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 軟弱地盤上の盛土解析・・・円弧すべりとFEM解析でこんなにも違う
 

 

従来の検討方法と対策
 軟弱地盤上に盛土をする場合、従来の極限平衡法では「繰り返し円弧計算」で最も確率的に高い破壊面を探り、その破壊面がある程度の安全率を確保できるように対策をするというものでした。

 今以下のサンプル現場を解析します。

現場モデル

 繰り返し円弧すべり計算をかけ、対策工を計画します。
 
◆繰り返し円弧計算
盛土に伴い軟弱地盤を巻き込んだ円弧すべりが発生する危険性が高いと判定できます。

◆対策矢板

円弧すべりに対して十分な安全率をとれるように矢板を対策工として設置します。矢板が破壊されなければ盛土も安定します。

 

 ここで検討しているのは、円弧すべりが起こるか起こらないかという2者択一です。どのような場合に起こると判断するのかが安全率とか許容応力度によって定義されています。しかしこの検討では矢板が破壊しなければ円弧すべりは発生しないということが前提条件となっているのです。

 ところが実際の現場はそうもいきません。施工に伴う変位は必ず発生します。上記の手法では変位はほとんど議論されていないのですが、現場で発生するのは変位なのです。

 現場の変位を予測したい!そうなると上記の方法では無理で、FEMのような有限要素法解析が必要となります。

 上記と同じ条件でFEM解析したらどうなるのか検証します。まずは矢板なしで検討してみました。

 

同じデータをFEMで検証しました 。

◆盛土直後
(対策前−矢板無し)

盛土天端の沈下量

0.0 cm

◆盛土施工7日後(対策前−矢板無し)

盛土天端の沈下量

13.0 cm

 

◆盛土施工14日後(対策前−矢板無し)

盛土天端の沈下量

14.0 cm

 

◆盛土施工37日後(対策前−矢板無し)

盛土天端の沈下量

14.3 cm

 

それに対して対策工として矢板を施工した場合の解析は以下のようになります。

◆盛土直後
(対策後−矢板設置)

対策前

盛土天端の沈下量

0.0 cm

対策後

盛土天端の沈下量

0.0 cm

◆盛土施工7日後(対策後−矢板設置)

対策前

盛土天端の沈下量

13.0 cm

対策後

盛土天端の沈下量

12.9 cm

◆盛土施工14日後(対策後−矢板設置)

対策前

盛土天端の沈下量

14.0 cm

対策後

盛土天端の沈下量

14.0 cm

◆盛土施工37日後

対策前

盛土天端の沈下量

14.3 cm

対策後

盛土天端の沈下量

14.3 cm

 この解析でいえることは、盛土後2週間で14cm以上の変位・沈下が発生することがわかります。ただこの値は対策工としての矢板の打設如何に関わらずかわりません。つまり この位置に設置する矢板は全く効果がないということです。

 ちなみに矢板に発生する応力度は下記のように全く安全であります。つまり曲がることなく倒れているだけなので矢板自身の破壊はないことがわかります。

矢板の応力度

 このように解析方法によって対策工が全く変わってきます。何でもかんでもすべり計算という時代は終わりました。今後はより多くの引き出しを持った技術者こそが頼りにされます。そのため是非FEMなどの技術を身につけ ることが大切です。
 
 本ページを作成するにあたり五大開発(株) 製「土留丸」「SSApro」を使用しました 。
 
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