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2026年1月20日、電子機器などの「防水・防塵」の基準となるIPコード(電気機械器具の外郭による保護等級)のJIS(日本産業規格)が、23年ぶりに改訂されました。
2003年から使われてきたJIS C 0920は後継規格のJIS C 60529へ姿を変え、新たな保護等級が追加されるとともに、国際規格 IEC 60529と一致するよう変更されました。この改訂により、日本企業が海外市場で製品を展開しやすくなることが期待されています。
一方で、私たちが日頃手にするスマートフォンやデジカメなどの電子機器などには、当たり前のように「IP65」「IPX8」といった記号が書かれていますが、その読み方や意味をご存知でしょうか。
今回は、このIPコードや、今回の改訂で何が変わったのかをご紹介します。
「IP65」や「IPX8」など、「IP」とそれに続く2桁の数字(必要に応じて、さらに1〜2文字の英字が追加される場合もあります)をまとめてIPコードと呼びます。
詳細は、国際規格 IEC 60529によって定められており、日本ではその対応規格として JIS C 0920が長年用いられてきました。日本独自の付属書もありますが、両者の内容は基本的に同一で、JIS C 0920は IEC 60529を国内向けに整合化した日本版規格といえます。詳細は後ほどとなりますが、今回の改定で、このJIS C 0920が後継規格のJIS C 60529に変わりました。
IPコードの見方と意味
IPコードは、例えばIP65のように「IP」とそれに続く2桁の特性数字(必要に応じて追加の英字)」で構成されており、電気機器がどの程度外来固形物(ほこり等)と水の侵入から保護されているかを表しています。また、試験を行っていない場合や省略する場合などは数字ではなく「X」 ※2が用いられます。
■第一特性:外来固形物に対する保護等級(粉塵等級)
IPコードの1つ目の数字は、ほこりや砂などの固体が機器の中に入り込まないようにする度合いを表しています。数字は0〜6の7段階で、数字が大きいほど侵入しにくいことを示します。
■第二特性:水の侵入に対する保護等級(防水等級)
IPコードの2つ目の数字は、水の侵入をどの程度防げるかを示すもので、0〜9の10段階で評価されます。今回の改訂では、この上限となる保護等級9が新たに追加されました。この背景には、医療機器や食品工場のように厳しい衛生管理が求められる現場では、高圧かつ高温の水による洗浄が一般的でありながら、従来の防水等級では十分に評価できなかった事情があります。今回追加されたIPX9では、80±5℃の熱水を衝撃力0.9N〜1.2Nで毎分14〜16リットルという強い勢いで噴射し、内部に影響が生じないかを確認します。これにより、過酷な条件でも安全に使用できることを示せるようになりました。
防水等級は、数字が大きいほど性能が高いように見えますが、必ずしも上位互換になるわけではありません。例えば、等級8(IPX8)では水没には耐えられても、勢いの強い噴流水には耐えられない場合があります。このため、機器によっては「IPX6/IPX8」のように複数の防水等級を併記し、水没と噴流水の双方に対応していることを明確に示すものもあります。
また、保護等級の高い防水構造であっても水蒸気までは防ぎきれず、内部に浸入して故障の原因となる場合があるので、台所やお風呂で使う方は注意が必要です。さらに、防水試験は真水を使って行われるのが一般的であり、海水やアルコールなどの液体に対する保護性能は想定されていない点にも留意しておく必要があります。
■実際にIPコードを読んでみる
上記に照らし合わせると、IPコードを読むことができます。以下は一例です。
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・IP65…粉塵が侵入せず、継続的な水没にも耐えることができる。
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・IP6X…粉塵が侵入しない、防水に関しては不明。
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・IPX8…継続的な水没に耐えることができる。粉塵の侵入に関しては不明。
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・IP60…粉塵が侵入しないが、防水性はない。
■携帯電話の普及と防水機能の歴史を振り返る
携帯電話の防水に関して思い返してみると、うっかり水がかかったり、お風呂や水たまりに落としたりと簡単に壊れてしまい、また、携帯内部に、濡れると模様が浮かび上がる仕組み ※3があり、この模様が浮かび上がると水没として扱われ、メーカーの保証外になるため、少しの水でも油断できなかった記憶があります。それが今では防水が当たり前になり、水中に落とすとハラハラはするものの、水が原因で故障したという話をほとんど聞かなくなりました。
せっかくの機会ですので、携帯からスマートフォンへの移行と、防水への対応に関する流れを簡単にまとめてみました。
携帯・スマートフォンの防水機能は、日本市場が世界に先駆けて標準化した技術のひとつといえます(防水機能を含む独特な進化故に、携帯電話はガラパゴス携帯→ガラケーと呼ばれています)。こうした背景には、日本特有の高い湿度や台風などの悪天候への対応に加え、入浴文化による「お風呂でも使いたい」という強いニーズの高まりが影響していると言われております。
JIS C 0920から後継規格のJIS C 60529へ
今回の改定後の後継規格JIS C 60529は、従来の JIS C 0920 に含まれていた日本独自の附属書(油に対する保護等級)などが削除され、規格内容が国際規格 IEC 60529 と完全に一致する形へと見直されました。この変更により、日本だけに存在していた独自の評価項目が無くなり、国際規格との比較や読み替えの必要がなくなったことで、規格そのものの透明性や信頼性が大きく高まりました。
特に、海外製品との比較検討やグローバル市場での製品評価が一般化している現在において、JIS と IEC が“内容まで含めて完全に同じ規格”となった意義は大きく、実務面での利便性向上にも大きく寄与すると考えられます。
改めて確認してみると、IPコードはスマホやデジカメはもちろん、現場で使用するトータルステーションやドローンなどにも記載されています。新しい電子機器を購入する際は、IPコードを参考に、想定した使い方に耐えられるかを予め確認すると良いかもしれません。更に、現場で使う物に関しては、上記と合わせて、衝撃への強さも確認することをおすすめします。
※1
IPコードの「IP」は、国際規格 IEC 60529 などではInternational Protectionを由来とする説明が一般的ですが、近年は用途に即してIngress Protection(侵入に対する保護)と表記されることもあります。
※2
Xは「試験を受けていない」または「記載を省略する」場合に用いられるので、保護性能があるか読み取れない状態です。(表記がないだけで性能がある可能性もあります)。一方で等級0は試験を受けた結果、保護性能がないと評価されている状態なので、この2つは同じだと誤解される事がありますが、別の意味を持っています。
※3
通称「水没マーク」。Apple社では液体侵入インジケータ(LCI)を正式名称としており、iPhoneやiPodのどこに内蔵されているかまで公式サイトに明示しています。一方、Android端末にも同様のインジケータが内蔵されている場合がありますが、その存在や位置をメーカー側が公式に案内している例は多くありません。
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