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 気象庁の検討会が長期予報の高度化案を公開
2026.09.03

令和8年8月21日、気象庁は「1週間から数か月先の情報の高度化に関する検討会」の報告書を公開しました。ニュースなどでは「天気予報と警報級の可能性※1の情報が2週間先まで分かるようになる」という点を中心に報じられていましたが、報告書を読んでみると、そのほかにも検討されている部分がいくつもあります。

そこで今回は、報道ではあまり触れられていなかった部分も含め、報告書のポイントを簡単にまとめました。

なぜ検討が必要だったのか

週間天気予報や季節予報は、生活情報としてだけでなく、大雨・大雪への防災対策、農業の生産管理、電力の安定供給、製造・物流の計画調整など、幅広い分野で使われています。

ところが、季節予報の情報設計や内容は、数値予報※2が導入された約30年前から大きく変わっていません。その間に予報の精度は上がり、ニーズも多様化してきたため、「提供している情報」と「今求められている情報」との差が徐々に広がってきたことが検討会の出発点となっています。また、近年相次ぐ顕著な大雨・大雪や記録的な猛暑、そして今後の温暖化で懸念される極端現象の増加も背景にあります。

ニーズとして現場からは、「大雨・大雪をできるだけ早く知りたい、5日平均ではなく日別のきめ細かな情報がほしい」(防災、道路、農業、電力など)、「気温の予報をより詳細にしてほしい、極端な高温・低温や寒波の到来時期を知りたい」(農業、電力、製造・物流など)といった声が寄せられていたようです。

何がどう変わるのか

現在でも、民間の天気予報サイトなどでは、2週間先までの日別予報を見ることができます。また、気象庁も2週間気温予報や1か月予報、3か月予報を発表しているので、新たに長期予報が始まるわけではありません。

今回のポイントは、気象庁が提供する情報をより具体的で分かりやすくするとともに、産業分野での分析や判断に利用するためのデータや解説も充実させることです。これにより、早めの防災対策や業務上の判断に使いやすい形へ見直すことが大きな目的となっています。

報告書では、今後の方向性を「@社会全体で利用する公益性の高い情報」と「A産業分野での高度な利用を支援する情報」の2つで示しています。

@ 社会全体で利用する公益性の高い情報

こちらは、大雨や大雪、猛暑などに早めに備えるため、一般の利用者や自治体などに広く提供する情報です。主な見直しは、次のとおりです。

・2週間先まで、日ごとの天気予報を提供
現在7日先までとなっている日別の天気予報を、2週間先まで延長します。現在の2週間気温予報では、2週目の気温は前後を含む5日間の平均値で示されていますが、見直し後は日ごとの変化を把握しやすくなります。
・警報級の可能性も2週間先まで提供
現在5日先までとなっている警報級の可能性について、6日先から14日先を対象とした「早期注意情報(6日先以降)(仮称)」を新設します。これは2週間先の警報を発表するものではなく、警報級の現象に早めに気付いて準備を始めるための情報です。
・1か月先まで、注意が必要な時期を把握しやすく
気温、降水量、日照時間、降雪量について、予測精度に応じて予報期間を細かく区切ります。また、「かなりの高温・低温」の可能性も1か月先まで示し、実況から今後の見通しに関する解説も充実させます。
・3か月予報では、予報の確かさを分かりやすく
暑夏や暖冬などにつながる気温について、予報の確度に応じたメリハリのある確率で示します。あわせて「予報のポイント」を新設し、気温の変動や注意点などの解説を充実させる方針です。

ここで重要なのは、単に表示される予報期間が延びることではありません。気象庁が公的な基盤情報として、警報級の可能性を含む先の情報を提供することで、自治体や道路管理者などが早い段階から対応を検討しやすくなる点にあります。

A 産業分野での高度な利用を支援する情報

もう一つの柱は、農業、電力、製造、物流などの業務で、気象データをより専門的に利用するための情報です。

気象庁が個々の業種に合わせたサービスを直接提供するというよりも、各分野や民間気象事業者などが情報を加工・分析するための、基盤となるデータや解説を充実させる方向性が示されています。

・具体的な気温や、近年との比較を提供
「平年より高い」といった情報だけでなく、代表地点の具体的な予想気温や平年値からの差を示します。また、平年値に加えて、直近3年間などの実際の気温とも比較できるようにします。
・記録的な高温の可能性を確率で表示
過去最高の気温を超える可能性など、一定の基準を超える確率を示すことが検討されています。予報結果のばらつきも提供し、どの程度のリスクを見込むべきか判断しやすくします。
・予報を検証・分析するための資料を充実
予報の検証結果や専門家向けの「予報の振り返り」、予報や現象への理解を深める技術資料などを提供します。これにより、予報がどのような場合に当たりやすいのか、どの程度の不確実性があるのかを分析しやすくなります。

これらは、一般の利用者がそのまま見る予報というより、民間気象事業者や各産業分野が独自のサービスや予測に利用する情報です。気象庁の基盤データが充実すれば、農業における作業時期の調整、電力需給の予測、製造量や在庫の調整、物流計画の変更など、業種ごとの判断に反映しやすくなります。

いつ頃変わるのか

ここまで紹介した内容は、いずれもすぐに実施されるものではありません。報告書では、基本的に令和12年(2030年)までを一つの区切りとして計画的に取り組み、実現可能なものから順次導入していくことが期待されています。また、技術的な難易度が高いものについては、2030年より先も見据えて取り組むとされています。

つまり、現時点で示されたのは「何を目指すか」という方向性や具体的な取組案であり、実際にいつから、どのような形で予報に反映されるかは確定していません。今後、数値予報モデルの改良や情報提供のための体制整備、具体的な仕様の検討などが進められることになります。

※1
警報級の可能性:大雨、土砂災害、雪、風、波、潮位などの警報級の現象が5日先までに予想されているとき、その可能性を[高][中]の2段階で示す情報。現在の早期注意情報は5日先までを対象としていますが、報告書では、6日先から14日先までを対象とする「早期注意情報(6日先以降)(仮称)」の新設が提案されています。
※2
数値予報:地球の大気や海洋・陸地を細かい格子に分割し、観測データをもとに「今」の状態を割り当てたうえで、物理学の法則に基づいて将来の状態を計算する予測手法。この計算に使うコンピュータープログラムを「数値予報モデル」と呼び、現在の天気予報の基盤となっている。
▽「1週間から数か月先の情報の高度化に関する検討会」報告書について(気象庁)
https://www.jma.go.jp/jma/press/2608/21b/20260821_longfcst_kentoukai_report.html
▽「1週間から数か月先の情報の高度化に関する検討会 報告書概要」(気象庁)
https://www.jma.go.jp/jma/kishou/shingikai/kentoukai/longfcst/report/R080821_report_sum.pdf
▽「1週間から数か月先の情報の高度化に関する検討会報告書 〜 より安心で豊かな社会に向けて 〜」(気象庁)
https://www.jma.go.jp/jma/kishou/shingikai/kentoukai/longfcst/report/R080821_report.pdf
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