また、1回やればよいわけでもなく、その点も悩みどころですね。
――最後に、石川高専の特徴や魅力などを教えてください。
最近では、女子生徒も増え、男女関係なく環境都市分野(土木)などを学んでいます。授業・実験実習だけではなく、コンテスト、部活(北陸地区高等専門学校体育大会《男女総合優勝》14連覇達成!)も活発に行っているのは石川高専の良いところだと思います。
最近は土木以外にも、情報セキュリティに係る内容やドローンを使ったプログラミングなどのIoT、ICTを交えた情報系のカリキュラムにも力を入れており、授業に取り入れています。国土交通省が推進するi-Constructionでは、情報系の知識が必須なので、それを学んでから卒業してもらいたいという思いがあります。
石川高専の良いところは、就職率が100%という点だけではなく、(石川高専に限った話ではありませんが)中学卒業後から、博士号や修士号を持った先生に学ぶことができる点だと思います。高度な専門分野に触れることができるという通常の高校にはない特徴があります。
一方で、石川高専は単独高専では国の科学研究費の採択率は全国のTOPです。教員が研究にも力を入れているからこそ学生にも最新の研究成果などを教えることができて、研究成果を教育に還元できているのだと思います。この点も石川高専の良いところだと思います。
∇石川工業高等専門学校 環境都市工学科
https://www.ishikawa-nct.ac.jp/dept/civil.html
以上、大変勉強になりました。ご多忙中にも関わらず貴重なお時間を頂き、ありがとうございました。